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大統領の侮辱ツイートに対しNBAから続々と溢れ出るレブロン・ジェームス支持・擁護の声

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
マイケル・ジョーダン氏もレブロン・ジェームス選手への支持を表明した(写真:ロイター/アフロ)

 すでに本欄でも報告しているように、ドナルド・トランプ大統領が現地3日夜に、NBAのトップスター選手の1人、レブロン・ジェームス選手に関する侮辱的ツイートを投稿した。ツイートの内容やその背景についてはそちらの記事を参照してもらうとして、夜が明けた4日になってNBA全体から続々とジェームス選手を支持、擁護する声が沸き上がっている。

 まずNBAのアダム・シルバー=コミッショナーが『USAトゥデー』紙の取材に応じ、声明を発表。その内容を同紙記者がツイートしている。

 簡単に声明の内容を説明すると、トランプ大統領のツイートがジェームス選手の知性を疑うような内容だったことに対し、シルバー=コミッショナーは「私は彼(ジェームス選手)の知性とビジネス的な洞察力に大いに感銘を受けるとともに、彼がコミュニティで行っている活動に敬意と感謝を抱いている」とし、ジェームス選手に最大限の賛辞を送っている。

 またこのオフにジェームス選手が移籍したばかりのレイカーズも、同チームの公式サイトにジーニー・バスCEO兼オーナー名義で以下のような声明を発表している。

 “我々はレブロン・ジェームスをレイカーズの一員に迎えることができ、これ以上の誇りに思うことはない。

 彼は信じれないほど思慮深く知性溢れたリーダーであり、コミュニティを団結させ、世界をより良い場所へと導いてくれるスポーツが持つ力に常に感謝の念を抱いている。

 彼のこれまでの努力はすべての人たちから賞賛されるべきものだ”

 トランプ大統領のツイートに「I Like Mike.」として登場しているマイケル・ジョーダン氏も地元メディアを通じて声明を出し、ジェームス選手のコミュニティ活動を賞賛するとともに「自分はLJを支持する」と宣言している。

 もちろんそれだけに留まらない。現役選手たちも続々と声を挙げ、ジェームス選手の支持とトランプ大統領に対する批判を繰り広げている。すでに大統領とは犬猿の間柄にあるウォリアーズのステフィン・カリー選手もその1人だ。

 こうしたNBA全体に広がるトランプ大統領批難の動きに対し、メラニア大統領夫人が事態の収拾に乗り出そうとしているようだ。地元メディアが報じたところでは、大統領夫人のスポークスマンが、ジェームス選手が次世代の子供たちのために積極的な活動をしているとし、彼が最近地元のオハイオ州アクロンに開設した公立学校を、大統領夫人が訪問する考えがあることを明らかにしている。

 その後トランプ大統領はジェームス選手関連のツイートを投稿しておらず、沈黙を続けている。これまでも国歌斉唱時に片膝をつくNFL選手を非難するなどスポーツ界との対決姿勢を示してきた大統領だが、今回は稚拙な内容を含んだいわれのない個人攻撃と受け取られても仕方がなく、米国民から賛同を得るのはかなり難しい状況だ。

 ジェームス選手に限らず、スポーツ界のトップ選手の中には自費を投じてコミュニティ活動活動に尽力する選手も数多く存在し、彼らは下手な政治家以上に地域社会で強い発言力や影響力を持っている。トランプ大統領の支持基盤といわれている白人低所得者層も、そうした彼らのコミュニティ活動の恩恵を受けていると考えられる。今後の対応次第では、トランプ大統領の評価が大きく揺らぐ可能性すらあるだろう。

 果たしてトランプ大統領はジェームス選手、NBAとどう向き合っていくのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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