任天堂ゲーム機の販売動向を確認する(2014年3月末まで)
世界で一番多く売れた任天堂のハードは?…累計販売実績
任天堂が2014年5月7日付で発表した2013年度(2014年3月期、2013年4月から2014年3月)決算短信では、1月に発表した下方修正をさらに下回る営業赤字を計上し、3年連続の営業赤字となった。これはWii Uなどのゲーム機全般のセールスが不調に終わったことが大きな要因だった。また該当期の経常利益は円安の影響で60億円の黒字を出したが、純損失は232億円と大きな額を示している。
一方、その決算短信と共に、同社の各種ゲーム機の販売動向をハード・ソフトの両面から開示するライブラリデータも更新され、2013年度分までが年ベースで確認できるようになった。そこで同社の家庭用ゲーム機の販売動向を「任天堂ゲーム機の販売動向をグラフ化してみる」から更新する形で、現状を精査していくことにする。
まずは現時点でライブラリに収録されている最新のデータとなる2014年3月末時点の、累計ハード販売実績。据置型は次の通り。これらの値は「販売台数」であり、「現在稼働台数」では無いことに注意。当然、現在は押し入れの中にしまわれたままのもの、廃棄されたものなども含まれる。
意外なのは稀代の名ゲーム機ファミリーコンピューター(ファミコン)以上に、Wiiが売れていること。日本国内ではファミコンの方が販売台数は上だが、全世界で計算するとほぼ6割増しでWiiの販売台数が多い。
グラフの横軸は左から右へ行くほど販売された年代が新しいものとなっているが、ファミコンの販売以降スーパーファミコンも合わせ、ハードの販売台数が減退しているのが確認できる。ハードの台数がソフトの売れ行きに大きく影響することから、Wiiが発売されるまで「据置型ハードでは」任天堂が苦戦を強いられていたのが分かる。
続いて携帯ゲーム機。
ニンテンドーDSと同3DSは何度かマイナーバージョンアップが行われているため、そのうち「Lite」「DSi」「DSiLL」、「3DS LL」、さらには海外版のみの展開となる「2DS」(「二次元表示限定の3DS廉価版「ニンテンドー2DS」、欧米で10月12日から129.99ドルで発売」)は別途数字を掲載している。ゲームボーイやニンテンドーDSの市場がいかに大きいか、そしてニンテンドー3DSへの期待がどれほどのものかつかみ取れる。
単年と累計の変化で傾向を推し量る
以上は「累計」販売台数の状況。これを各年の販売数ごと、つまり「年次」の販売推移で見たのが次のグラフ。例えばニンテンドー3DSなら2014年3月末期(2013年4月~2014年3月)は435万台となる。こちらは日本国内に限定した値であることに注意。また煩雑さを防ぐため、2001年3月末期からのスタートとしているため、ファミリーコンピュータなどはグラフには反映されていない。
ゲームキューブのような例外もあるが、任天堂のハードはその多くが発売2年目から3年目に年次セールスのピークを迎え、後は漸減する流れを示している。これは任天堂に限らず他のハードにも当てはまることで、よほどのテコ入れや状況の変化がない限り、発売後ある一定の期間が経った後に、再び盛り返すことは考えにくい。
また、少なくとも年間1万台以上のセールスを打ち出すまでが「商品生存期間」と仮定すると、大体6年から7年がハード上の寿命(累計グラフでほぼ横ばいになった時点で「寿命」といえる)であることが予想できる。
ただし昨今は技術開発速度や娯楽上の競合他メディアの進歩発展スピードの加速化に伴い、この「6年から7年」が縮小する可能性が高い。最新のハードではニンテンドー3DSやWii Uの「寿命」がどれほどの長さを示すことになるのかが気がかり。3DSはすでにピークを超えた感があり、Wii Uもゲームキューブと似たような(、そして任天堂としては好ましくない)動向を示す傾向を見せている。
ハード別「寿命」を比較する
年次販売動向について少々切り口を変えたのが次のグラフ。横軸の時間軸を「各ハードの発売初年度からの経過年数」に揃えたものである(ニンテンドー64は1996年の発売で今件データには含まれていないので除外した)。
やはりゲームキューブの特異性、ニンテンドーDSの売れ行きの良さが目に留まる。ニンテンドー3DSはニンテンドーDSやゲームボーイアドバンスとほぼ同じ動きを見せていたが、3年度目でやや失速し、4年度目で明らかな失速を見せ、DSには及ばないことがほぼ確定してしまった。DSとゲームボーイアドバンスの間に収まる形で、今後も推移するのだろう。
ちなみに現在進行期、つまり2014年度(2015年3月期、2014年4月から2015年3月)における3DSシリーズの年度累積販売目標台数は世界全体で1200万台。前年度の1350万台からさらに150万台マイナスの領域を示している。しかしながらこの数年、任天堂では複数回にわたり3DSハード本体のセールス目標を下方修正し、それでもなお年度末には未達の状態が続いている。今年度も当初目標をそのまま維持できるか否か、少々疑問ではある。
過去のハードの発売時の環境と異なり、現在ではモバイル端末、特にスマートフォンやタブレット機の躍進による、市場の「食い合い」が懸念される。100%領域が重なっているわけではないが、多分に共通する部分は多く、影響が無いことはありえない。最新のハードとなるニンテンドー3DSやWii Uの「寿命」は、どれほどの長さを示すことになるのだろうか。今年、つまり現在進行年度は、昨年度以上に試練の年となるかもしれない。
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