新型コロナ 典型的な症状、経過、重症化のリスク、後遺症について
2020年8月現在、全国で新型コロナの流行が拡大しています。
どのような症状があれば新型コロナを疑い病院を受診すれば良いのでしょうか。
新型コロナの典型的な症状、経過、重症化のリスク、後遺症などについて現時点での知見をまとめました。
新型コロナの潜伏期間
潜伏期間とは感染する機会から何らかの症状を発症するまでの期間を指します。
新型コロナの潜伏期間には1〜14日と幅がありますが、多くの人がおよそ4〜5日で発症します。
無症状の感染者はどれくらいいるのか
新型コロナには一定の割合で感染しても無症状の人がいます。
どれくらいの人が感染しても無症状のままなのかまだ十分には分かっていませんが、これまでの報告からはおよそ3〜4割の人が感染しても無症状のままではないかと推定されています。
例えばダイアモンド・プリンセス号の乗客712人のうち58%は診断時に無症状であり、その後も約8割の人が最後まで無症状でした。
つまり、診断された時点では無症状であっても、その後症状が出現することがありますので注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症の典型的な症状
新型コロナウイルス感染症の初期症状は風邪やインフルエンザと似ています。
風邪は、微熱を含む発熱、鼻水、鼻詰まり、ノドの痛み、咳などの症状がみられることが多く、またインフルエンザも風邪と似ていますが、風邪に比べると高熱が出ることが多く、頭痛や全身の関節痛・筋肉痛を伴うことがあります。
風邪はインフルエンザに比べるとゆっくりと発症し、微熱、鼻水、ノドの痛み、咳などが数日続き、インフルエンザは比較的急に発症し、高熱と咳、ノドの痛み、鼻水、頭痛、関節痛などが3〜5日続きます。
しかし、風邪やインフルエンザが新型コロナのように1週間以上続くことは比較的稀です(ただし咳や痰の症状だけが2週間程度残ることはよくあります)。
新型コロナと風邪、インフルエンザの症状とを比べると、以下の図のようになります。
また、新型コロナでは典型的には
・発熱
・咳
・だるさ
・食欲低下
・息切れ
・痰
・筋肉痛
などの症状の頻度が高いとされます。
特に「息切れ」の症状は、風邪やインフルエンザでは稀な症状ですので、新型コロナの可能性を疑うきっかけになります。
新型コロナウイルス感染症の典型的な経過
新型コロナに特徴的なのは、症状の続く期間の長さです。
前述のように新型コロナウイルス感染症は風邪やインフルエンザによく似ていますが、症状が続く期間がそれらと比べて長いという特徴があります。
特に重症化する事例では、発症から1週間前後で肺炎の症状(咳・痰・呼吸困難など)が強くなってくることが分かっています。
発症してから1週間程度は風邪のような軽微な症状が続き、約8割の方はそのまま治癒しますが、約2割弱と考えられる重症化する人はそこから徐々に肺炎の症状が悪化して入院に至ります。
さらに約5-10%の症例で集中治療が必要になりICUに入室し、3-5%の事例で致命的になりうるとされています。
ただし、日本国内でも新型コロナと診断された方が自宅待機中に突然亡くなられる事例が報告されています。前述の血栓症が関与している可能性があり、発症から1週間を待たずとも、胸痛や呼吸苦などの症状が急激に悪化するようであればすぐに病院を受診するようにしましょう。
嗅覚異常と味覚異常
3月以降、新型コロナ患者では嗅覚障害・味覚障害を訴える患者さんが多いことも分かってきました。
イタリアからの報告によると新型コロナ患者59人のうち、20人(33.9%)で嗅覚異常または味覚異常がみられたとのことです。
特に若年者、女性ではこれらの症状がみられる頻度が高いようです。
また新型コロナであった人とそうでなかった人が自己申告した症状のうち、嗅覚異常・味覚異常は最も新型コロナに特徴的な症状であったという報告もあります。
ただの風邪や副鼻腔炎、花粉症が原因で嗅覚異常・味覚障害が起きることもあるので必ずしも「嗅覚障害・味覚障害=新型コロナ」ではありませんが、前述のような発熱、咳などの症状に加えて嗅覚異常・味覚異常の症状があれば新型コロナの可能性は高くなるでしょう。
また、嗅覚障害・味覚障害のみの症状の方もいらっしゃるようですが「2週間以内の海外渡航歴がある」「新型コロナ患者との接触歴がある」「特定のクラスターに曝露している」のいずれかを満たす方では、新型コロナの検査の対象になる可能性がありますので、かかりつけ医や帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。
