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契約延長に合意し日本残留を決めたステフェン・ロメロが語った本音

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
契約延長しても試合に臨む姿勢は変わらないステフェン・ロメロ選手

 オリックスがシーズン真っ只中の8月4日、今季加入のステフェン・ロメロ選手と来季から3年間の契約延長に合意したと発表した。各メディアが報じているように、この時期に外国人選手と契約更新を行うのはオリックスにとってかなり異例のことだという。それだけロメロ選手の残留を熱望していた証だろう。

 それは成績の上でも明らかだ。4月22日に左ヒザを負傷し1ヶ月以上戦線離脱しながら、ここまで21本塁打(T-岡田選手に続きチーム2位)、48打点(チーム1位)を記録し、すっかりチームの4番として機能している。さらに開幕から好調を維持し一時は貯金9を記録してたチームがロメロ選手の離脱と同時に失速。彼がチームを離れていた4月25日から5月28日までは8勝22敗に沈んだ。明らかにロメロ選手が及ぼすチームへの影響力の大きさは計り知れないものがあった。

 契約延長について「嬉しいよ」と笑顔を見せるロメロ選手だが、昨年11月にオリックス入りを決めた時は将来のビジョンについて何も考えてなかったという。今回の契約交渉についてもすべてエージェント任せで、ギリギリまで知らされてなかったらしい。

 「オリックス入りが決まった時は何のプランもなかった。とにかく毎日、毎試合をしっかりやりきることだけを考えていた。この1年間をしっかり集中していき自分なりのプレーができれば、また日本でプレーできるかもしれないし、アメリカに戻ることもできるだろう、ぐらいに考えていた。そんな中で幸運にもオリックスが契約延長のオファーを出してくれ、日本でプレーを続ける機会を得ることができたんだ」

 選手の中には大型契約を勝ち取った途端、気が緩んでしまうのか成績が落ちてしまうケースもあったりするが、ロメロ選手に関してそんな不安を抱く必要はないだろう。契約延長してもロメロ選手が試合に臨む姿勢はまったくぶれていないからだ。

 「3年先のことなんてまったく頭にない。今はしっかり残りシーズン2ヶ月を戦うことに集中している。明日不慮の事故に襲われ、3年間プレーできないことだって有り得るんだ。そんなことを考えるよりも、しっかり目の前の試合を全力でプレーすることだけに邁進することに集中している」

 普段から会話を交わしていてロメロ選手の生真面目さ、誠実さが伝わってくるのだが、来日1年目でこれだけの成績を残せているのも、やはりこの誠実な姿勢があるからだろう。もちろんロメロ選手がプレーしやすい環境を整えているオリックスの気配りもあるが、彼は異国の地でも臆することない精神的なタフさを擁している。

 「覚悟を決めたら、あとは信念も持ってやり切るしかない。野球はメンタルが重要なスポーツだ。自信を失わずプレーを続ける意志がなければ、安定した成績を残すことができない。特に異国でプレーする外国人選手なら尚更だ。とにかく自分を信じてやっているよ」

 これほど野球と真摯に向き合うロメロ選手だからこそ、家族愛も半端ではない。今回の契約延長においても家族への気遣いを感じさせてくれる。

 「契約延長は僕だけでなく家族も喜んでくれているけど、ただ今後3年間はなかなかアメリカに戻るのが難しくなってしまうよね。日本は遠いからね。生まれたばかりの子供も4人の祖父母と離れて育っていくことになるし、多少家族にはタフではあるけどね…」

 残念ながらオリックスのCS進出は難しい状況になる。だがロメロ選手はシーズン最後まで全力でプレーしてくれることだろう。来シーズン以降に繋がる素晴らしいフィニッシュを期待したいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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