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10月の日銀金融政策決定会合の議事要旨より

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は24日に、10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合の議事要旨を公表した。このなかの「金融政策運営に関する委員会の検討の概要」のところを確認してみたい。  この会合では全員一致で金融政策の現状維持を決めた。

 「一人の委員は、内外における不確実性の高まりを踏まえると、金融政策をより慎重に運営していく必要があり、今回は現状維持が適切と指摘した。」

 最初の意見者なので植田総裁の発言かと思われるが不確実性というのは常に高い。しかし、たとえば12月の決定会合前後では、その不確実性が後退していたとも思われるのだが。

 「何人かの委員は、これまでの政策金利引き上げの経済・物価への影響も見極める必要があると指摘した」

 米国ではFRBが2023年には1月、2月、3月、5月、7月に利上げを決定していたが、いったいどの程度の期間を掛けて見極める必要があるのか。

 「このうちの一人の委員は、過去30年間、0.5%を上回る政策金利を経験してこなかったわが国では、いわゆる金利のある世界への移行には、相応の不確実性があるため、政策金利引き上げの判断は時間をかけて慎重に行う必要があるとの見解を示した。」

 時間を掛ける必要性の理由はこれであろうが、慎重過ぎるのも市場に妙な安心感を与えかねず、たとえば予想以上に円安が進行するなどの副作用も出てくる。市場に対しては利上げの可能性ありという緊張感を与える必要もあるのではなかろうか。

 「この間、ある委員は、経済・物価が想定通り推移する場合、早ければ 2025年度後半に 1.0%の水準まで段階的に利上げしていくパスを前提とすれば、経済・物価の進捗を見守る時間が今回はあるとの認識を示した。」

 これは12月の決定会合で反対意見を出した田村委員の意見かもしれない。 2025年度後半に 1.0%の水準まで段階的に利上げしていくというパスを前提とすれば、12月の0.5%への利上げが適切であったはず。

 その後、2025年の前半に0.75%、夏の参院選を挟んで、後半に1.0%への引き上げが想定されたのだが。

 「別の一人の委員は、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げていくというコアメッセージを、しっかりと発信していくことが、市場とのコミュニケーションという観点からも重要であるとの認識を示した。」

 コアメッセージというか「利上げ」をすることで、その姿勢を12月に示すべきであった。

 何故、12月のタイミングで利上げをしなかったのか。市場はこれで今後の利上げは困難との見方すら出ているのだが。もし来年、利上げをするのであればしっかりしたメッセージを伝える必要が出てくる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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