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8月は無双状態だった藤浪晋太郎に期待がかかる早期メジャー昇格

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
8月は抜群の安定感を披露し続けている藤浪晋太郎投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【9月1日からロースター枠が28人に拡大】

 いよいよMLBは、シーズン最終月の9月を迎えようとしている。トラック競技で例えるのならば、第4コーナーを回りきりホームストレッチに突入したといったところだろう。

 今シーズンは両リーグとともに、ワイルドカードを中心に熾烈なポストシーズン争いが展開されており、シーズン終盤までもつれそうな様相を呈している。

 また9月に入ると、ロースター枠が26人から28人に拡大されるため、ポストシーズン進出を争うチームはどんな選手を補強するかが、勝敗の行方を大きく左右することになりそうだ。

【ロースター枠拡大で投手陣を補強したいメッツ】

 シーズン序盤は苦しい戦いを強いられながらも6月以降からチーム状態を上げ、現在はワイルカード争いでパドレスやダイヤモンドバックスを追いかけ続けているメッツも、ロースター枠拡大を有効活用したいチームの1つだろう。

 打撃陣に関しては、ここ最近ナ・リーグMVP候補に浮上し始めたフランシスコ・リンドア選手を中心に、現時点でMLB5位の本塁打数(171本)を誇る強力打線は好調を維持している一方で、投手陣はチーム防御率が同19位(先発陣が同17位で、リリーフ陣は同19位)に止まっており、9月にしっかり勝利をものにしていくためにも、ロースター枠拡大は投手陣を補強していくことになると考えられる。

 そんなメッツのファームシステムで、投手陣補強に最適の投手がいるのをご存じだろうか。7月26日にメッツからDFA(40人枠から外す措置)され、ウェーバークリア後にメッツに残留し傘下の3Aに在籍している藤浪晋太郎投手その人だ。

 そして現在の藤浪投手は、まさに無双状態を続けているのだ。

【8月は防御率が1.80で被打率も.061の藤浪投手】

 今年2月にFAとして1年契約でメッツ入りした藤浪投手だったが、オープン戦から課題の制球力不足を露呈し、開幕メジャー入りに失敗。3Aで開幕を迎えて以降も制球力不足を解消することができず四球を連発する不安定な投球を続け、さらに5月に入り肩の不調で長期離脱も余儀なくされるなど、メッツの選手入れ替え措置に伴い結果を残せないまま40人枠から外された。

 ところが、3Aに再合流してからの藤浪投手は別人のような投球を続けている。8月の月間成績をチェックすると、藤浪投手は7試合に登板し8月14日のロチェスター戦で敗戦投手になっているものの、10イニングを投げ被安打2、失点2で、なんと防御率は1.80を残している。

 しかも8月は与四球が4に止まる一方で、奪三振数は12を記録し、この間の被打率は.061と完全に打者を圧倒しているのだ。そのためWHIP(1イニングあたりの与四球+被安打数)も0.60と驚異的なデータを誇っている。

 さらに8月の藤浪投手は3試合2イニング登板も経験しており、かなり使い勝手のいいリリーフ投手として機能しているのだ。

【メジャー昇格しても環境面で投球に支障なし】

 もちろん藤浪投手がメジャーに昇格した後で、現在のような投球を続けられる保証は何もない。だが数年前から3Aではメジャーと同じ公式球を使用しており、昇格後にボールの違和感が生じる可能性は極めて低い。

 また3Aでもメジャー同様のピッチクロック制度が採用されており(昨シーズンではマイナーの制限時間が短かった)、こちらも昇格後に投球リズムを狂わせられることはないだろう。つまり環境面で考えれば、藤浪投手は昇格後も現在と同様の投球を期待できることになる。

 仮に藤浪投手をロースター枠拡大でメジャー昇格させたとしても、シーズン終盤までメジャーに残す必要はなく、これまで通り入れ替えはいつでも可能だ。

 そうした背景を考えると、メッツが藤浪投手を試さないのは勿体ないと考えるのは自分だけではないはずだ。

【ポストシーズン進出見据え8月31日以内の昇格も?】

 むしろ個人的に期待を抱いているのは、8月31日以内での早期メジャー昇格だ。

 というのも、仮に藤浪投手がメジャー昇格後も現在のような投球を披露できることが確認できれば、前述したように熾烈なワイルドカード争いを演じるメッツにとって貴重な戦力となるのは間違いない。それは昨シーズン途中で移籍したオリオールズでの投球を見れば、すでに証明済みだ。

 そしてさらにメッツがポストシーズン進出を決めることになれば、ポストシーズンでも藤浪投手を起用したくなるだろう。そのためには8月31日までに藤浪投手を40人枠に戻すことが最低条件になってくる。

 まさに偶然なのだが、メッツは8月28日付けで主力リリーフ投手のデドニエル・ヌニェス投手を右前腕の張りで15日間の負傷者リスト入りを発表しており、チームとしても新たな信頼できるリリーフ投手を補充したい状況にある。

 残念ながらメッツで現在の藤浪投手がどんな評価を受けているのか、米メディアの報道だけでは確認することができていない。それでも明日以降のメッツの動向に注目してみたいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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