ビタミンAは皮膚がんを予防できる?|52,877人の女性を対象とした衝撃の研究結果
【ビタミンAと皮膚がんの関係性に関する最新の大規模研究】
皮膚がんは現在、世界中で最も一般的ながんの一つとなっています。特に高齢女性における悪性黒色腫(メラノーマ)や非メラノーマ性皮膚がん(基底細胞がんや有棘細胞がんなど)の発症率は、近年著しく増加しています。
このような背景から、スタンフォード大学を中心とする研究グループは、ビタミンAの摂取と皮膚がんリスクの関連性について、大規模な調査を実施しました。
【研究方法と対象者について】
この研究では、Women's Health Initiative(女性健康イニシアチブ)の観察研究に参加した52,877人の閉経後白人女性を対象に、平均17.8年という長期間にわたって追跡調査を行いました。
参加者の特徴として以下が挙げられます:
・年齢:50歳以上の閉経後女性
・教育レベル:81.4%が大学教育を受けている
・BMI:57%が過体重または肥満
・喫煙歴:50%が非喫煙者、44.9%が過去の喫煙者
研究チームは、食事とサプリメントからのビタミンA摂取量を以下の形で詳細に調査しました:
・レチノール(動物性食品由来のビタミンA)
・プロビタミンAカロテノイド(植物性食品由来)
・ベータカロテン
・アルファカロテン
・ベータクリプトキサンチン
【驚きの研究結果と臨床的意義】
調査期間中に確認された皮膚がんは以下の通りです:
・悪性黒色腫:1,154例(うち51.6%が上皮内がん、47.2%が浸潤がん)
・非メラノーマ性皮膚がん:9,085例
これまでの研究では、高用量のビタミンA(レチノイド)は、特に臓器移植後の患者さんや色素性乾皮症の患者さんにおいて、皮膚がんのリスクを低下させると考えられてきました。
しかし、今回の研究で予想外の結果が明らかになりました:
1. 総ビタミンA摂取量と悪性黒色腫リスクには関連が認められませんでした。
2. 食事由来のビタミンAとベータクリプトキサンチンの摂取量が多い群では、むしろ非メラノーマ性皮膚がんのリスクが若干高まることが判明しました(オッズ比:1.12および1.22)。
3. 血清ベータカロテン値が高い群では、非メラノーマ性皮膚がんのリスクが2.7倍高くなることが示されました。
この研究結果は、これまでの常識を覆すものです。ビタミンAの過剰摂取は必ずしも皮膚がん予防には効果的でない可能性が示唆されました。むしろ、バランスの取れた食事と適切な紫外線対策の方が重要かもしれません。
皮膚がんのリスクを軽減するために、適切な紫外線対策を講じることが重要です。日焼け止めを適切に使用し、帽子や衣服で物理的に紫外線から肌を守り、特に日差しの強い時間帯は外出を控えましょう。また、皮膚の変化に注意を払い、新しいほくろや色素斑の出現、既存のほくろの形や大きさの変化、傷の治りが悪い部分がないかを定期的にチェックすることが大切です。もし気になる症状があれば、早めに皮膚科を受診し、定期的な皮膚科検診を受けることで、早期発見・早期治療につなげることができます。
ただし、この研究には限界があり、非メラノーマ性皮膚がんの症例が自己申告に基づいていること、基底細胞がんと有棘細胞がんの区別がないこと、対象者が白人女性に限定されていることに留意する必要があります。
参考文献:
Mittal V, et al. Associations between dietary and supplemental vitamin A intake and melanoma and non-melanoma skin cancer. Skin Health Dis. 2024;e462.