ＤｅＮＡの筒香嘉智選手が契約更改に臨み、年俸３億円でサインした。今季は４番打者として４４本塁打、１１０打点で二冠王を達成するとともに、チーム初のＣＳ進出を果たす原動力になるなど、その額に相応しいだけの活躍をみせた。

すでに報道にもあるように、高卒８年目以内に３億円に到達するのはＮＰＢ史上６人目の快挙だということだ。今年はさらにリーグＭＶＰを獲得した日本ハムの大谷翔平選手も３億円突破は必至な状況だけに、すぐに筒香選手らの仲間入りをすることになるだろう。ただこのニュースを単純に快挙だと捉えるだけでいいのだろうか。

過去５人の選手たちを見てみよう。イチロー選手、松井秀喜選手、松坂大輔投手、ダルビッシュ有投手、田中将大投手─。これら５選手に共通するものは言うまでもなく、ポスティングを許さなかった巨人在籍の松井選手以外すべてＦＡを待たずに２０代でＭＬＢ移籍しているという事実だ。

もちろんピークを迎えつつある脂の乗りきったスター選手の流出は、ＮＰＢにとって大きな損失のはずだ。だが現状を見る限り、選手本人がＭＬＢに行きたいという意志のみならず、彼らを放出しなければならない国内事情もあるからだろう。

まず１つはＮＰＢのマーケティング規模だ。ＭＬＢでは今や年俸３０億円を超える契約が続出する中、ＮＰＢでは未だに１０億円を突破する選手が誕生していない。仮にイチロー選手らがＮＰＢに残留していたら１０億円を突破していたかもしれないが、ＮＰＢのマーケティング規模ではいずれはＭＬＢに太刀打ちできなくなっていただろう。

結局のところ、年齢が若くして高額年俸を獲得する選手たちはその後も一定の活躍を続ければ、いつかはＮＰＢでは支払いが難しくなる額に到達してしまうことになる。そうなれば必然的にＭＬＢに放出するしか手立てがないという状況に陥ってしまうのだ。

もう一つがＮＰＢの実力レベルだ。ダルビッシュ投手のＭＬＢ移籍までの経緯を振り返ればおわかり頂けるだろう。

高卒２年目で２桁勝利を飾ると、その後も投手として急成長を遂げ、４年目には沢村賞を獲得するなど若くして球界屈指の好投手になった。周囲からはＭＬＢ移籍が注目され始めても当初は否定し続けたが、最終的にメジャー移籍の道を選んだ。その理由を聞かれたダルビッシュ投手の答えは、「誰も自分と真剣勝負してくれなくなった」だった。

ダルビッシュ投手だけではない。シーズン中にイチロー選手のＭＬＢ移籍を陰から支えたジム・コルボーン氏から話を聞かせてもらう機会があったのだが、イチロー選手のＭＬＢ移籍について「もう日本では彼を燃えさせてくれるものがなかったと感じた」と説明してくれた。また他の３選手についても、大差はないのではないか。

今年は大谷投手、筒香選手も取材する機会があったが、彼らも一様に、野球選手として純粋に成長したい、上手くなりたいという貪欲な姿勢は凄まじかったし、もうすでにＮＰＢでは収まりきれない存在になりつつある。

イチロー選手がＭＬＢ移籍してから１６年が経過している。現状に変化がない限り、これからも同じ歴史を繰り返し続けることになるだろう。