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植田日銀総裁はジャクソンホールに出席せず

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 今年もまた米国ワイオミング州ジャクソンホールでカンザスシティ連銀主催のシンポジウムが22~24日にかけて開催される。

 FRBのパウエル議長の講演はワシントン時間日本時間23日23時からの予定。9月の利下げに関してどのような発言をするのかが注目されている。

 植田日銀総裁は23日に閉会中審査に出席する。ジャクソンホールには出席しない。副総裁2人もジャクソンホールには出席しないようで、今年は当初からジャクソンホールへの出席の予定はなかったようである。

 これまでジャクソンホールが金融政策の変更点のきっかけになったケースも多いことで、市場参加者の注目度は高い。

 それではどうしてジャクソンホールがこれほどまでに注目を集めているのかをあらためて確認したい。

 ジャクソンホール (Jackson Hole) とはワイオミング州北西部に位置する谷のことを意味する。ここで開催されるシンポジウムには著名学者などとともに、各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものとなっている。

 このようなシンポジウムが、どうしてワイオミング州ジャクソンホールという小さな街で行われるか。

 FRB議長だったポール・ボルカー氏がフライ・フィッシングの趣味があり、この街を良く訪れ、お気に入りの場所であったからという説がある。

 ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間にFRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れを作ったとされている。

 1999年には日銀の山口副総裁(当時)と、バーナンキ・プリンストン大学教授(当時、のちのFRB議長)が、日本のバブルに対する日銀の金融政策の評価をめぐり、論争を行ったことでも知られる。

 2010年8月27日にはバーナンキ議長(当時)がQE2を示唆する講演をジャクソンホールで行った。このシンポジウムに出席していた白川日銀総裁(当時)は予定を1日早めて急遽帰国し、8月30日の9時から臨時の金融政策決定会合を開催し、新型オペの拡充策を決定している。

 2013年8月末にワイオミング州ジャクソンホールで開催されたカンザスシティ連銀主催のシンポジウムにバーナンキ議長は異例とも言える欠席となった。9月17日から18日にかけて開催されたFOMCでは予想されたテーパリングを見送った。

 2014年8月22日のジャクソンホール会議でECBのドラギ総裁は、ユーロ圏のインフレ期待が「大幅な低下を示した」と発言。この発言は講演原稿にはなく同総裁の「アドリブ」であった。さらに政策姿勢を一段と調整する用意があるとした講演原稿の中でも「必要になった場合は」の文言が省かれていた。つまりこれらはドラギ総裁が資産購入プログラムの導入を示唆したとされた。その後、9月4日のECB政策理事会では現状維持との大方の市場参加者の予想に反して利下げとともに、10月からの資産買入れを決定した。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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