若者の「自国民としての誇り」「自国に役立つと思うことをしたい」意識、実は日本は高め
「自国への誇り」は7割前後だが…
行政、軍事的な統括領域としての区切りにおける国家に属し、その国の一員を自認すると共に、それに誇りを持つか否か、さらには所属する国のために貢献をしたいか。一言でまとめれば「自国人の誇りと自国への奉仕」に関する問題は、日本に限らず国家に所属する人ならば、誰もが有するもの。一部からは国家への所属意識が薄いとされる若年層では、その意識はいかなるものだろうか。2014年6月に内閣府が発表した、日本や諸外国の若年層を対象にした意識調査「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」の結果から、日本も含めた諸外国の若年層における、自国への誇りと奉仕に関する意識を確認する。
各回答者に自分が所属する国に対し、自国民であることに誇りを持つか否かを聞いたのが次のグラフ。すべての国で過半数、大よそ7割前後で肯定の意見が得られた。
社会的事象に関する意思決定を嫌う、表現を変えれば中庸的思考を好む日本特有の動きとして、「分からない」との回答が一番多い結果となった。ただし肯定の意見も7割を超え、全体では高めの値を示している。むしろ「誇りを持たない」との意見が8.3%と諸外国中もっとも少ないことの方が注目であろう(「分からない」が多いのも一因だが)。
他国動向ではドイツやフランスが低めなものの、その分「分からない」の意見が多く、誇りの度合いの違い程度の可能性がある。他方、韓国は唯一「いいえ」の回答率が2割を超えて否定論者が多く、肯定派も6割を切っている。若年層に限った回答ではあるが、同国において自国民への誇りを持つ人が(過半数を超えているとはいえ)、低めの値に留まっていることに、意外さを覚える人もいるだろう。
一方、自国民としての誇りと多分に連動する、「自国のために役立つと思うようなことをしたい」、つまり積極的な帰属国への奉仕意識について尋ねた結果が次のグラフ。これは(意外にも)日本が一番高い値を示している。
今調査では全体的な若年層の意見として、日本は他国と比べると「一人一人の個人」としての認識よりも、「全体、集団の中の一員」としての認識が強く、それが各種判断や考えにも深い影響を与えていることが確認されている。今件結果からも、国という集団の中の一員としての認識が強く、その所属対象への貢献・奉仕を願う気持ちが強く表れている。賛成派の回答値が最大を示し、「反対する」という回答が13.4%と諸国中最低値なのも印象的。
日本以外の動向を見ると、自国民への誇りを持つとの意見で高い値を示したアメリカやイギリスなどで、低め(とはいえ4割を超えているが)の値が出ている。そして反対派も3割を超えている。これは両国が「個」としての認識・意識が強く、団体内の一員としての所属意識が(他国とは相対的に)低いことの表れ。自国民としての誇りの認識が一番低い韓国と、この米英との値がほぼ同率なのは興味深い。
日本国内の貢献意識
日本国内の動向、他調査項目との連動性については、もう少し詳しい分析も調査報告書に説明されている。箇条書きでまとめると、
・高学歴、労働環境が安定している人ほど奉仕意欲が強い。
・積極的に政策決定に参加したい、子供や若者が関連する政策は当事者に意見を聞くべきと考えている、自分の参加で社会現象が少しは変えられるかもしれないと考えている人ほど、奉仕意欲が強い。
という形になる。
しかしながらこれらの意欲の体現化につながる「積極的に政策決定に参加したい」「自分の参加で社会現象が少しは変えられるかもしれないと考えている」人の割合は、諸外国でもっとも低い値でしかない。レポートではこの結果を受け、若年層などに政策などへの参加機会の提供施策の推進や、社会への積極参加態度を促進する啓蒙が期待されると言及している。
一方、今件のうち2つ目の設問「自国のために役立つと思うようなことをしたい」が、そのままイコール「自国のために役立つことをしたい」では無いことに注意しなければならない。回答者当人にはイコールに違いないが、思い違いや思い込みなどにより、「自国にプラスとなる」と考えていることが、実は正反対の内容でしかない可能性は十分にある。そのような「悲劇」を極力防ぐために、適切な情報提供と判断能力の育成も求められよう。
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