東京モーターサイクルショー思考探索その2 大型スポーツの主流は「アッパーミドルクラス」へ!?
先々週から先週にかけて、大阪と東京で開催されたモーターサイクルショーは今年も大盛況だった。
開催報告によると、東京は微増、大阪では大幅に来場者数を伸ばしたそうで、バイク業界にも明るい兆しが見えていると思う。
そこで、前回のコラムから引き続き、各メーカーの出展内容から最近のバイク業界のトレンドを読み解いてみたいと思う。今回のテーマは「アッパーミドル」である。
世界的に台頭する600cc~900ccクラス
ショーを見て回って感じたのはミドルクラスのラインナップが増えたこと。
ミドルクラスというと、かつては600cc辺りの排気量を指すことが多かった。車種で言うと、代表的なのは600ccスーパースポーツや欧州向けのライトツアラーなどだ。
これらは、リッタークラスやそれを超える排気量を持つフラッグシップモデルの弟分的なポジションだった。しかし、最近のミドルクラスはそれ単独で存在感を主張できる専用モデルも多くなってきた。
▲ヤマハ トレーサー900
たとえば、国産であればヤマハのMT-07/09やそのネオクラシック版のXSR700/900、そして今回新型として登場したトレーサー900。スズキのSV650/650X。カワサキのニンジャ650/Z650、Z900/Z900RS/Z900RSカフェなど。
▲スズキ SV650X
▲カワサキ Z900RS
輸入車でもBMWからフルモデルチェンジしたF750GS/F850GS。ドゥカティのモンスター821。トライアンフの765cc 3気筒を搭載したストリートリプルRS、ストリートスクランブラ―。新型タイガー800、KTMの新型790DUKE/790アドベンチャーコンセプト。MVアグスタからは新型ブルターレ800/ドラッグスター800RC/ツーリズモ・ヴェローチェ800RC等々、ざっと挙げただけでも枚挙にいとまがない。
▲BMW F750GS
▲トライアンフ タイガー800
▲KTM 790 ADVENTURE CONCEPT
こうして見回してみると、排気量的にも従来の枠を超えて600cc~900cc辺りのモデルが増えていることが分かる。いわゆるアッパーミドルクラスというセグメントだ。
世界的に見てもこの排気量クラスは活況を呈していて、特にネイキッドモデルの需要が高まっているようで、先日ある海外ブランドの国際試乗会に参加してきたが、そのプレスカンファレンスでも数字を挙げてこの事実を強調していた。
扱いやすく電制もフラッグシップ並みに
アッパーミドルクラスのメリットとしては、リッター超の大型モデルに比べてパワーや車体サイズ的にも扱いやすく、価格も比較的リーズナブルということだ。
▲ヤマハ MT-07
例えばヤマハのスポーツネイキッドで当てはめてみると、フラッグシップのMT-10はスタンダードモデルで最高出力160ps、車重210kg、価格は160万円台だが、MT-07だと同73ps、183kg、70万円台となっている。
エンジンの気筒数や動力性能もまったく異なるが、同じシリーズ名を持った大型スポーツバイクというカテゴリーで考えると、かなり敷居が低く手を出しやすいモデルということになるだろう。
また、単なるスケールダウン版に留まらず、前述のMTシリーズで言えばMT-10が直4エンジンとすると、09が3気筒、07が2気筒とそれぞれ独自性を打ち出している。さらにMT-09/07をベースとするXSRシリーズはネオクラシカルな雰囲気を与えて差別化を図るなど個性を主張しているのだ。
▲XSR700 FASTER SONS
加えて、最近は電子制御がアッパーミドルクラスにも浸透してきている。ちょっと前までは高嶺の花のフラッグシップにしか装備されていなかったパワーモードや調整式トラクションコントロール、コーナリングABS、クイックシフターなどの高精度な電制システムが標準装備されるようになってきている。
つまり、普通のライダーでも扱いやすく、最新の電子制御でサポートされるため安心安全で、価格的にも手が出しやすいのがこのクラスなのだ。
さらに欧米では税金や保険料などで優遇される(最高出力値が抑えられている場合もあるが)カテゴリーもある。
また、アッパーミドルクラスで育ったライダーが、最後は“上がりバイク“としてそのブランドの最高峰モデルへとステップアップしてもらえれば、メーカーとしても願ったり叶ったりなわけだ。
今回の東京モーターサイクルショーを探索してみて、来場者の関心度などを含め、あらためてそれを実感した次第だ。