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GACKTさんから里子に出された子犬、 実は察していた? 獣医師が動物行動学から解説

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
「GACKTが愛犬を里子に出しました。」より 筆者がスクショ

GACKTさんのYouTube動画が炎上しています。2月10日にアップされたもので、GACKTさんが、5カ月間育てた子犬(名前はフェンディちゃん)をペットロスになった知人の奥さんにサプライズでプレゼントするというものです。

「愛犬はプレゼントするものなの?」「ペットはモノじゃない」などの批判が殺到しています。今日は、GACKTさんの炎上の動画を見ながら、里親に出された犬の行動を動物行動学を指標に見ていきましょう。

愛犬を他人にプレゼントする?

まず、はじめに愛犬を他人にプレゼントするかを考えてみましょう。

筆者は、18年6カ月の愛犬と暮らしています。シニアになり、クルクル回る、夜鳴きするなどの認知症がある愛犬を介護中。他の人から見れば、年老いた、病気の犬でしょう。

でも、筆者は愛おしいのです。18年間、一緒にいてくれた感謝があるし、思い出も多くあります。仕事柄、同伴出勤をして24時間ほぼ傍らにいます。

そんな生活をしている筆者からすれば、たとえ5カ月間だけでも一緒にいた愛犬・フェンディちゃんを、ペットロスの人がいるからと、プレゼントしようという考えは出てこないですね。

GACKTさんは、日ごろ、お世話になっているポーカーの師匠のために、一肌脱いで美談にしようと思って、YouTube動画を制作したのでしょう。ところが、世の中からは、「犬をモノとして扱っている」ように見えて炎上しました。

今の時代、ペットは家族の一員で、子犬は我が子として育てている方が多いため、今回の行動は理解が得られなかったのかもしれません。一般的には、犬や猫を一度、家族の一員にすれば、終身飼育が望ましいです。

そのことを念頭に置いて、フェンディちゃんを見ていきましょう。フェンディちゃんは、GACKTさんの元を離れて、幸せになれるのでしょうか?

筆者は、お正月に放送される『芸能人格付けチェック!』(テレビ朝日系)に出ているGACKTさんぐらいしか知らないので、以下の動画からの情報だけで、フェンディちゃんの様子を読み解いています。そのことをご了承ください。

炎上のYouTube動画のフェンディちゃんを見てみる

「GACKTが愛犬を里子に出しました。」より

この動画は、GACKTさんがフェンディちゃんと新幹線に乗り大阪に到着。そして、車でフェンディちゃんの里親のところに向かいます。

そして、GACKTさんのポーカーの師匠が里親になるのですが、そこにフェンディちゃんを届けるというものです。

フェンディちゃんの行動を中心に見ていきましょう(筆者は、飼い主とそのペットの行動を動物行動学から見極めて診療をしています)。

0:17

GACKTさんの懐に入ったフェンディちゃんは、大人しくしています(逃げ出そうとしていない様子 GACKTさんにも懐いています)。

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フェンディちゃんは、GACKTさんの顔をぺろぺろ(親愛を示している様子)。

3:34

車の中でGACKTさんと里親になるパパ(ポーカーの師匠)との会話中。

里親になるパパにフェンディちゃんが関心を示して、匂いを嗅いでいます(無視したり、威嚇したりはしていません)。

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里親になる家の中での様子。

フェンディちゃんは、里親になるママ(十数年、飼っていた愛犬が亡くなりペットロス中)と対面して、少し戸惑いを見せます。

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フェンディちゃんは、奥さんの顔をペロペロ(フェンディちゃんは奥さんの匂いなどから、この人は犬好きで、大切にしてくれそうと悟った様子)。

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奥さんは、フェンディちゃんをフローリングに置きます。フェンディちゃんは、GACKTさんのところに行かずに辺りの匂いを嗅ぐ(GACKTさんのところに行かないので、もう自分の立場を理解している様子)。

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GACKTさん「ステイ」と言います。フェンディちゃん、そこでじっとしています(しつけもしっかりされています)。

6:49

GACKTさん「いっちゃうよ」と言います。フェンディちゃんは、後追いをすることなく新しい家の中を探検しています。

子犬のフェンディちゃんを中心に見ました。このことから、フェンディちゃんを推測しますと、以下です。

多くの人がフェンディちゃんのお世話をしています。GACKTさんは、仕事で一カ所にいることは難しいから、そのときは、犬好きな人やペットシッターさんなどが面倒を見ていたのでしょう。

・上記のため、フェンディちゃんは犬を好きな人を瞬時に見極めて懐く様子。

・分離不安になっていません。

 分離不安とは、飼い主がいないと不安になり、ずっと一緒にいることを望み、1匹で留守番などは難しい犬の精神的な状態。

本来なら、犬は飼い主が替わると不安になったりするのです。フェンディちゃんは、一般的ではない飼育だったので、動画を見る限り、新しい里親のところで大切にされて快適に過ごすのではと推測します。

一般的には、犬を飼いはじめると、家族の人以外は、面倒を見ない環境ですが、フェンディちゃんの場合は、犬好きの人やプロの人たちが、世話をしていたのでは、と思われるので、里親のところでも大丈夫でしょう。

ずっと同じ人が、フェンディちゃんのお世話をしてくれるからよかったかもしれませんね。

やむをえない事情でペットを手放すときは

犬のことを考えると終身飼育が望ましいです。しかし、犬の寿命は十年以上あるいま、飼い主が病気などでどうしても飼えないときに、ペットを譲るときは以下のようにしてあげてください。

□飼い主が替わると犬は不安になるので、いつも食べていたフード、大好きなオヤツなども一緒に渡す。

□犬の場合は、狂犬病ワクチン接種の証明書を渡す。

□マイクロチップの証明書を渡す。

□ワクチン接種の証明書も渡す。

□病歴を書いて渡す。

□不妊去勢手術をしているかどうかを伝える。

□抗不安になっているときは、獣医師に相談してください。

□抗不安剤なども動物病院に行けば処方してくれます。

□新しい飼い主は、犬が不安にならないように、スキンシップを多くする。

□新しい飼い主は、犬が慣れるまでなるべく家にいる。

まとめ

フェンディちゃんは、里親の元で元気に暮らしていると思います。

いまは、コロナ禍で、ペットを購入した人が多くいます。その一方で、実際に一緒に暮らしてみると、しつけをする必要があるなどがわかり飼育放棄をする人も増えているとか。

犬や猫は、「モノではなく命あるもの」なので、その辺りをしっかり考えてから飼育をはじめてくださいね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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