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大谷翔平が選んだエージェントの実力は?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
いよいよMLB挑戦の準備を始めた大谷翔平選手(写真:アフロスポーツ)

 今オフのMLB挑戦が濃厚な大谷翔平選手が7日、米国人エージェントと契約したことを明らかにした。

 すでに各メディアが報じているように、大谷選手を担当することになったのは世界最大のスポーツ・エージェント企業『CAAスポーツ』に所属するネズ・バレロ氏だ。果たして彼の実力はどれ程のものなのだろうか。

 まず彼が所属するCAAスポーツは、カリフォルニア州ロサンゼルスに本拠を置くエージェント企業『Creative Artists Agency』のスポーツ部門を指す。スポーツ専門のエージェント企業としては世界最大で、野球のみならずフットボール、バスケットボール、アイスホッケー、ゴルフ──と多岐に渡るアスリートを担当し、2017年の契約成立総額は85億ドル(約9600億円)に上り、契約をまとめた手数料だけで3億1800万ドル(約362億円)の収入を得ている巨大企業だ(『Forbes』誌データを参照)。

 CAAスポーツには多くのエージェントが所属しており、バレロ氏は野球専門のエージェントの1人として活動している。こちらも各メディアが紹介している通り、これまで斎藤隆投手、青木宣親選手、田澤純一投手の吉本とマネージメント契約を結ぶ選手たちを担当しており、すでに日本人選手の代理業務も経験済みだ。

 MLB界におけるバレロ氏の実績も決して悪くはない。野球専門のエージェントとして一番の実力を誇っているのが日本でも有名なスコット・ボラス氏だが、『Forbes』誌が調べた「2017年版スポーツ・エージェント・トップ50」によれば、バレロ氏は契約成立総額5億7840万ドル(約654億円)、獲得手数料3146万ドル(約35億6000万円)で、野球部門で第5位、全体で16位にランクしている(ちなみに同じCAAスポーツに在籍するブラディ・バン・ワゲネン氏も野球部門で7位、全体で23位にランクインしている)。

 現在の契約選手数は21人を数え、主な契約選手で年俸ランキングのトップ50に入っているのは、ライアン・ブラウン選手(42位)とアダム・ジョーンズ選手(49位)といったところ。現時点では年俸2000万ドルを超えるような大物選手は担当していない。

 あくまで合意が待たれる新ポスティング制度にもよるが、今オフに大谷翔平選手がMLB移籍をした場合、新労使協定により契約金、年俸が格安で済むこともあり、過去最多数の入札が予想される。それだけに各チームから大谷選手の希望に見合った契約内容、さらには育成・起用方針を引き出せるかは、すべてエージェントの腕にかかってくる。MLB球界ではトップ5の実績を誇り、各チームとのパイプもしっかりしていそうなバレロ氏なら問題はないだろう。

 また大谷選手に興味を示す各チームにとっても、米国内に窓口ができたのは非常に大きい。今後大谷選手の希望を確認しながら戦略を練ることができるからだ。もちろんバレロ氏としても各チームの意向を確認しながら、早い時期に大谷選手に見合ったチームを絞り込むことができるわけだ。

 今は新ポスティング制度の合意と大谷選手の正式発表を待つしかない。ただ順調に推移すれば、もうすぐ日米で大谷フィーバーが巻き起こることになるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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