都市近郊はかえって通勤時間が長い傾向…通勤時間の移り変わりをさぐる(2020年公開版)
この数十年間通勤時間に大きな変化は無い
職場で働く人にとって住居関連で気になる問題の一つが通勤時間。世間一般では通勤時間はどの程度の長さなのか。住宅の実情と合わせ住宅・土地統計調査の公開値から確認する。
次に示すのは世帯主が雇用者(雇われている人)の場合に限定した、通勤時間の状況を記したもの。データは1983年当時から確認できるので、それ以降調査毎の経年変化を記している。また棒グラフは2003年のみ平均時間だが、それ以外は中央値を指している。
1998年・2003年に多少の時間の伸びが確認できる。30分未満の各層が減り、それ以上の層が増えたことで、中央値・平均値もやや背伸びをした形となっている。しかしそれ以外の調査年では大きな変化は無く、30分以内(片道)の通勤時間の世帯が5割強、1時間未満までで区分すれば8割を超えている。片道2時間以上の通勤時間の世帯は1%前後でしかない。
中央値(平均値で算出が行われないのは、長時間の通勤時間回答者によって、平均時間が多分に引っ張られるからだろう)の動向を見るに、30分近くの値でほぼ横並び。交通機関は整備され、ダイヤも効率的なものとなり、移動もスムーズなものとなりつつあるのは事実だが、その分職場と居住地との距離が離れ、結局通勤時間そのものに大きな影響は生じていないようだ。あるいは居住地を決める、職場を決定する際の基準として、片道30分以内という内心的なガイドラインそのものが維持されているということだろうか。
地域別では
今件に関して直近2018年における地域別の動向を確認したのが次のグラフ。興味深い結果が出ている。なお大都市圏の数字は中心市の値のみで算出している。
大都市圏は通勤時間が短いような印象があるが、実態としては逆。関東大都市圏や近畿大都市圏では通勤時間は全国平均よりかなり長い結果が出ている。特に関東大都市圏では1時間以上の通勤時間の世帯が2割超と、他のどの地域よりも多い結果となり、平均値も44.1分と全国の平均にくらべて11分強もの長さを示している。
大都市圏では職場からの距離は長くなり通勤時間も長時間となるが、居住地周辺の環境も整備されてさほど悪くないため、住むのに値するとの考えによるものだろう。元々関東大都市圏は他地域と比べて空き家率は低く、共同住宅率が高く、1住宅あたりの面積も小さいなど、居住環境はよいとはいえない。それでもその場に住む選択をする理由、魅力が特に関東大都市圏には存在すると認識されているのだろう。
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