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増えるネット、減る4マス…経産省発表の広告費動向から見る、媒体力の変化

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 多様化するメディア。媒体力の無いメディアには広告費は投下されない

変わりゆく広告費の投資額

各メディアの媒体力を推し量る指標の一つが広告費。特性や相性もあるが、各クライアントは媒体力に合わせ広告費を支払うからだ。経産省の特定サービス産業動態統計調査のデータを介し、各メディアの広告費、そして媒体力を推し量る。

まずは金額推移。2005年までは「プロモーションメディア広告など」の項目に「インターネット広告」が含まれていること(2006年から分離された)、衛星メディア関連の広告は「プロモーションメディア広告など」に含まれていることなど、類似の分析データ、例えば電通が毎年発表している「日本の広告費に関する調査報告」とは項目区分に違いがある。そのことに留意する必要がある。

まずは積上げ推移。従来型4大メディア(いわゆる「4マス」)を黒枠で囲い、区分として見やすくしている。

↑ 媒体別広告費(積上げ推移、1988-2014年)(経済産業省データより)(億円)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、1988-2014年)(経済産業省データより)(億円)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、1988-2014年)(4マス+インターネット)(経済産業省データより)(億円)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、1988-2014年)(4マス+インターネット)(経済産業省データより)(億円)

広告費は景気と高い連動性・正の比例的関係がある。景気が良い時は広告費も大きくなり、景気が後退すると広告費も減退する。例えば最近ではリーマンショックの影響を大きく反映し、2009年が前年から格段と落ち込み、2010年以降は順調に持ち直し動きを見せている。

また、それとは別に各メディアの事情、例えばテレビ広告費は2000年前後がピークで、それ以降は減少の一途をたどり、さらにリーマンショックで大きな影響を受けたこと、その後は少しずつ額面を戻してはいるが、金融危機以前の水準までにはまだ届いていないこと、4大従来型メディアとインターネット広告以外の広告部門(緑の部分)はリーマンショックの影響による急激な落ち込みを除けば、比較的堅調に推移していることなどが分かる。

新聞や雑誌の広告費はこの10年で約半減。ラジオもほぼ同じ程度の減少。「広告費」と「利用率・媒体力」はそのまま直結するわけではないものの(景気動向やライバル媒体とのパワーバランスも影響する)、激動する時代の変化を感じさせる。

シェアで各媒体の「パワーバランス」を探る

次に示すのは構成比の推移。要は「その年の広告費全体(一般広告含む)のうち、各項目はどれほどのシェアを占めていたのか」を意味するグラフである。

↑ 媒体別広告費(構成比推移、1988-2014年)(経済産業省データより)
↑ 媒体別広告費(構成比推移、1988-2014年)(経済産業省データより)

「インターネット広告」が独立項目として登場した2006年から、「4マス」と「インターネット」の合計シェアはほぼ同じ比率を示し、「インターネット」が他の4マスを浸食しているようすが分かる。記録の限りでは、「インターネット」が項目として登場して以来、毎年シェアは増加し続けている。

また2010年時点ではシェア増加の動きすらみられた「テレビ」も2011年以降はシェアを落とし続けている。額面は微増しているが、広告費全体の伸びには追い付かない状態である。

一方「インターネット」以外では2011年以降、「プロモーションメディア広告など」(「4マスとネット」以外の屋外広告全般)が大きな伸びを示す形となった。これは多分に、東日本大地震・震災の影響、例えば強制的節電に伴い、電力消費での配慮があまり要らない従来型広告への再注目の影響によるところが大きいと考えられる。

2011年3月の震災は少なからず広告業界・広告費にも影響を与えており、一部はいまだにその爪痕を残しているが、全体的な「震災前からの流れ」は継続中。むしろ震災によってその流れが加速化している。今件は広告費の推移であり、部数・視聴者数や媒体力、その業界の売上とはまた別のものだが、それぞれの媒体の「パワー」を示す一つの指針との認識で間違いない。

従来型4マス、具体的にはテレビ・新聞・ラジオ・雑誌は今世紀に入ってから、特にこの数年、胸を張って第三者に誇れるようなものでは無い、色々と大人げない、過去の実績・権威を汚すような動きをしている。とりわけ震災以後、頭に疑問符を浮かべてしまう質、内容、姿勢の動向を感じる人も少なくあるまい。そのような動きの原因の一つとして、今件データが示す実情を受けての「焦り」があるとする解釈は、決して的外れなものでは無かろう。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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