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安倍元首相銃撃事件を受けての金融市場の反応

久保田博幸金融アナリスト
(写真:西村尚己/アフロ)

 11時45分頃、テレビを観ながら昼食を食べようとしたところ、NHKテレビでショッキングな事件が報じられた。きょう午前11時半ごろ、奈良市で演説をしていた安倍元総理大臣が男に銃で撃たれたと。まさか日本でこのような事件が起きるとは思いもよらなかった。

 事件が報じられたのが昼休みの時間帯であったが、このタイミングで日経平均先物が下落し、ドル円も下落した(円高)。元首相が銃撃されたことによるリスク回避の動きから、円高株安となったものと考えられる。

 また後場に入っての債券先物も下落した。こちらは日銀の政策修正の可能性も一時的に意識されたものかとみられる。しかし、株式市場もその後、値を戻し、ドル円も回復。債券先物も寄り付き水準近くまで戻しており、市場への影響は限定的といえた。

 安倍元首相銃撃事件を受けて、10日の参院選にも影響は出てくるとみられるが、ここにきての予想が覆されるといったことにはならないと思われる。また、政治や経済への影響についても、元首相であり、現役の首相ではないことで、それほどの影響が出ることは考えづらい。

 参院選の結果を受けて岸田政権は政権基盤を強化してくるとみられるが、ここでは安倍氏の影響力が後退するであろうと以前から予想されており、こちらへの影響も大きくはないのではなかろうか。

 日銀の政策についても、これによって何か大きな変化が出るとは思えない。私自身はいずれ日銀は政策修正を行わざるを得ないとみているが、それが今回の事件をきっかけに行われるといったことも考えづらい。金融政策を決定するのは日銀であり、現在は黒田総裁の意向が強く反映されている。その黒田日銀と市場との対立が今後あらためて激化してくることもありうるが、今回の事件とは関係はないであろう。

 あえて影響があるとすれば日本の安全神話への影響か。海外からの安全な国、日本というイメージが、今回の事件をきっかけに変化する可能性がある。さらに選挙の在り方の見直しが入る可能性がある。街頭演説、それへの応援演説に対し、警備が強化されることは必然となるが、応援演説そのものが見直される可能性も出てこよう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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