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金(ゴールド)の最高値更新の背景に地政学的リスクなどとともに中国の存在も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 4月12日に金(ゴールド)の国際価格が最高値を更新した。

 ニューヨーク商品取引所では、先物の中心限月6月物は前日比1.4ドル高の1トロイオンス2374.1ドルで引けたが、一時2448.8ドルと連日で最高値を付けた。

 これを受けて日本でも小売価格で12日に12931円/1gと過去最高値を更新していた。

 金(ゴールド)は今年の2月半ばあたりから上昇を強めており、連日での最高値更新となっている。

 物価の上昇、中東やウクライナを巡る地政学的なリスクの高まりも金相場にとって、買い材料となっている。ただし再び上昇し始めた2月以降にあらたな金への材料が出ていたようには思われない。FRBの利下げ観測の後退なども要因となっていたのかもしれないが、中国による金購入継続もその要因のひとつとなっていたとみられる。

 中国人民銀行(中央銀行)は7日、3月末時点の金保有高が前月比で16万トロイオンス増えたことを明らかにした。公的部門の買いが最近の金価格の上昇を支えたとの見方を裏付ける結果となった。

 これにより中国人民銀行(中央銀行)は1年5か月連続で準備資産として金を買い増ししたことになる。安全資産として金を備蓄する動きが続いているとの見方もあるが果たしてそれが主要な要因なのであろうか。

 金を最も保有している国は米国である。マンハッタンにあるニューヨーク連邦準備銀行の金庫には大量の金が保管されていまる。ここに保管されている金はすべてニューヨーク連銀やFRBのものではなく、ここに口座を保有している米政府、外国の政府、その他各国中央銀行そして公的国際機関などが含まれている。

 ロシアのウクライナ侵攻に対し、G7各国はロシア中央銀行の外貨準備を凍結し、その総額は3000億ドルに上ったとされている。

 中国が買い入れている金がどこに保管されているのかはわからない。安全性などを考慮してニューヨーク連銀に預けている可能性もあるが、中国本土にて保管している可能性もあるのではなかろうか。

 大量の金の取引によって、現実にニューヨーク連銀の金庫から輸送することは可能なのかどうか。このあたりについてはよくわからない。しかし、中国が何かしらの備えで金を購入しているとすれば、その保管先についても気になるところではある。

 金は買われ過ぎとの見方もある。しかし、世界的な地政学的リスクが高まっており、米大統領選挙も控えるなどしている。安全資産として今後さらに評価されることも予想される。金には利子は付かないものの、もしもの際に世界的に通用する実物資産であることも確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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