雨のなかのパラエリート、横浜から「スポーツで世界と連携を!」
5月14日、早朝6時50分に横浜山下公園で始まったパラトライアスロンのレースは、世界から障害のあるアスリート42名(男子32・女子10)が出場した。コロナ禍の感染対策で昨年の大会、東京パラリンピックと無観客だったが、今回から観客が沿道に戻った。
参加者は例年より少なく、あいにくの雨が打ちつけるなか、各クラスとも東京パラリンピックメダリストを中心に男子はイギリスのジョージ・ピーズグッド(PTS5)、フランスのアレクシ・アンカンカン、カイル・クーン(PTVI/B1)、女子は、スザーナ・ロドリゲス(PTVI/B1)、メリッサ・ストックウェル(PTS2)など、トライアスロンで競い合うことを心から愛する選手らが荒天も楽しんでいた。
また、横浜市からの招待をうけ戦禍のウクライナからも男女2名の選手が出場した。
大腿義足(立位最重度障害)PTS2女子は、アメリカのベテラン、メリッサ・ストックウェルがクラス1名で出場した。ミックスゾーンでインタビューに答えてくれた。
「雨は予測していたし、応援もあって、よいレースだった。去年と違って人がいて拍手してくれるだけでエネルギーをもらった。地元の人々が温かく迎えてくれ感謝している。
(シーズンのスタートレースで)目標はできればトップ5に入り高いランクで終了し来シーズンを迎えたい」
ーー今日はPTS2の選手がいなかったなかどうやってモチベーションを保ったか?
「このカテゴリーには励ましあう仲間が必要、一人で走るのはこのレースだけであることを願っている。今日は誰かがそこにいるふりをして走った。水泳、陸上、自転車(の専門種目から)もっと若い選手を勧誘し、トライアスロンができるということを示していかなくてはいけない」
ーーあなたは退役軍人だけど、この戦争が起きている中でどう考えるか?スポーツになにができると思いますか?
「スポーツは世界を一つにする偉大な方法だ。それが今過去にないほど必要とされている。私はアメリカを代表して、星条旗を代表していることを誇りに思っている。今回ウクライナの選手が参加しているのはすごいことだ。彼らとの連帯を表明できる。スポーツは世界を一つにできるし、ここでお互いに抱擁することができる」と力強く語ってくれた。
日本勢は女子の出場がなく、男子は車いすの木村潤平がオーストラリアの選手とフィニッシュ間際でのデットヒートを魅せてくれたが惜しくも2位、東京パラリンピック銀メダリストの宇田秀生(PTS4)がフランス人2人に敗れ3位と表彰台をキープした。
木村潤平は、
「東京パラリンピック以降で初めてのレースで、レース勘を戻すのが難しかったなというのが感想です。それでも今回、東京のあと日本でやれる試合でいいとこ見せたかったんですけど、最後の最後で差されてしまって、悔しい」と話していた。
今シーズンの計画について、宇田秀生は、
「今シーズンは11月のアブダビの世界選手権、大きなレースなので、そこを目標にしたいなと思っています」と話し、2年に一度行われる世界選手権へ照準を合わせた。
ウクライナの選手については、アナトリー・バルフォロミエフ(B1)とガイドのローマン・コロル氏を通じてミックスゾーンで長い囲み取材となった。
「(バルフォロミエフ選手は)3回目の横浜のレースになります。また出場できてうれしい。残念ながら、ウクライナからこちらに、自分の国から渡航して横浜入りすることはできなかったことは残念なんですが、レース結果についてはとても満足しています」とレースの感想を述べてくれた。
また、ウクライナ選手に限らず、荒天については比較的多くの選手が雨を気にしていなかった。気温が上昇しすぎず競技しやすいと感じていたようだった。
「過去2回大会はすごく暑いコンディションだったんです。今回雨ですごくいい、いいコンディションで走れてよかった」とバルフォロミエフは伝えていた。
ミックスゾーンでのインタビューができなかったが、スザーナ・ロドリゲス(PTVI-W)などのチャンピオンクラスのパラアスリートが多く参加した横浜大会。
パラエリートのレースが終わった。感染対策下の東京パラリンピックで日本文化を楽しむことができなかった海外勢は、横浜での滞在を楽しんでいるだろうか。
※この記事は5月14日 PARAPHOTO に掲載したものです。
(取材協力 地主光太郎、真下やよい 写真取材 秋冨哲生、山下元気、内田和稔)