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不動産の所得税等と損害保険~受け取る時の注意点と、「油断ならない罠」

冨田建不動産鑑定士・公認会計士・税理士
(提供:AFRC_152/イメージマート)

1年の終わりに近づいて、税理士として気になるのは「今年1年の確定申告」。

不動産を扱っていると、ごくまれに「建物が損害等を受けることによる保険金収入がある」事案にあたる場合があります。

ここでは、個人が、「自己が掛金を払っていた損害保険金等を得た場合の税金の扱いと罠」に関する注意点を述べてみたいと思います。

■ 基本は雑損控除だが…。

もし仮に、建物が自然災害や火災、盗難・横領等で損害があって、何も保険をかけていない場合や損害金額等に保険金等の額が届かない場合は、雑損控除として「所得税等を安くする方に作用させる」ことができます

具体的な式を掲げると

(1) (損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%

(2) (災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

のいずれか多い額を雑損控除の額とすることができます。

なお、損害金額は、国税庁サイドで一定の算式を用意しているので、これに基づいて計算することも多いと思われます。

Ⅰ‐2 雑損控除の適用における「損失額の合理的な計算方法」|国税庁 (nta.go.jp) 

■ 「保険金の額が損害金額や災害等関連支出の金額を上回る場合」は課税されるのか

結論から言うと、支払原因等で課税関係が変わる場合が考えられますが、原則として課税されません

ただし例外はあり、例えば建物が店舗であった場合で焼失した場合の商品等の損害保険金は事業収入として課税対象になります。要するに「売れた場合と同様」と見なすわけです。

ちなみに、税法上は受け取った保険金の使途を限定する規定等はないので、仮に保険金を受け取っても建物の復旧等に回さず、例えば個人旅行等に費やしても、課税面での不利はありません。個人的には「いらない建物が燃えた場合はむしろプラス」になるので、どうなの…と思っていますが。

■ 税理士として感じること…税務の目線と損害査定の保険は違うところに罠がある

実は、上記に書いたところまでは、ごく一般的な知識ですが、ここからは実務的な話を。税務の損害金額算定の目線と保険会社の査定の内容は大きく異なるようです。

実際、保険会社の方に聞いたことがあるのですが、「保険会社の約款や査定基準に照らすと、申請されたらこの部分も払わざるを得ないのだけど、申請してこないので払わずに済んでいる」場合が結構あるのだとか。

もちろん、保険会社の本音は「災害があったとしてもできれば支払額を抑えたい」ですから、保険会社側から「ここも申請してくれれば払いますよ」と申し出るケースは滅多にないと思われます。

個人的には、一般消費者を保護する意味で保険会社に対する規制を改めて、「保険会社側から損害発生時に、その保険契約で払える保険金をくまなく提示する」ことを法的に義務づけるべきと思いますが、残念ながら現行法はそうはなっていません

ですので、災害等があった場合、申請者側としても「税務上の損害金額と、保険会社の査定の目線は別」との点を念頭においた上で、「保険会社だけが知っている、取りそびれ部分が実はあるかもしれない」という罠には十分に注意すべきでしょう。

約款を十分にチェックし、「取りそびれがない」点を十分に留意し、取りそびれのない請求をすべきと思います。

不動産鑑定士・公認会計士・税理士

慶應義塾中等部・高校・大学卒業。大学在学中に当時の不動産鑑定士2次試験合格、卒業後に当時の公認会計士2次試験合格。大手監査法人・ 不動産鑑定業者を経て、独立。全国43都道府県で不動産鑑定業務を経験する傍ら、相続税関連や固定資産税還付請求等の不動産関連の税務業務、ネット記事等の寄稿や講演等を行う。特技は12 年学んだエレクトーンで、平成29年の公認会計士東京会音楽祭では優勝を収めた。 令和3年8月には自身二冊目の著書「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓。 令和5年春、不動産の売却や相続等の税金について解説した「図解でわかる 土地・建物の税金と評価」(日本実業出版社)を上梓。

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