新外国人選手が日本で求められること
シーズン開幕と同時に投打にわたり鮮烈なデビューを飾った大谷翔平選手に、多くの日本人ファンが驚喜したことだろう。すでに日本でも大々的に報じられているように、あまりに驚異的な活躍ぶりに、米メディアも賞賛一色に包まれている。スプリングトレーニング中になかなか成績を残せず、開幕メジャー入りを疑問視する声が出ていたことを考えれば隔世の感がある。
日本では多くのメディアが米国挑戦1年目ということで公式球やマウンドの硬さなど環境の変化への対応の難しさを指摘してきたが、結局米メディアはそうした面を軽視し、オープン戦の結果という目の前の事実だけで論じようとした。中にはスカウトの証言を借りて「打撃はメジャーのレベルに達していない」と報じるメディアも出現していたが、実際の大谷選手は開幕に合わせて環境に適応し、全米中を驚かせるような活躍をしているのだ。
この傾向は今に始まったことではない。これまでも野茂英雄投手、イチロー選手など多くの日本人メジャー選手たちがスプリングトレーニング中に懐疑的な見方をされ、シーズンに入って大活躍することでそうした報道を黙らせてきた。
これは米国に限ったことではなく、日本も変わりはない。NPBにやってくる新外国人選手に対し、最初から結果だけで判断しているように思える。日本人選手がMLBにいって環境の違いを感じているように、NPBにやって来た外国人選手たちも環境の違いを感じていないはずはないのにあまり意識されずにきた。もちろんプロの世界は結果がすべてだ。ただ最初は結果だけに囚われず、大谷選手と同様の視点をNPB入りしてきた新外国人選手に向けてもいいはずだ。
MLB公式戦180試合に登板し通算12勝の実績を引っさげて千葉ロッテに加入したタニー・シェッパーズ投手も新外国人選手の1人だ。ここまで開幕から一軍メンバーに入り、4試合に登板し、4イニングを投げ1本塁打を含む7安打3失点で防御率6.75の一方で8三振を奪っている。現時点で評価は分かれるところだと思うが、記録上は2ホールド1セーブを残しチームの勝利に貢献しているのも事実だ。
2009年に大学卒業と同時にレンジャーズからドラフト1巡目指名を受けプロ入り。2012年にメジャー初昇格を果たすと、翌13年にはメジャーに定着し、76試合に登板し6勝2敗1セーブ、防御率1.88の好成績を残している。14年以降はメジャーに定着できずマイナーとメジャーを往復する状態だったが、それでも昨年まで6年連続でメジャーのマウンドを踏んできた。その実績を考えれば、現時点でシェッパーズ投手のすべてを語ることはできないだろう。
「(NPB入りして)ここまでスムーズに来ていると思う。確かにいくつかの点で難しい部分はあるけど、家族も日本に来ているし、チームメイトも皆温かく迎えてくれ、うまくチームに溶け込むことができていると思う。
どこか他の国に行けば、マウンドもボールもストライクゾーンも違ってきて当然だ。球場も野外、屋内だったり、野球自体も違ってくる。だが自分がコントロールできることだけに集中し、それ以外の部分は考え過ぎずにできるだけシンプルに捉えようとしている」
どんな選手でも異国の地にやって来て環境が大きく変わる中で、すぐに自分の能力を発揮することは難しいだろう。昨年デニス・サファテ投手も話してくれたが、変わった環境に不満を募らせるのでなくすべてを受け入れた上で、その中で自分らしいプレーができるよう導き出していくのが重要なのだ。現在のシェッパーズ投手はどのように日々取り組んでいるのだろうか。
「とにかく毎日しっかり準備を整えていくことを心がけている。まだほとんどの打者と対戦していないのでリサーチも行っている。また自分の助けになるからチームメイトやコーチからのアドバイスを聞いて、少しでも安定した投球ができるよう取り組んでいる。すでに(アドバイスを受けて)今まで以上に盗塁を意識するようになり、クイックスローを心がけるようにしている。
日本の打者はすごく訓練されている。甘い球が来るまでファウルで粘るし、チームプレーで次の打者に繋げようという意識が強い。米国では打者1人1人がホームランの意識が強いんだ。やはり投球のアプローチも少し変わってくるし、もっと自分の投球ができるように集中しないといけないと感じている」
シェッパーズ投手は今まさにNPBという新しい環境に適応する作業に取り組んでいる真っ最中だ。もちろん彼の努力がいつ実を結ぶかは定かではないし、結局最後まで適応できないこともあるかもしれない。ただシェッパーズ投手がNPBで成功しようと、前向きに取り組んでいることだけは確かなのだ。
これまで米国でMLBを取材してきた際は、時にはメディアから批判を受けながらも必死に頑張ってきた日本人選手たちを見続けてきた。だからこそシェッパーズ投手をはじめとするNPBにやって来た外国人選手に対しても、結果だけでは見えてこない彼らの姿に目を注いでいきたい。