ロシア軍が約3週間ぶりに巡航ミサイルを発射、報復目的で予定外の攻撃を仕掛けた為か、発射数は前回の半分
1月15日にロシア軍がウクライナに対し大規模な長距離ドローン・ミサイル攻撃を実施しました。これは前日の1月14日にウクライナ側が仕掛けたロシア領への大規模な長距離ドローン・ミサイル攻撃に対する報復とみられます。
つまり予定にない攻撃を急きょ仕掛けたもので、大規模攻撃といっても中途半端な数に終わっており、ロシア側のミサイル備蓄量が満足ではないことを裏付けています。長距離巡航ミサイルによる攻撃は2024年12月25日以来で約3週間ぶりとなります。
2025年1月15日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部
- イスカンデルM/KN-23弾道ミサイル×1飛来0撃墜
- Kh-22/Kh-32超音速対艦ミサイル対地運用×7飛来0撃墜
- Kh-101/Kh-55SM巡航ミサイル×27飛来23撃墜
- カリブル巡航ミサイル×4飛来3撃墜
- Kh-59/Kh-69空対地ミサイル×4飛来4撃墜
- 敵性無人機×74飛来47撃墜27未到達
※高速ミサイル:迎撃率0%(8飛来0撃墜)
※低速ミサイル:迎撃率86%(35飛来30撃墜)
※低速ドローン:迎撃率100%(74飛来47撃墜27未到達)
突破を許したのは高速ミサイル8発と低速ミサイル5発となっています。ドローンは脅威判定した目標を全て撃墜しており突破はありませんでした。
- 高速ミサイル:イスカンデルM/KN-23、Kh-22/Kh-32 ※超音速以上
- 低速ミサイル:Kh-101/Kh-55SM、カリブル、Kh-59/Kh-69 ※亜音速
- 低速ドローン:シャヘド136/131、ガーベラ、パロディ ※後者2種類は囮機
ドローンの種類についてはウクライナ空軍司令部の発表では「シャヘド」型や様々な種類の模倣無人機(囮無人機の意味)としているだけで、ガーベラ、パロディの機種名は筆者の推定です。
高速ミサイルについて:弾道ミサイルの不足と転用兵器
弾道ミサイルはイスカンデルMないし北朝鮮製KN-23が1発のみの使用で温存されています。代わりにKh-22ないし改良型のKh-32の超音速対艦ミサイル7発を転用して対地攻撃に投入していますが、本来が対艦ミサイルなので対地攻撃ではINS(慣性誘導)しか使えずに命中精度は劣悪で、報復として無差別攻撃を仕掛けた以上の意味はありません。
ウクライナ側が高速ミサイルを迎撃することが出来なかったのは、パトリオット防空システムが配備されていない地域を狙われた結果によるものです。
低速ミサイルについて:前回の大規模攻撃の半分
巡航ミサイルは亜音速で飛ぶタイプが3種類(Kh-101、カリブル、Kh-59/Kh-69)が35発(30撃墜、迎撃率86%)のうち、長距離攻撃の主役である2種類(Kh-101、カリブル)が31発です。これは過去の大規模攻撃と比較しても少ない数で前回の半分の規模です。
長距離型の巡航ミサイルの飛来傾向(二桁発射以上を記載)
- 2025年01月15日:31飛来 ※Kh-101×27、カリブル×4
- 2024年12月25日:62飛来 ※Kh-101×50、カリブル×12
- 2024年12月13日:86飛来 ※Kh-101×55、カリブル×24、イスカンデルK×7
- 2024年11月28日:85飛来 ※Kh-101×57、カリブル×28
- 2024年11月17日:101飛来 ※Kh-101×73~77、カリブル×24~28
- 2024年09月02日:14飛来 ※Kh-101×14
- 2024年08月26日:105飛来 ※Kh-101×77、カリブル×28
※Kh-101、カリブル、イスカンデルKのみを集計。Kh-59/Kh-69は除外。一桁発射(9発以下)の日は除外。
ロシア軍の1月15日の攻撃は前日のウクライナ軍の攻撃に対する報復として急きょ決まったものとみられ、使用を控えて貯め込んでいた生産分の備蓄が不十分な数のまま投入されています。1月15日の攻撃はKh-101とカリブルの投入数が31発と、前回12月25日の攻撃62発の半分の数となっています。
低速ドローンについて:大量の囮無人機は効果無し
長距離無人機は74飛来47撃墜27未到達で脅威目標は全て撃墜して阻止しています。これには囮無人機が大量に混じっていることが最近の数カ月間の傾向で判明していますが、自爆無人機の突破を助ける効果はまるで上がっていない失敗気味の戦法であることが分かっています。迎撃戦闘の集計記録からはそのように結論付けられます。