インフルエンザの流行止まらず 昨シーズンから一度も途切れず「流行期」が続く
新型コロナが「5類感染症」に移行してから、定点医療機関あたりのインフルエンザ感染者数が新型コロナを初めて超えました。実は、昨シーズンから一度も途切れることなくインフルエンザの流行が続いています。
多くの地域でインフルエンザ「注意報」入り
定点医療機関あたりのインフルエンザの感染者数は、1人超で流行期入り、10人超で注意報、30人超で警報、と定義されています。
通常インフルエンザシーズンが終われば、この波はほぼゼロに落ち着きます。
現在、昨シーズンから一度も途切れることなくインフルエンザの流行期が続いています。これは1999年以降、起こらなかった現象です。
8~9月は「発熱しました」と受診する患者さんのほとんどが新型コロナでした。その中にインフルエンザが混じっていた感覚でしたが、次第にインフルエンザの陽性率が高くなってきました。
厚労省からのデータでは、「5類」移行後初めてインフルエンザの感染者数が新型コロナを上回っています(図)。
定点医療機関あたりのインフルエンザの感染者数は9.57人と「注意報」レベルである10人に迫っています。
すでに「注意報」レベルに到達しているのは、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山口県、徳島県、愛媛県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、沖縄県の合計14都県となります。
特に沖縄県は非常に多く、25.93人と「警報」レベルに迫りつつあります。
常態化する「同時流行」
発熱者に対して、新型コロナとインフルエンザの両方を検査することが当たり前になりつつあるため、これまでよりインフルエンザの取りこぼしが少なくなっていることが影響しているかもしれません。
ただ、「5類」に移行してから、発熱したらすぐに病院へ行こうという人はそこまで多くない印象です。
取りこぼしが減った差分を考慮しても、やはり「ウイルス感染症が多いなあ」「同時に流行しているなあ」という現場での実感はあります。
常態化する「医薬品恐慌」
医薬品の流通がかなり厳しい状況です。咳止めや去痰薬などは壊滅的で、なかなか処方できません。
感染症の拡大によって処方が増えたことも影響しているかもしれませんが、ジェネリック医薬品の構造的な問題が大きいと考えています。
これについては、以下の記事を参照ください。
■参考:「薬が手に入らない」 コロナ禍で処方せんの問い合わせが常態化 背景にある問題(URL:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1c3fb77a25be4b0437b94fded8d51b7f40fc88b4)
調剤薬局から「この薬はもうありません」という連絡が続いており、未曽有の「医薬品恐慌」がおさまる気配はなさそうです。
まとめ
臨床医として一番懸念しているのは、冬にインフルエンザと新型コロナの大きなピークが同時にやってくることです。
現在のような小波や、交互にやってくるぶんには医療資源的にまだ耐えられるのですが、大波が来ると医療はそれなりに逼迫するでしょう。
密な空間においては、いずれの感染症もマスクの有効性が示されていますので、これまで培ってきた感染対策を感染状況に応じて適用しましょう。
新型コロナワクチンの流通は少ない状況となっておりますが、いずれのワクチン接種も門戸が開かれていますので、高齢者や重症化リスクが高い方は接種をご検討ください。
(参考)
(1) 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)2023年6月~(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00438.html)
(2) インフルエンザに関する報道発表資料 2023/2024シーズン(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00014.html)