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コロナ禍でも自粛しない人たちから遊びに誘われたら? うまく断る方法は【#コロナとどう暮らす

五百田達成作家・心理カウンセラー
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

新型コロナウイルスを経験したことにより、私たちの暮らしはこれからどのように変化するのでしょうか。Yahoo!ニュースの記事に寄せられた「ママ友からみんなで遊ぼうと誘われています。子供連れで15人以上になりそうです。今の時期どうかと思うのですが、皆さん普通に参加表明しています。。大丈夫なのでしょうか?」という声をもとに、考えてみました。

ちなみに、Yahoo!ニュース「みんなの意見」で、「コロナ禍でのお誘い、どうしてる?」というアンケートを実施したところ、5日間で1万6千近い投票が集まり、関心や注目の高さがうかがえました。「誘われたら行く」に投票した人は約7.5%と少数派ですが、コメント欄を見る限り、対応やスタンスは人それぞれという印象です。

「コロナ観」は千差万別

コロナ禍におけるもっとも難しいコミュニケーションのひとつとして、「外出を伴う行動への誘い」そして「それを断る」があげられます。特に、角を立てずに相手の誘いを断るというのは至難の業。一体どのような受け答えをするのが良いのでしょうか。

コロナに対するスタンスや知識は、人によって大きく異なります。これまで同じ環境・価値観で過ごしてきたような仲間であっても、全く違う「コロナ観」を持っていることに気づき、驚かされるような場面もあったはずです。

そんな中、外出を伴う企画へと誘うような場合、感染対策をしっかりしてから行動するのは大前提としつつ、まずは「相手がどれぐらいコロナを警戒しているのか」を知り、その意思を尊重しなければなりません。

ですから、誘う方としては「相手はどれぐらいコロナを警戒しているだろう?」と探りつつ、おそるおそる誘う必要があります。

具体的には普段の誘い文句に加えて、

「コロナ的に気にならなければ、どう?」

「抵抗ないようだったら、ぜひ」

といった具合に、相手にとって逃げ道となるひと言を添えてあげるようにしましょう。そうすれば、誘われたほうも「うーん、やめておこうかな」と断りやすくなるはずです。

断るほうが気を使う理由

そういったひと言が添えられていない場合、断る方としてはとても気を使う対応を強いられることになります。

質問者の方にとっての「ママ友仲間」のように、誘いを断るだけで角が立ってしまうような人間関係も多いでしょう。しかもこのご時世で「誘いを断る」ことは、相手の「コロナ観」に文句をつけているようにも捉えられかねないのが困ったところです。

たとえ自身が思っていなくても、何も口に出して言わなかったとしても、「えー、コロナなのに外出するの?」という批判的なニュアンスを、相手が感じ取ってしまう可能性があるのです。

「やめておこうかな、ちょっといろいろ心配だし」

「えー、だいじょうぶだよ」

「でも、やっぱり、ほら……」

「え? 何? 私たちがおかしいってこと? いい? だいたいコロナってのは……」

と言い合いになるケースまで想像してしまうと、そう簡単には断れなくなってしまいます。ちょっとした懸念などがつい口からこぼれて相手に過剰に伝わってしまい、言い争いになるケースもあるでしょう。

「やめておこうかな、ちょっといろいろ心配だし」

「オッケー、わかったー」

「あのさ、あんまり出歩かないほうがいいんじゃないかな?」

「いや、そんなこと言っててもキリがないよ」

「それは違うって。いい? だいたいコロナってのは……」

と、これまた修羅場になってしまいます。

このように、本来は単に「行かない」「オッケー」で済むはずが、「コロナ観」をめぐる言い争いに発展してしまいかねない状況にあることが、お断りのコミュニケーションを難しくさせている理由です。

なぜ炎上は起きるのか?

さて、少し話はそれますが、こうした信念や価値観をめぐる言い争い・論争は現在、Twitterをはじめとした多くの場面で毎日のように見かけます。

コロナに限らずではありますが、このような「少しでも自分と違う意見を見かけると黙っていられない」「非難し、罵倒し、やり玉に挙げ、屈服させずにはいられない」という感情は、いったいどこから来るのでしょうか?

まず、人が怒る・構う・過干渉する・炎上させる・おせっかいを焼く心理は、大きく3つのタイプに分けられるでしょう。

1 防衛本能型:自分が信じ守っている主義・理想やコミュニティがバカにされた、傷つけられたと感じたときに、声を上げて守ろうとする。

2 欲望発散型:単に自分の好奇心や野次馬根性を満たしたい。イライラしていて、誰かに当たり散らすことで溜飲を下げたい。

3 承認欲求型:意見を押しつけ、「参りました」「感心しました」「以後そうします」と、自分の求める反応を相手から得たい。

ただし、この3つのタイプは各々がくっきりと分けられるものではなく、複雑に入り交じりがちです。

たとえば、最初はただのおせっかいからスタートしたけれど、思うような反応が得られないのでイライラして、批判に移行。それを繰り返しているうちに「これは●●のために行っているのだ」と大義名分を掲げるようになり、自分でもそれをすっかり信じ込む、といったケース。

