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任天堂ゲーム機の販売動向をグラフ化してみる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 鳴り物入りで販売を開始したWii Uだが…(英版アニュアルレポートより)

世界で一番多く売れた任天堂のハードは?…累計販売実績

先程任天堂が発表した「通期業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」(PDFファイル)では、家庭用ゲーム機が一番良く売れる時期の年末商戦において、同社のゲーム機本体の販売が想定水準を下回り、それに伴いソフトの販売も振るわず、業績を下方修正すると伝えている。日本の家庭用ゲーム機メーカーとしては一番の老舗となる、そして世界中にその名を知られている任天堂だが、これまで販売してきた家庭用ゲーム機の販売動向はいかなるものだったのだろうか。同社が逐次公開しているライブラリデータからグラフを生成し、確認していく。

まずは現時点でライブラリに収録されている最新のデータとなる2013年9月末時点の、累計ハード販売実績。据置型は次の通り。これらの値は「販売台数」であり、「現在稼働台数」では無いことに注意。

↑ 任天堂ハード・累計販売実績(据え置き型)(万台)(2013年9月末時点)
↑ 任天堂ハード・累計販売実績(据え置き型)(万台)(2013年9月末時点)

意外なのは稀代の名ゲーム機ファミリーコンピューター(ファミコン)以上に、Wiiが売れていること。日本国内ではファミコンの方が販売台数は上だが、全世界で計算するとほぼ6割増しでWiiの販売台数が多い。

グラフの横軸は左から右へ行くほど販売された年代が新しいものとなっているが、ファミコンの販売以降スーパーファミコンも合わせ、ハードの販売台数が減退しているのが確認できる。ハードの台数がソフトの売れ行きに大きく影響することから、Wiiが発売されるまで「据置型ハードでは」任天堂が苦戦を強いられていたのが分かる。

続いて携帯ゲーム機。

↑ 任天堂ハード・累計販売実績(携帯型)(万台)(2013年9月末時点)
↑ 任天堂ハード・累計販売実績(携帯型)(万台)(2013年9月末時点)

ニンテンドーDSと同3DSは何度かマイナーバージョンアップが行われているため、そのうち「Lite」「DSi」「DSiLL」、「3DS LL」は別途数字を掲載している。ゲームボーイやニンテンドーDSの市場がいかに大きいか、そしてニンテンドー3DSへの期待がどれほどのものかつかみ取れる。

単年と累計の変化で傾向を推し量る

以上は「累計」販売台数の状況。これを各年の販売数ごと、つまり「年次」の販売推移で見たのが次のグラフ。例えばニンテンドー3DSなら2013年3月末期(2012年4月~2013年3月)は569万台となる。こちらは日本国内に限定した値となる。また煩雑さを防ぐため、2001年3月末期からのスタートとしているため、ファミリーコンピュータなどはグラフには反映されていない。また、現在進行期である2014年3月末期は当然グラフには盛り込まれていない。

↑ 任天堂・国内ハード販売動向(年次、万台)(日本国内)
↑ 任天堂・国内ハード販売動向(年次、万台)(日本国内)
↑ 任天堂・国内ハード販売動向(累計、万台)(日本国内)
↑ 任天堂・国内ハード販売動向(累計、万台)(日本国内)

ゲームキューブのような例外もあるが、任天堂のハードはその多くが発売2年目から3年目に年次セールスのピークを迎え、後は漸減する流れを示している。これは任天堂に限らず他のハードにも当てはまることで、よほどのテコ入れや状況の変化がない限り、発売後ある一定の期間が経った後に、再び盛り返すことは考えにくい。

また、少なくとも年間1万台以上のセールスを打ち出すまでが「商品生存期間」と仮定すると、大体6年から7年がハード上の寿命(累計グラフでほぼ横ばいになった時点で「寿命」といえる)であることが予想できる。

ただし昨今は技術開発速度や娯楽上の競合他メディアの進歩発展スピードの加速化に伴い、この「6年から7年」が縮小する可能性が高い。

ハード別「寿命」を比較する

年次販売動向について少々切り口を変えたのが次のグラフ。横軸の時間軸を「各ハードの発売初年度からの経過年数」に揃えたものである(ニンテンドー64は1996年の発売で今件データには含まれていないので除外した)。

↑ 任天堂・国内ハード販売動向(年次、万台)(日本国内)(発売開始年度揃え)
↑ 任天堂・国内ハード販売動向(年次、万台)(日本国内)(発売開始年度揃え)

やはりゲームキューブの特異性、ニンテンドーDSの売れ行きの良さが目に留まる。ニンテンドー3DSはニンテンドーDSやゲームボーイアドバンスとほぼ同じ動きを見せていたが、3年度目でやや失速し、DSとゲームボーイアドバンスの間に収まってしまった。経験則では4年度以降は販売数量を減らすことになるのだが、果たして実態はどのような動きを示すのか。

過去のハードの発売時の環境と異なり、現在ではモバイル端末、特にスマートフォンやタブレット機の躍進による、市場の「食い合い」が懸念される。100%領域が重なっているわけではないが、多分に共通する部分は多く、影響が無いことはありえない。最新のハードとなるニンテンドー3DSやWii Uの「寿命」は、どれほどの長さを示すことになるのだろうか。

各ハードの販売予想下方修正実態

やや余談的な話になるが、本日付で発表された任天堂の業績予想修正のリリースには、主要ハードの今年度における販売予想の修正値が記されている。それを簡単にグラフ化しておく。

↑ 任天堂・2014年3月期連結販売数量予想推移(ハード、万台)(全世界)
↑ 任天堂・2014年3月期連結販売数量予想推移(ハード、万台)(全世界)
↑ 任天堂・2014年3月期連結販売数量予想推移(ソフト、万本)(全世界)
↑ 任天堂・2014年3月期連結販売数量予想推移(ソフト、万本)(全世界)

特に最新機種Wii Uの下方修正の大きさが目立つ。通期業績予想及び配当予想の修正に関する社長会見で任天堂の岩田聡社長は「有力ソフトの発売やハードセットの展開、欧米ではハードの値下げなどを遂行したものの、勢いを回復するまでには至らなかった」「特に値下げをして臨んだ欧米地域での年末商戦期の販売実績が大きく想定を下回った」と述べており、海外での年末商戦での見込みが大きく外れたことを示している。

任天堂の第3四半期決算短信は1月末位に発表予定。その際には具体的な年末商戦における具体的セールス台数が明らかにされることになる。どれほどの値を示すことになるのだろうか。

■関連記事:

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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