西欧諸国のポピュリストはニュースメディアを信用しない
社会の日々の移り変わりや国内外のさまざまな動向を知るのに欠かせないニュース。その情報源となるニュースメディアを、西欧諸国の人達はどれほど信用しているのだろうか。アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年5月に発表した調査「In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology」(※)の報告書の内容から確認する。
次に示すのはニュースメディア全体に対し、どれほど信用しているかを「大いに」「それなりに」「あまり信用していない」「まったく信用していない」の4択で尋ね、そのうち肯定派の「大いに」「それなりに」を確認したもの。
調査対象国ではドイツ・オランダ・スウェーデンにおいて肯定派が多く6割台と突出しており、それ以外はデンマークで5割近くとなっているが、残りの4か国は3割前後に留まり、対照的な結果が出ている。傾向的にはイギリスを除けば南部諸国ほどニュースメディアへの信用が無いと読むことができる。逆に北部諸国では信用が比較的あると解釈できる。イギリスは歴史的背景によるものだろうが、その他の南部諸国については、民族的傾向も影響しているのかもしれない。
この動向について、回答者がポピュリスト(※※)か非ポピュリストかで区分したのが次のグラフ。グラフは両派の差異が大きい順となっている。
差異はあるがどの国でもポピュリストの方が非ポピュリストよりもニュースメディアへの信用度が低い。元々ポピュリストの定義として、現在の国家社会に問題がある、否定すべきであるとの認識が多少なりとも存在し、そのような状況になった一因としてニュースメディアが期待している機能を果たしていないと考えている人がいるからだろうと思われる。つまりニュースメディアが責任を果たさないような存在だから現状のような否定すべき社会となっており、そのような状況に至らしめたニュースメディアを信用できるはずは無いとするものだ。
オランダやイタリアでは両派の差異はさほど無いものの、それ以外の国ではおおよそ半分程度の信用度に留まっている。スペインやフランス、イギリス、イタリアではポピュリストの26%しかニュースメディアを信用していない。
国によってニュースメディアの実情、品質がどれほどなのかはまた別の問題だが、諸国の情報伝達にかかわる問題が垣間見れるような結果には違いない。特に全体では信用度が高いにもかかわらず両派の差が大きいドイツやスウェーデンでは、ニュースメディアに対する市民からの反応も色々と複雑なものとなっているであろうことは容易に想像できよう。
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※In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology
2017年10月から12月にかけて西欧諸国(デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリス)を対象にしたもので、有効回答数は各国2000人強。RDD方式によって選ばれた18歳以上の自国居住者を対象に電話(固定電話と携帯電話双方)によるインタビュー形式で実施されている。結果の値にはそれぞれの国の国勢調査の結果を用いたウェイトバックが行われている。
※※ポピュリスト
現状における国家社会・社会体制を否定し、打破を掲げる政治思想(ポピュリズム。大衆主義、大衆迎合主義とも表現される)を持つ人のことを指す。その行動の際に一般市民の権利や利益、思惑を提示したり、不安などを悪用して扇動する方法が用いられる。
今調査では2つの設問「国全体の問題を解決する場合、一般の人は選挙で選ばれた人よりもよい成果を出すか否か」「選挙で選ばれた公務員は回答者自身のような一般の人の考えを気にするか否か」への回答を基に、回答者自身がポピュリストか非ポピュリストかを属性付けている。「一般の人の方がよい成果を出す」「公務員は一般の人の考えを気にしない」との回答ならポピュリストの属性に区分され、「選挙で選ばれた人の方がよい成果を出す」「公務員は一般の人の考えを気にする」ならば非ポピュリスト、いずれか・双方の設問で回答をしなかった人などは中庸的立場と区分される。
昨今のヨーロッパ諸国ではこの考えが浸透しつつあるとの指摘もあり、今回の調査では精査対象項目として取り入れられたと思われる。
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