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新型肺炎の拡大が収束との楽観的な見通しが出てきた、市場は疑心暗鬼ながらもリスクオンの動きに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米CNBCは11日、米ジョンズ・ホプキンズ大の調査として「新規の感染者数は減少している」と伝えた。

 米国のトランプ大統領は10日、気温が上がる4月には新型コロナウイルス感染の拡大が収束するとの見通しを示した。

 感染症研究の第一人者で中国政府の専門家チームを率いる鐘南山氏はロイターのインタビューに応じ、中国国内における新型コロナウイルスの流行は2月にピークを迎え、4月ごろに終息する可能性があると予想していると話した。

 米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・フォーシ所長は、「不明確な点が大変多いため、どんな予測を示しても軽率に当たるだろう」との見解を示したと、こちらはAFPが報じている。

 WHOのテドロス事務局長は11日、新型ウイルスの感染拡大は「世界全体に非常に重大な脅威」を及ぼすとした。新型ウイルスの正式名称が「COVID-19」に決定されたことを明らかにし、1年半以内に新型コロナウイルスのワクチンの用意が整う可能性があるとの見通しを示した(ロイター)。

 どれを信じるかはあなた次第、となってしまうものの、ここにきての金融市場の動きをあらためて確認すると比較的、新型ウイルスの感染拡大へのリスク感応度は低下しつつあるようにみえる。

 原油先物価格はWTIで節目とされた50ドルを一時割り込んでいたが、米国の株式市場では主要3指数が再び最高値を更新してきている。ただし、米国債利回りはなかなか戻り切れていない。

 米国大統領が言ったからといって楽観視はできないというか、大統領選を控えているトランプ大統領の発言だけにむしろ信用しにくいとの側面も当然ある。しかし、目に見えないウイルスへの脅威が、少しずつ可視化しつつあることも事実ではなかろうか。ちなみにムニューシン米財務長官も、感染拡大による経済的な悪影響は一時的と発言したようである。

 米国では「COVID-19」の感染よりも、インフルエンザによる脅威が現実味を帯びている。中国は何か隠しているのではとの疑心暗鬼もある。WHOのテドロス事務局長が指摘するように「COVID-19」による世界全体への脅威の指摘もその通りではある。

 しかし、市場は見えないリスクには大きく反応するが、そのリスクの内容が見えてくるとアンワインドの動きを強めることもたしかである。新型ウイルスの感染拡大がピークアウトする前に市場では、すでにそのリスクへの反応はピークアウトしつつあるのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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