あるいは、最初は本当に自分の信念を守ろうと声を上げていたのに、次第に相手を説き伏せることが気持ちよくなってしまい、いわゆる「正義中毒」の状態になり、結果的に、目に付くもの何に対しても食ってかかるようになるケース。

いずれの場合も、本人にその自覚はないため、論争などが起きやすくなってしまうのです。

「行かないことにしている」と断るのが理想

原案:五百田 達成 画像制作:Yahoo! JAPAN
原案:五百田 達成 画像制作:Yahoo! JAPAN

話を元に戻しましょう。

「私は行く」「私は行かない」という意思表示をしたいだけのはずが、ちょっとしたきっかけで言い争いに発展しかねない空気が世の中にあるからこそ、誘う方も誘われた方も気楽なコミュニケーションができなくなっているのが現状。

では、そうしたぶつかり合いを避けるためには、どうすればいいでしょうか? どのように言えばうまく断ることができるのでしょうか?

まずは理想論としての正解をお伝えしますと、シンプルになるべく何の感情も込めず「そういうことにしている」と断ることです。

「ごめん、外出は避けることにしてるんだ」

「遠出はしないことにしてるの、誘ってくれてありがとう」

「もう少し落ち着くまで行かないことにしてるんだ、ごめんね」

この「~~ことにしている」という言い回しを用いることで、論争に発展するのを避けることができます。

なぜなら、そこには「行きたくない」「行くのはよしたほうがいいよ」「なんで行くの?」といった余計な意図が含まれにくいからです。もちろん「そもそもコロナは危険だよ」といった判断も含まれません。

自分の意志とは関係なく、ただルールとして決まっているのだ、というニュアンスを出すために「~~ことにしている」と断りを入れましょう。

一瞬冷たく聞こえるかもしれませんが、これぐらいきっぱりと断れば、誘った方も「そっかー。ごめんね」と引き下がってくれるでしょう。おかしな言い争いも起きません。

……と、ここまでが理想論。これで万事解決めでたしめでたし、となればいいのですが、そうもいかないのがリアルな人間関係というもの。角を立てなくない、食い下がられたらどうしよう、今後仲間はずれにされるのもイヤなどと思うと、なかなかこのようにスパッとは断れないはずです。

そこで、次に現実的に使えそうな断り方をお伝えします。

「会社に言われてる」がパーフェクトな断り文句

まず今回のコロナ禍で明らかになったのは「日本人はまだまだ会社とともに生きている」という事実ではないでしょうか。

知事が自粛を要請したかどうか、緊急事態宣言が出たかどうか、感染者が●人を超えたかどうかなど、自らの行動を判断・規定する基準自体はいくつも存在していました。ですが、それらよりもはるかに強く個人が判断基準として採用していたのが、「会社から止められているかどうか」だったはずです。

国の言うことは怪しくて信用できない。メディアの言うことはバラバラで信頼できない。それでも、生活を保障してくれる(給料をくれる)会社の言うことだけは従わざるを得ない。その会社が「休日の外出は控えろ」と言うから、外出はしない。その会社が「出社しろ」と言っているのだから、外に出ても大丈夫。そういう判断で行動していた人が、とても多かったのです。

そのため、「会社がダメと言うから」と答えれば、誘ったほうも「そうなんだ」と素直に引き下がる状況になっているはずです。

「多くの人が会社の方針に従う」というこの状況が、よいことなのか悪いことなのかは、ここでは問いません。ポイントは、この「会社」という存在をコミュニケーションテクニックとして利用するのは効果的、ということです。

ですから、コロナ禍での外出の誘いを断りたいときにはこう言いましょう。

「ごめん、会社から出歩くなって言われてて」

「いや、私はいいんだけど、夫の会社が外出禁止になってて」

このように「会社に言われてしかたなく」というニュアンスを出せば相手も文句は言えませんし、気分も害しません。それは仕方ないね、と理解してくれるし、コミュニティから仲間はずれにされることもないでしょう。

「会社」が難しい場合は、「家族」という切り札も有効です。

「ごめんね、実家の親から出歩くなって言われてて」

「いや、私はいいんだけど、祖母が心配してて。一応、大人しくしておこうかと」

といった具合です。

結論:コロナ禍で遊びに誘われたときにはどう断るのが最善か?

というわけで、今回の話をまとめます。

・コロナ禍の外出のお誘いは断り方を間違えると、論争・炎上に発展しかねない困難なコミュニケーションだと認識しましょう。

・断る場合は、相手に対しての意図しない「批判」のニュアンスが入り込まないよう、「行かないようにしている」と断るのが理想的です。

・それだと角が立ちそうな場合には、「会社」や「家族」を持ち出して丸く収めましょう。

ただでさえ現在は、目に見えないストレスによって心身がダメージを受けている状況です。今回紹介したような上手なコミュニケーションテクニックを駆使して、無用のストレスから自身を守りましょう。

※記事をお読みになって、さらに知りたいことや専門家に聞いてみたいことなどがあれば、ぜひ下のFacebookコメント欄にお寄せください。次の記事作成のヒントにさせていただきます。

また、Yahoo!ニュースでは「私たちはコロナとどう暮らす」をテーマに、皆さんの声をヒントに記事を作成した特集ページを公開しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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