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韓国国民の半数が「来年朝鮮半島の緊張が高まる」と予測!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国の合同参謀本部議長が8月7日に前線視察(合同参謀本部配信)

 北朝鮮の国営通信「朝鮮中央通信」が約10日前に南北軍事合意が無になったこととの関連で「世界で膨大な武力が最も稠密に、先鋭に対峙している軍事境界線地域で偶発的な軍事的衝突を防ぐ最小限の措置、最後の禁止線が完全になくなった今、朝鮮半島での物理的激突と戦争は可能性の問題ではなく、いつ始まるかが問題だ」と実にキナ臭い予測をしていたが、最新の世論調査で韓国人の46.6%が「来年、北朝鮮による挑発が高まる」と懸念していることがわかった。

 韓国政府の諮問機関である民主平和統一諮問会議(民主平統)は11月24日から26日まで全国の成人男女約1千人を対象に行った第4分期世論調査結果を公表したが、「挑発が高まる」と予測した46.6%のうち「非常に高まる」が19.5%,「多少高まる」が27.1%となっていた。

 「民主平統」は国民の統一意識、関心を探るため年4回、この種の統一世論調査を実施しているが、予想される北朝鮮の挑発を「今年とほぼ同じくらい」と予測した人は40.2%で、「挑発は高まらない」は10%を切って、9.8%しかなかった。

 韓国人がみなしている北朝鮮の「挑発」とは軍事的緊張を高める行動を指していることは言うまでもない。

 今朝の北朝鮮の党機関紙「労働新聞」は北朝鮮が今年成し遂げた「最大の成果」として軍事偵察衛星の発射と戦術核攻撃潜水艦の建造を挙げていた。

 戦術核攻撃潜水艦は進水式を終えたもののSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射はまだ実際に行われてないことから韓国は具体的な対抗措置を取ってないが、北朝鮮が11月に軍事偵察衛星の発射を成功させた時は北朝鮮のミサイル発射の兆候を探知して先制攻撃するキルチェーンを強化するため南北軍事合意の効力を停止する措置を取っていたことは周知の事実である。

 軍事偵察衛星と戦術核攻撃潜水艦の保有は北朝鮮が労働党第8回大会(2021年1月)で打ち出した国防発展5か年計画の課題であった。国防発展5か年計画にはこれ以外に▲核兵器の小型・軽量化と戦術武器化を一層発展させ、様々な手段で適用するようにすること▲中・大型核弾頭を生産する▲核長距離打撃能力を高めるため原子力潜水艦とSLBM戦略兵器を保有する▲500kmを精密偵察できる無人偵察機を開発する▲多弾頭ミサイルを開発することが盛り込まれている。

 北朝鮮は今後、さらなる偵察衛星の発射と戦術核攻撃潜水艦からのSLBMの発射も含めて5か年計画の4年目となる来年は北朝鮮が目標達成に拍車を掛けるのは自明で、米朝及び南北対話が断絶した状況下にあっては韓国国民の「来年は緊張が高まる」の予測は決して的外れではない。

 また、南北関係の展望についても「今年よりも悪くなる」が48.9%、「変化はない」が44.1%、「良くなる」が5.6%と、韓国国民の多くが悲観していた。

 この調査では統一の必要性についても聞いているが、「統一は必要」は64%と歴代最低を記録していた。逆に「統一は不必要」は35.3%と、第3分期(9月に実施)に続いて30%を超えていた。

 前回の調査では「さほど必要ではない」と「全く必要ではない」を合わせて「不必要」は32.0%だったが、今回はそれよりも3.3ポイントも高く、2015年以来最高値を記録した。

 ちなみに第2分期の調査(6月に実施)では国民の52%が朝鮮半島の望ましい未来像として「自由往来が可能な2国家」を選択し、「単一国家が望ましい」は28.5%しかなかった。その一方で、「現状の2国家のままで良い」は7.9%と、「1国家2体制」よりも低かった。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権になって「北朝鮮は主敵である」との政府や軍による国民向けの意識改革が徹底してきたのか、北朝鮮を「警戒・敵対対象」とみなす世論は47.2%に増え、「協力・支援対象」の40.6%を6.6ポイントも上回っていた。

 第2分期の調査までは「協力・支援対象」が「警戒・敵対対象」よりも上回っていたが、前回の調査から逆転していた。前回の調査では48.0%が「敵対・警戒の対象」と回答し、「協力・支援の対象」(42.0%)を6ポイント上回っていた。

 その一方で、尹政権が来年優先すべき統一・対北政策では回答者の38.9%が「南北関係の正常化」を挙げ、続いて「北朝鮮の非核化」(24.0%)、「北朝鮮の人権及び人道問題の解決」(12.9%)「国内外の統一に向けた雰囲気醸成」(11.2%)、「民族同一性の回復」(6.1%)の順になっていた。

 なお、北朝鮮の軍事偵察衛星発射については「憂慮している」が64.6%を占め、「憂慮してない」の34.3%の培近くあった。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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