戦後間もなくは1/4程度…上水道の普及率動向と現状
戦後は3割に届かず、9割は1980年代に到達
水道料金の請求書などでその存在を改めて認知する程度だが、多くの人にとって社会生活には欠かせないインフラの一つ、上水道。日本における整備状況の推移と現状を、厚生労働省の水道対策に関する政策関連資料から確認する。
最初に示すのは、上水道の普及率推移。水道事業者によって水道の供給を受けている人、専用水道(寄宿舎や社宅などの自家用水道などで100人を超える居住者に給水するもの、または1日最大給水量が20立方メートルを超えるもの)人から成る給水人口が、全人口の何%に当たるかを示したもの。
上水道が完備されている環境で生まれ育った人には不思議に思えるかもしれないが、太平洋戦争終結からわずか5年しか経過していない1950年年度では、普及率は26.2%でしかなかった。大よそ1/4程度にしか上水道という社会インフラは提供し得なかった。それが1960年代になってようやく過半数に届き、1970年代で8割、1980年代で9割に達する。
他のインフラや耐久消費財などと同様、9割を超えた付近から普及率の伸びは大人しいものとなる。しかし上昇そのものは継続。直近の2014年度では97.8%に達している。100%ほぼ不可能だが、一方で整備が待ち望まれている地域への整備は継続されている。
都道府県別の現状
次に直近となる2014年度分、2015年3月末時点における都道府県別の上水道普及率を確認する。
震災の影響で福島県をはじめとした被災地域の値がやや低めに出てしまっているが、それ以外は大よそ都市部ほど高め、地方ほど低め。また近畿地方において普及率の高さが際立っているのが一目でわかる。
これを上位・下位で整理しなおして一部を抽出し分かりやすいようにしたのが次のグラフ。
大都市圏と近畿において普及率が高いこと、地方圏で低めな値が出ていること、そして大よそ9割を超えた普及率に達しているのが分かる。
他方熊本県では一段低い値に留まっているのが目に留まる(唯一の9割以下)。これは社会生活インフラの整備が遅れているからではなく、地下水をくみ上げた飲用井戸を使用する世帯が多く、上水道を必要としない場所が多いため。仮にそのような地域に上水道のインフラを整備しても利用されなければ採算が取れず、事業そのものの優先順位が低くなるのも要因。
例えば「熊本市水保全課が提供している「くまもとウォーターライフ」内の解説ページ「世界に誇る地下水都市・熊本」」によると、熊本市では50万人以上の人口を有する都市としては日本で唯一、水道資源のすべてを地下水でまかなう都市であること、その周辺地域も含めほとんどの水道水源を地下水で充当していることなどが説明されている。
熊本県のように自然に恵まれた地域ばかりではないため、生活には欠かせない上水道の整備、さらにはその維持活動には昼夜を問わずリソースが投入され、状況の改善が図られている。他方、今後は人口の漸減と高齢化・地方の過疎化が予想されることから、地方における水道事業の採算性の問題が大きな問題点となる。行政各方面ではさまざまな決断が求められるかもしれない。
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