自転車による交通死亡事故の相手の実情をさぐる(2019年時点最新版)
自転車の利用者が増えるに連れ、自転車が関与する交通事故への注目が集まっている。自転車による交通死亡事故において、どのような対象が事故事例としては多いのだろうか。警察庁が2019年2月に発表した報告書「平成30年における交通死亡事故の特徴等について」から確認する。
まずはグラフなどで用いる用語の解説。「自転車(第1・2当事者)の相手当事者」だが、これらの意味は次の通り。
・第1当事者…最初に交通事故に関与した車両の該当者のうち、過失の重い側。同程度の時には負傷程度が軽い側。
・第2当事者…最初に交通事故に関与した車両該当者のうち、第1当事者以外の人。
例えば自転車の故障によるトラブルで転んだり、不注意で電信柱にぶつかった場合は自転車の運転手がそのまま第1当事者となり、第2当事者は存在しない。一方、正しい場所を走行していた自転車に自動車が不注意で接触して事故が発生した場合、自動車側が第1当事者となり、自転車は第2当事者となる。
その自転車による交通死亡事故の件数を相手別に区分した上で積み上げグラフ式にしたのが次の図。自動車相手の事案が多いため、それを除いたグラフも併記した。
自転車による死亡事故の件数は年々減少を続けている。そして相手の大半が自動車であるのは間違いない。
自転車事故・死亡事故の件数はおおよそ年々減少を続けている。そして自転車による死亡事故において、相手の大半が自動車であることには違いは無い。
これを分かりやすいように比率換算したのが次のグラフ。縦軸をずらし、最小値を底上げして成型している。
対自動車比率がわずかずつだが減っており、自転車死亡事故件数よりも速いスピードで、自転車の対自動車死亡事故件数が減少していることが分かる(同じ比率で「数」が減るのなら、シェアもそう大きくは変わらない)。他の項目はほぼ横ばいの中で、自転車単独事故が(比率の上で)大きく増加しているのが確認できる。自転車単独事故は最古データの1997年・3.4%と比較すれば、2018年・19.2%は6倍近くに値する。
この自転車単独事故とは具体的には工作物との衝突、転倒事故を意味する。この件数は50件/年前後で推移していたが、2013年は一挙に87件にまで増加、2014年にはやや減少して78件となったが、2015年では113人となり、初の3ケタ突破。直近の2018年では前年比でマイナスとなり、2016年に計上した過去最高値となる122人から減少傾向を継続しているのは幸いである。
自動車や他人との接触ならともかく、自転車単独事故は自責によるところが大きい。自転車に乗る際には無理をせず、注意を十分に払って運転するべき。自転車も道交法の適用範囲となる車両に違いない。特に判断力に劣る高齢者には「大重量で高速移動する自動車では無く、人力で動く軽量の自転車だから」「免許のいらないものだから」と油断することなく、安全第一を心掛けてほしいものである。
なお自転車乗用中による交通事故死者数そのもの、そして該当属性の人口10万人あたりの交通事故死者数を確認すると、ハンドル操作や安全不確認のような安全運転義務違反、交差点安全進行や一時不停止、信号無視などの点で、高齢者(65歳以上)の死者数が、高齢者以外と比べて大きいことが確認できる。単純な人数だけで無く、人口10万人あたりでも差が出ているため、高齢者による自転車乗用の死亡事故リスクが高いことがあらためて認識できる。
今後高齢者の総数の増加、高齢者と判断される層におけるさらなる高齢化に伴い、自転車乗用中による死亡事故件数・全体比率が増加することは容易に想像できる。安全な自転車運転に関し、これまでにも増して積極的な手立てを講じることが求められよう。
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