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地区優勝をほぼ手中にした古川孝敏と琉球ゴールデンキングスが見据える更なる高み

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
チームとして個人として更なる高みを目指す古川孝敏選手(筆者撮影)

 西地区首位を独走していた琉球ゴールデンキングスが前節で同地区2位の京都ハンナリーズと敵地で対戦し、75-70、76-65と連勝に成功。ゲーム差を8まで広げ、チーム初の地区優勝をさらに手元に引き寄せた。

 今回の対決まで3月は8勝1敗と絶好調だった京都は少しでもゲーム差を縮めようと決死の覚悟で臨んだ首位争いだったが、ここまでリーグ最少失点を誇る琉球の強力ディフェンスの前に屈するしかなかった。

 とはいえ京都と裏腹に、3月の琉球は決して盤石とはいえなかった。富山グラウジーズや三遠ネオフェニックスの勝率5割以下チーム相手に3敗を喫するなど、トップチームとは思えない戦いぶりだった。そんな状況下で勝ち取った京都戦での連勝は、チームを再び勢いづける効果は十分にあったはずだ。日本代表にも名を連ねる古川孝敏選手も、今回の京都戦で何かを掴んだようだ。

 「3月はちょっと負けたりとかいう部分がありましたけど、チームとしてやりたいこと、やろうとしていることが試合の中でうまく展開できなかったり、細かいミスがあったりというところで自分たちから自滅するシチュエーションがありました。その中で僕個人としてもよくない部分が多くあったので、そういうところを(残りの)数少ない試合で違う相手と戦う中でしっかり自分たちのパフォーマンスを出し続けていかないといけないと思います」

 京都戦でチームを勢いづかせるきっかけになったのが第1戦の逆転勝利だった。前半は最大11点差をつけられながら後半に見事な逆転劇を演じたのだ。その中で終盤に貴重なシュートを決め続け、チーム最多の16得点を叩き出した古川選手の活躍が光った。

 「そこ(第1戦の活躍)は自分がやらなければならないところだと思っていますし、点を取ることが自分の仕事だとも思っています。あの場面で決められたことは自分にとってもよかったと思いますし、またチームに勢いがつけられるように自分もやっていきたいと思います」

 ただ古川選手はまだまだ満足しているわけではない。残り試合は次節の川崎ブレイブサンダース戦を皮切りに、シーホース三河、アルバルク東京、千葉ジェッツ──と錚々たる強豪チームとの対戦を控えている。チャンピオンシップでの戦いを見据え、チームとしても古川選手自身も更なる高みを見据えている。

 「チームとして自分たちがどういうバスケをしていくかというのをもう一度明確にしなければいけないし、それをどんな試合でもやり通して、その中でこうすることがというヘッドコーチの戦術とかもあるので、そこの理解を深めてそれをコートで自分たちがやり切れるか、自信を持ってしっかりやれるかだと思います。

 あとここ(京都戦の勝利)で気持ちを(もっと上に)持っていかないといけないですし、そこはこれからレベルの高いチームとの対戦が残ってますし、その相手にどうやって勝つか、自分たちのバスケをしていくかというのが大事なところだと…。いろいろ言い過ぎると難しいんですけど、内容もすごく大事なんですけど、ここ何試合か僕も含めて気持ちの部分で少し出し切れてなかった部分があるので、そこを忘れずにまず第一に強く持つことです。1点でも勝ちきるという強い気持ちを持って試合に勝ち、その中で内容も突き詰めていければいいなと思います」

 ここまでチームの姿勢を説明してくれた上で、古川選手個人については「もっとやらなければいけない感じがある」と更に厳しい見方をしている。

 「こういった(重要な試合の)中でどう自分がパフォーマンスを出していくかというのがあります。まあ単純に上手い、下手というところでぶれてしまうところがあります。冷静に判断してプレーできればというところですかね。それが上手くいかなかった時に、何がよくて、悪くてっていうところで考えすぎるところがあるので…。まあそれは試合を通していいところ、悪いところを経験として積んでいけば個人としても(成長に)繋がっていけると思います。

 僕は精神的に強いタイプではないです。昔からずっと…。そんなことをいっている時点でどうかというのもありますけど、ただチームが勝つために自分のパフォーマンス、自分らしさをどう出していくかだと思うので、そこはぶれずにやっていきたいと思います」

 残り試合でも古川選手の出来がチームの勝利に大きく関わってくるのは間違いない。チームがチャンピオンシップでどんな戦いができるのかを占う上でも、今後の強豪チームとの対戦はチームにとっても古川選手にとっても大事な試金石になってくるだろう。その中で古川選手があらゆる局面で安定したパフォーマンスを披露できるようになれば、選手としてまた新たな殻を打ち破り、日本代表においても確固たる地位を築けるようになるのだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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