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【社会人野球】あの大人気「バター最中」が野球場で買える!? 日本選手権東北大会で宮城・丸森町をPR

高橋昌江フリーライター
社会人野球の大会で宮城・丸森町の物産展を開催。バター最中にフルーツサンドも登場

 「第48回社会人野球日本選手権最終予選東北大会 Supported by 仙台ターミナルビル株式会社」が8日から仙台市民球場(宮城県)で始まる。出場するのはTDK(秋田)、JR秋田(秋田)、トヨタ自動車東日本(岩手)、JR盛岡(岩手)、JR東日本東北(宮城)、七十七銀行(宮城)、日本製紙石巻(宮城)の7チーム。優勝チームが11月3日から京セラドーム大阪などで開催される日本選手権に出場する。入場料は一般が700円、JABAファンクラブ会員が400円、大学生以下は無料(同伴の保護者も無料)。組み合わせは次の通り。

組み合わせ。7チームが出場し、日本選手権大会の出場権を目指す
組み合わせ。7チームが出場し、日本選手権大会の出場権を目指す

 主催するJABA東北地区連盟では今年から大会でのイベントに力を入れており、今回も大会期間中にさまざまな企画を用意している。中でも、宮城・丸森町の特産品などを扱う、地元の町の物産展は今回が初めて。「地域と連携し、社会人野球のよさ、各市町村のよさをアピールできればいいなと思っています」と内海利彦会長。全試合の5回終了時には抽選会が行われ、来場者にプレゼントを進呈。抽選券は入場時に配られる。新沼悟専務理事は「地元と関わり、試合にいろんな付加価値をつけていきたいと思っています」と話す。

■悠久の歴史を感じる伊達家ゆかりの“猫神様の町”

 宮城県の最南端に位置する人口12,000人ほどの丸森町。仙台藩を築いた伊達政宗の曽祖父、伊達稙宗が隠居した丸山城址があり、政宗の初陣の地でもある。町を流れる阿武隈川はかつて江戸と東北を結ぶ輸送の要で、舟運の歴史を伝える「阿武隈ライン舟下り」(11キロを約70分で周遊)では豊かな自然を堪能できる。また、養蚕が盛んだった頃、ネズミを駆除する猫を大切にしており、守り神の「猫神」として祀ってきた。猫の姿が刻まれた石碑や石像は町内に80基以上あり、その数は日本一と言われている「猫神様の町」でもある。

伊達家にゆかりのある丸森町。猫神様の聖地でもある
伊達家にゆかりのある丸森町。猫神様の聖地でもある

「野球の大会で丸森をPRしていただけるのは大変、感謝です」と話すのは、一般社団法人丸森町観光物産振興公社の横山博昭理事長。丸森町は令和元年東日本台風で「町政史上最悪」の甚大な被害を受け、現在は河川防災ステーションを整備中だ。緊急用資材を備蓄しておくほか、災害発生時には復旧を迅速に行う基地となる。また、物販スペースなどがある阿武隈ライン舟下りやリバーアクティビティの拠点などになり、防災や川辺の安全の学習機会なども予定されるなど、平常時の活用も考えられた施設になる。災害から立ち上がる丸森町。横山理事長は「これをきっかけに丸森を多くの人に知っていただき、今度は丸森に来ていただけるように広がっていけばいいなと思います」と期待する。

「阿武隈ライン舟下り」では阿武隈川の雄大な自然を楽しめる
「阿武隈ライン舟下り」では阿武隈川の雄大な自然を楽しめる

■羽生君が差し入れたあのモナカの“原点”

 物産展は8、9日の2日間、10時から15時まで球場の入り口で開かれ、昔ながらの製法で作られた梅干し(550円)や丸森産のゆずを使用した「ゆずぽん酢しょうゆ」(600円)などを販売予定。「猫神様の町」だけに猫をモチーフにした土産品が多く、その中の1つであるにごり酒「丸森 猫神めぐり」(1,300円)も店頭に並ぶ予定だ。

 こうした特産品の中でも今回の目玉は、明治26年創業の和洋菓子店「栄泉堂」の「ゲランド塩入り バター最中」だ。県内の取扱店では売り切れてなかなか手に入らず、通販ではソウルドアウトが続き、「丸森まで行かないと買えない」とも言われている人気商品がなんと仙台市民球場で購入できる。

