米最大のパイプラインへのサイバー攻撃はダークサイドの犯行と断定。原油価格への影響は限定的の模様
米運輸省は9日、米最大の石油パイプラインがサイバー攻撃で停止したことを巡り、燃料の輸送に関して緊急措置を導入すると宣言した。供給の混乱を避けるために一時的に規制を緩和し、ガソリンなどの輸送を支援する(10日付日経新聞電子版)。
8日にコロニアル・パイプラインがランサムウエア攻撃を受けた。このパイプラインは米南部テキサス州と北東部ニューヨーク州をつなぐ約8800キロメートルに及ぶ。この攻撃について詳細は明らかになっていないが、コロニアルはガソリンなどを運ぶ米国最大のパイプラインの停止を余儀なくされた。
全面復旧が長引けば局所的に燃料の価格が高騰したり、入手が困難になったりする恐れがある。これによりガソリン価格の高騰の懸念も出ていた。全米自動車協会(AAA)によれば、全米のガソリン平均価格は7日時点で2.96ドルとなっていたが、2014年10月以来の1ガロン=3ドル突破となる恐れがあった(10日付ブルームバーグ)。
しかし、今週末に大半が復旧する見通しとなり、一時売られていた原油先物は買い戻された。
米国の主要インフラのひとつをいったい誰が攻撃したのか。もし中国やロシア、北朝鮮などが絡んでいたとすれば、米国との関係がさらにギクシャクしかねないものとなる可能性があった。
これについて、米連邦捜査局(FBI)は、燃料送油管会社コロニアル・パイプラインを標的にしたサイバー攻撃について、ハッカー集団「ダークサイド」による犯行と断定した。バイデン大統領は、ロシア政府が関与した証拠はないが、事態への対応でロシア当局にもある程度の責任があると主張した(11日付時事通信)。
そして、今回のニューヨーク地域にとって極めて重要な供給源となるパイプラインの復旧が遅れると、それでなくても景気回復に伴う原油需要の回復で上昇しつつあるガソリン価格が、さらに上昇しかねず、これは消費者物価にも影響を与えることが予想された。しかし、その後の報道にもあったように、これによるガソリン価格への影響は限定的となりそう。