3割近くは「天地無用」を逆の意味で覚えている衝撃
慣用句などの言い回しは、その言葉を発した側が意図した内容が、そのまま相手に伝わらない場合がある。時として正反対の内容で受け取られることすらあり、注意が必要となる。文化庁が2014年9月に発表した「国語に関する世論調査」の結果から、実態の一部を垣間見ることにする。
今件で取り上げる「慣用句」とは、昔からの習慣的に使われていた言葉、そして言い回しの類を表す。一言で例えるならば「比ゆ的な表現」。今回調査結果の報告書では、6つの慣用句などについて、本来の意味を知っているか否かの確認が行われている。回答者が正しいと思う選択肢を一つ選んでもらったものだが、「世間ずれ」「やぶさかでない」「まんじりともせず」の3つは、本来とは異なる意味の方が多くの支持を得ている結果となった。次のグラフがその実態だが、本来の意味の選択肢には棒グラフ部分を赤く、説明項目文面を薄く青地で着色している。
要は赤い棒が長いほど、その言葉が本来の意味で使われていることになる。しかし一番正答率が高い「天地無用」ですら6割足らずに留まっている。逆の意味「上下を気にしないでよい」と思っていた人は29.2%と3割近く。荷物の注意書きに「天地無用」と書かれており、誤解釈のまま対応すると、悲劇が起きてしまう。
「煮詰まる」はよく使われる表現だが、本来の意味で使っている人は5割強、異なる意味合い「行き詰って結論が出ない状態」は4割に達している。また、本来の意味の方が回答率が高いものの、「分からない」との回答の方がさらに多い「他山の石」のような事例もある。
「世間ずれ」「やぶさかでない」「まんじりともせず」の3項目は本来の意味で無い方の使い方をしている人の方が多い。特に「世間ずれ」「まんじりともせず」は差異が20%ポイント前後もあり、むしろ本来とは違う意味の方が大いに使われている。
なお報告書でも本来の意味合いの選択肢を「正しい表現、使い方」とは説明していない。あくまでも「本来の意味」で、それが唯一無比のものものでは無く、時代の流れと共にその表現が意味するものが変わっていく可能性を暗に示している。
「慣用句」であればこその表現だが、これらの慣用句ではいわゆる「世代間ギャップ」も確認されている。若年層と高齢層で意見の対立がしばしば生じるのも、言葉そのものの意味のとらえ方の違いが、一つの原因かもしれない。
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