 このバター最中が“原点”となっている「シーラカンスモナカ」は、フィギュアスケート男子で五輪連覇を達成した仙台市出身のプロフィギュアスケーター・羽生結弦さんがアイスショーの際に差し入れしたことで知られる。仙台市の人気洋菓子店「カズノリイケダ アンディヴィデュエル」の系列店「メゾン シーラカンス」で販売されており、オーナーパティシエの池田一紀さんの実家が栄泉堂。違いは、シーラカンスモナカがフランス産のバターを使用しているのに対し、バター最中は国産バターを使用しているのだそう。ただでさえ人気のモナカだが、“羽生君”の影響力は凄まじく、こちらもオンラインショップで売り切れ、注文が殺到。店舗では行列ができるという。

明治26年創業の栄泉堂
明治26年創業の栄泉堂

 野球観戦に来て購入するパターンはもちろんのこと、バター最中をはじめとする丸森町の商品を購入しに来て野球観戦をするということもあるかもしれない。こうした市町村とのコラボレーションが定着してくれば、野球に馴染みのない人々が球場に足を運ぶきっかけになっていく可能性もある。そして、大会を通じた地方の活性化につながるかもしれない。

■フルーツサンドも登場、旬はマスカット!

 大会が開かれる3日間、「MARUMORI CAFÉ」のフルーツサンドも登場する。「9月は丸森町が力を入れているマスカットが出始めるので、マスカットのフルーツサンドや惣菜系のサンドイッチなど、7〜8種類を予定しています」と代表で管理栄養士の中津川かおりさん。価格は1個、400円から500円前後。

「MARUMORI CAFÉ」に並ぶフルーツサンド
「MARUMORI CAFÉ」に並ぶフルーツサンド

 2021年4月にオープンした「MARUMORI CAFÉ」。フルーツサンド単体からスタートし、隣の直売所の丸森産野菜やお米を使ったランチプレートを開始した。「コロナ禍では都市部から人混みを避けるようにして田舎に来て、ゆったりとランチを召し上がる方たちがいたのですが、だんだんとこちらに来る流れが少なくなってきました」と中津川さん。今年7月から地域住民向けにシフトし、昼は麺類、夜は焼肉と居酒屋に業態を変更した。新型コロナが5類感染症に移行し、人々の生活も変化してきた中で、中津川さんは「近隣から来てくださる方に向けたマーケットと、今回のように自分たちが出向き、動くスタイルのマーケットも有効な手段かなと思っていました」という。「MARUMORI CAFÉ」ではキッチンカーを所有しており、近隣のイベントに参加してきたが、仙台で、それもスポーツの大会に出店することで新しい客層も見込めそうだ。

「今回が知っていただくきっかけになればありがたいなと思います。これから柿や栗、サツマイモ、イチジクなど秋の味覚が出てきて、フルーツサンドの種類が増える時期なんですよ。ウチのガラスケースに入りきらないくらいの種類数になります。また、イチゴは冬が一番、美味しいんです。選手や観客の方に食べていただいて、気に入ったら地方配送もしているのでご利用いただければと思います」

2021年4月にオープンし、3年目を迎えた「MARUMORI CAFÉ」
2021年4月にオープンし、3年目を迎えた「MARUMORI CAFÉ」

 観客だけでなく、参加チームのスタッフや選手も丸森町を知ることで、シーズンオフなどに訪れてみるのもいいだろう。今回は宮城・丸森町だが、JABA東北地区連盟では来年以降、他の市町村との関わりも模索している。大人の真剣勝負が繰り広げられる社会人野球。観戦のハードルを低くし、ファン層を広げるきっかけにしていきたいところだ。

(写真はすべて筆者撮影)

フリーライター

1987年3月7日生まれ。宮城県栗原市(旧若柳町)出身。大学卒業後、仙台市在住のフリーライターとなり、東北地方のベースボール型競技(野球・ソフトボール)を中心にスポーツを取材。専門誌やWebサイト、地域スポーツ誌などに寄稿している。中学、高校、大学とソフトボール部に所属。大学では2度のインカレ優勝を経験し、ベンチ外で日本一を目指す過程を体験したことが原点。大学3年から新聞部と兼部し、学生記者として取材経験も積んだ。ポジションは捕手。右投右打。

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