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【ホンダ 新型「CB1000R」試乗レポート】新しくて奥深い大人のためのスポーツモデル

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
HONDA CB1000R

新型CB1000Rは「公道を最大限に楽しむ」ことを純粋に追求した新世代のスポーツバイクだ。

初代は2008年に登場した欧州向けモデルだったが、今回のフルチェンジに当たり車体、エンジン、デザインのすべてを再構築。国内仕様としても初の投入となっている。

■「新型CB1000R」動画レポート

見た目だけでなく設計思想そのものが新しい

すべてが一新された新時代のCBシリーズであることがその見た目からも伝わってくる。

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スタイルは今までにないもので、最初はどう解釈したら良いものかやや戸惑いもあったが、見慣れてくるとその個性的で上質感あふれる造形美にミステリアスな色気を感じてしまう。新しさを持ったモダンなデザインであり、従来のCBシリーズとは異なるコンセプトであることを体現しているのだ。CB1300/1100シリーズのような伝統的なビッグネイキッドスタイルも捨てがたいが、新型CBには惹き込まれていく魅力がある。

エンジンも排気量に頼らない新しい発想。完成されたコンパクトなCBRのエンジンを使ってダウンサイジングしながらも、より高性能を得ている。それを独自のモノバックボーンフレームとリンクレスのモノショックを組み合わせたシャーシに搭載することで車体の前後長を詰め、さらに軽量化とマス集中化を図っているなど設計思想そのものが新しい。

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円やかにもワイルドにも走れる奥深さ

跨ってエンジンをかけた瞬間から“出来の良さ”がひしひしと伝わってくる。エンジンは軽やかな吹け上がりが印象的。それもそのはずで、先代CBR1000RRのユニットなのだ。それでいて「大人のためのエモーショナル・スポーツロードスター」のコンセプトどおり、ストリートでスポーティに楽しめるよう低中速寄りにチューンされている。

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高周波と重低音がミックスしたサウンドが耳に心地よい。アクセル開度によって円やかにもワイルドにも変貌する走りと奥深い排気音は直4ならでは。「魅せる、昂る」という新型CBの開発キーワードを存分味わうことができる。

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豹変するキャラクターを楽しむ

エンジンから伝わってくるフィーリングはホンダらしい緻密さで、まさに精密機械のよう。ちなみにライディングモードは「レイン」、「スタンダード」、「スポーツ」の3段階に加えて、自分好みで調整できる「ユーザーモード」の4種類が設定されている。

特に初めて乗る場合にはレインモードは有効で、タイトコーナーが続くウェット路面でもアクセルのツキも穏やかで、安心して走れる。レインからスタンダードに切り替えるとトラコンの介入度が減って、出力特性もシャープに力強く排気音もワイルドに。電子制御によってエンジンブレーキも弱められメリハリの効いた走りになってくる。これが通常の姿と言っていいだろう。

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さらにスポーツモードではアクセルのツキがより俊敏に、エンジンが吼えて加速もワイルドになり、生半可な気持ちだと付いていけなくなるほど。最高出力145ps、車重212kgの走りはやはり半端ではない。もちろん、ゆっくり走ってもサウンドと戯れる感じが楽しいのだが。

ライポジや足着きにホンダの良心を感じる

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素晴らしいのが標準装備のクイックシフター。スロットルを開けたままクラッチを握ることなくスムーズに簡単にギヤチェンジできるのだが、これがシフトアップだけでなくダウンもできる優れモノ。しかもオートブリップ機構が入っているため、シフトショックも少なくエンブレも穏やかに最適化してくれるなど、一度経験してしまったら戻れない快適さだ。

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新しさを感じるフルカラー液晶メーターはコンパクトながら数字が大きく見やすいし、エコ運転しているとグリーンに光るシフトインジケーターなども面白い演出だ。

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ちなみにライポジは程よく前傾していて、ストリートをスポーティに走るには丁度いい感じ。シート高は830mmと低くはないが、モノバックボーンフレームによるスリムな車体のおかげで足を真下に伸ばせるし、跨っただけでスッと沈み込むしなやかな前後サスが足着きをフォローしてくれる。ライポジと足着きでも馴染みやすさを追求しているところにホンダの良心を感じる。

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1000ccとは思えない軽快なフットワーク

ハンドリングについては、取り回した瞬間からその軽さが伝わってくる。いかにもフリクションが少ない感じで、まるで路面を滑るように転がっていく。操舵抵抗が少なく、素直でニュートラル。次々に現れるタイトな切り返しなどもステップワークだけで軽々と処理していける。

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加えて、トラコンやABSの有難さ。試しにウェット路面でフルブレーキングしてみたが、2チャンネルの電子制御ABSが効いていることを感じさせないほどスムーズに最大効率で減速してくれる。

「走る、曲がる、止まる」がとにかく軽く、これで1000ccかと思うほど。ライン取りも自由自在で、通常ビッグバイクだとラインが1本しかないところ、軽々とラインを変えられる。これは危険回避に直結していることで、バイクにとって軽さは最大の善であることをあらためて実感させられた。

新たなCBの時代を象徴するマシン

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自分もCB1300SFを長く乗り続けてきたが、今回新型に乗ってみてあらためて日進月歩のテクノロジーの凄さを感じた。乗り心地やハンドリング、エンジンのスムーズさやダイレクトな操作感など、すべてが新しい。

これから始まっていく新しい時代のCBの歴史を引っ張っていく、それをまさに象徴するマシンに仕上がっていると思う。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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