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アジアパラへ。パラ卓球の国際大会で岩渕・阿部、八木・舟山がダブルス同胞対決!

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
東京体育館で決勝戦に向かう顔ぶれ PARAPHOTO/秋冨哲生

 パラ卓球の国際大会、「KINOSHITA GROUP ITTF Japan Para Open 2023」が8月30日から4日間行われ、東京2020パラリンピック(2021年)と同じ東京体育館で、11の国と地域から136名(男子86・女子50)が出場し競い合った。前半2日間がシングルス、後半2日間はダブルスの試合が行われた。

 パラリンピックに出場するためには、国際大会での成績(ポイント獲得)が重要となる。日本のナショナルチームに推薦された選手は、今大会を経て、10月に杭州(中国)で開催されるアジアパラ競技大会、1年後のパリパラリンピックへ向かう。

ダブルス男子で岩渕・阿部が優勝

 大会最終日の9月2日、立位男子ダブルス(クラス18*)の決勝戦は、日本人同士の同胞対決となった。

 グループ総当たりの予戦でイタリアペア、東京パラリンピック銀メダリスト・MA Linのいるオーストラリアペアと対戦、勝ちすすんだ日本のエース・岩渕幸洋(クラス9・両下肢機能障害/東京・協和キリン)と阿部隼万(クラス9・低身長/兵庫・キンライサー)のペアは、同様に強豪タイのペア、香港のペアとの戦いを制してきた、八木克勝(クラス7・両腕障害/愛知・琉球アスティーダ)と舟山真弘(クラス10・右肩関節機能障害/東京・早稲田大学)のペアと対戦、3-0に封じて岩渕・阿部が優勝した。八木、舟山ともにシングルスでは優勝して、後半のダブルスに挑んでいた。

3セットすべての後半で阿部隼万(手前/クラス9)がつなぎ、岩渕幸洋(奥/クラス9)が決める流れを掴みとった 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
3セットすべての後半で阿部隼万(手前/クラス9)がつなぎ、岩渕幸洋(奥/クラス9)が決める流れを掴みとった 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

 試合は阿部が得意とするフットワークでラリーをつないだところを岩渕が攻め、決める。最終スコア11-8,11-8,11-9で、2,3セットは8点目以降で岩渕らが逆転。3セットすべての後半は岩渕らがよい流れを掴みとった。

 試合後、岩渕は、「ミスも少なく、自分のやるべきことを見つけられた。相手も調子良かったと思うが、しっかり駆け引きができ、舟山選手の狙いを読んで先回りできた。プレッシャーをかけることも成功した」と納得していた。

 阿部は「作戦は岩渕選手が立ててくれた。相手は二人ともシングルスのチャンピオンだけに強かった。シングルスでは自分も勝てないが、ダブルスでは障害もやり方も違うので、そのなかで勝てたのは大きい」と振り返った。

 岩渕・阿部、八木・舟山は、10月の杭州アジアパラでもペアとして出場する。

良い流れを掴む岩渕(左)と阿部(右) 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
良い流れを掴む岩渕(左)と阿部(右) 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

「アジアパラは優勝すれば君が代が流れる。今日のような試合ばかりじゃないと思うが、相手が誰でも、苦しい時に何をするかを突き詰めて臨みたい」と、岩渕はつぎの目標にむけて意気込みを語る。今後のダブルスの練習はナショナルチーム合宿が中心になるが、そこでお互い個人的に高めてきた技術をどう合わせていけるかが鍵となる。

 岩渕は今大会シングルス(クラス9)で、東京パラ銀のMA Lin に敗れ準優勝だった。ダブルスでは、男子(クラス18)の他にミックスダブルス(クラス17)に出場し、こちらもアジアパラでペアを組む世界ランク6位の友野有理(クラス8・右半身麻痺/兵庫・タマディック/村上ジュニア)とともにグループを勝ち抜き優勝とパリパラリンピックへのマイルストーンを見据えた。

八木克勝(手前・クラス7)と舟山真弘(奥・クラス10) 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
八木克勝(手前・クラス7)と舟山真弘(奥・クラス10) 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

 立位男子ダブルス(クラス18)で岩渕らに敗れた八木・舟山。八木は、「まず準優勝できたのは良かった。自分の障害が重いところで頑張ったが、岩渕・阿部選手に及ばなかった。フォアに突かれるとリーチがないためドライブを上げられない、そこが狙われてくるし敗因になる。18のクラスでは常に周りは自分より状態のいい選手になるし、パートナーとの位置どりも関係してくる。突かれる球を見極めどうアジャストしていくかの技術を磨く必要がある。アジアパラでも岩渕・阿部ペアと当たる可能性があり、一球一球しがみついていきたい」と話した。八木は世界ランク3位、両腕に障害があり肘から先が短い重度の障害になる。

 アジアユースパラ(バーレーン2021年12月)シングルスで優勝経験のある若手の舟山は、「昨日今日と良い時、悪い時の差を埋め安定感をもちたい。2セット、3セット目はリードしてるなかでとりきれなかった詰めの甘さがあった。相手に先にしかけられた時、そこからカウンターやブロックの技術がまだ足りない。今日は足が動かないことでのミスが多かった。一番手でアジアパラへ行きたかった」と悔しさを滲ませた。

 日本でのITTF JAPAN PARA OPEN の開催は4年ぶりであった。東京パラリンピックの会場での大会となり、今後も2年おきの開催をめざしていく。

「試合の成績も大事だが、お客さんを集めるのは選手(の魅力)だと思うので、スター性を発揮して人を集めていく必要がある。自国開催でいろんなお客さんに見にきていただきたい」と、八木・船山ともにナショナルチーム主力選手として、普及の重要性について語っていた。

 クラス11(知的障害)は、女子の櫨山七菜子(さいたま市)がシングルス、ダブルスで三冠を果たした。

*<参考>

パラリンピックの卓球は、車いす(クラス1〜5)、立位(クラス6〜10)、知的障害(クラス11)があり、ダブルスのクラス分けはシングルスのクラスの合計数でペアになるクラスが組まれる。ルールは障害により一部が変更されているが、多くは一般の卓球と同じ。

アジアパラ日本代表推薦選手

https://jptta.or.jp/230725-news-01/

(写真取材・秋冨哲生、校正・地主光太郎)

この記事はPARAPHOTOに掲載されたものです。

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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