新型コロナの稀な症状:下痢、血栓、不整脈、皮膚症状など
他にも、新型コロナでは稀に
・結膜充血
・嘔気・下痢
・血痰
などの症状がみられることがあります。
この他にも、新型コロナ患者では凝固系の異常(血液が固まりやすくなる病態)や血管内皮障害が起こることが分かっており、これにより深部静脈血栓症や脳梗塞などが起こることがあります。
また新型コロナウイルスは心血管系にも影響を及ぼし、急性冠症候群(ACS)、心筋炎、不整脈(心房細動など)を引き起こすことがあります。
小児では川崎病(発熱、皮疹、眼球結膜充血、いちご舌など)に似たMIS-Cという病態が海外で報告されていますが、国内ではまだ報告がありません。
皮膚症状についても手足の指に赤紫色の結節が現れることがあるとされますが、現時点では新型コロナとの関連は明確ではありません。
新型コロナが重症化しやすい人
新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは高齢者と持病のある方です。
30代くらいまでは亡くなる人はほとんどいませんが、40代以降から徐々に致死率が高くなり、80歳以上では26.9%という非常に高い致死率となっています。
高齢者では風邪やインフルエンザのような症状が続けば早めに病院を受診する方がメリットがあるでしょう。
持病の有る無しによっても重症度が変わってくることも分かってきています。
がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病などの持病のある方では重症化しやすいとされます。
これらの重症化リスクに該当する持病をお持ちの方も、早めに受診することが望ましいでしょう。
後遺症がみられることも
新型コロナから回復した後も何らかの"後遺症"の症状が続く方がいることが分かっており、現在厚生労働省が調査を行っています。
海外からの報告では、特に倦怠感や呼吸苦、関節痛、胸痛などの症状が続いている方が多いようです。
その他、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状がみられるようです。32%の患者で1~2つの症状があり、55%の患者で3つ以上の症状がみられたとのことです。
4割の人が生活の質が低下していると答えており、新型コロナから回復した後も苦しんでいる方が多いことが分かります。
今のところこれらの後遺症に対する治療法はなく、新型コロナに罹らないことが最大の予防法です。
病院を受診する前に
自身が新型コロナかなと思ったら、まずはかかりつけ医か帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。
帰国者・接触者外来に受診が必要と判断されたら、マスクを着けて、なるべく公共の交通機関を使わずに病院を受診するようにしましょう。
各都道府県の帰国者・接触者相談センターは以下のページからご確認ください。
周囲の流行状況を把握しておきましょう
各都道府県における新型コロナの流行状況(厚生労働省 発生状況マップより)
新型コロナは時期や地域によって流行状況が大きく異なります。
つまり、発熱や咳のような症状が出現したとしても新型コロナである可能性は、住んでいる地域によって変わってきます。
例えば東京では緊急事態宣言後全国で新型コロナ患者は減少していましたが、6月下旬頃から徐々に増加しはじめ、8月上旬の現在は東京都におけるPCR検査の陽性率も6%前後となっています。
各地域における流行状況は、
・新規発生患者数
・新規発生患者数のうち接触歴不明の患者の割合
・PCR検査陽性率
を参考にしてください。
新規症例報告数がほとんどなく、検査陽性率も低い地域にお住まいの方では、風邪症状が出たとしても、海外渡航歴や接触歴がなければ新型コロナの可能性は高くないでしょう。
時期や地域によって、自身が新型コロナに罹る可能性も変わってきますので、お住まいの地域の流行状況をしっかりと把握しておくことが大事です。
風邪やインフルエンザのような症状が出現した場合は、個々人が自身の感染リスクと重症化する可能性を考慮した上で、病院を受診するかどうか判断するようにしましょう。
また、病院を受診しない場合も、手洗いや咳エチケットなどの予防対策は必要ですし、周囲の人(特に高齢者や持病のある人)にはうつさないような配慮が必要です。
新型コロナを広げないためには、手洗い、屋内でのマスク着用、3密回避など新型コロナに注意した生活を続けることが重要です。