【K-POP論】LovelyzのKei、ソロ曲で来日。”I GO”は永久保存版の応援ソング!
よいタイミングで、とてもよい曲が、フレッシュな状態のままでやってくるな。
そんなことを思う。
K-POPのソロ歌手キム・ジヨンが来日する。11月15日から18日までの間、都内各所でリリースイベント(インストアライブ)を行うのだ。
キム・ジヨン。映画化されたばかりの韓国大ベストセラーの主人公ではない(!)。正体は清純派ガールズグループLovelyzのメンバーKei。歌唱力で知られてきた彼女が、韓国にて本名で楽曲を発表。それも今年10月8日に韓国でリリースされたばかりの'I Go'を引っ提げ、日本にやってくるのだ。
I GO。公式アカウントより
”光のような存在”のおかげで、より高みに進める。成長ストーリーを描く楽曲
メインボーカルを務めるLOVELYZのメンバーとしても知られてきた伸びやかな歌声が心地よい。音楽性をおおいに強調したいという点は、楽曲発表時の所属事務所からのステイトメントにも記されている。
「(キム・ジヨンは)澄んだ、清雅な歌声により、現存するガールズグループのメインボーカルのうち、有数の歌い手の一人として評価を受けている」
「美しいピアノの旋律と軽快なストリーミングがKeiの感性的な歌声と出会い、お互いを抱擁しあうかたちになっている。ソロアーティストKeiの世界観のなかに潜在する新しい勢いを表現した曲だ」
では制作者側はこの楽曲を通じ、どんな内容を伝えたかったのか。
引き続きステイトメントの内容を。
「'I GO'はファーストミニアルバム『Over and Over』のタイトル曲。平凡な日常を生きていく私達に伝える成長の童話だ。疲れ、落ち込んでいる日々のなかで常にそばにいてくれる光のような存在。このおかげで前に進め、より高みに向かえるという希望あふれる話を織り込んだ」
応援ソング、という解釈は間違いないだろう。実際、キム・ジヨン本人は’I Go’についてこう説明している。
「今回のアルバムのタイトル曲(リードトラック)’I Go’は、自分が一人ぼっちだとしか思えず、絶望しかない時に希望を見いだせる曲です。今、この歌を聴いてくださっているすべての皆様が私にとってとても大切で、力になりたいという点を感じていただきたいです!」
これら説明のなかで、”光のような存在”という表現が印象的だ。上記の公式MVでも随所に”光”を表現しようと感じられる。歌詞のなかでも”光を集めて”、”この状況を抜け出す”という内容がアクセントになっている(歌詞翻訳内容は本稿の末尾にて)。
いっぽうで、10月発表のこの楽曲、季節感を示す説明はない。本連載ではここまで、多くのK-POPの作曲家にインタビューしてきたが、「楽曲の季節感はとても重要」という話を多く聞いた。春の高揚感、夏の爽快感、夏の恋の終わりの悲しみ、秋の郷愁を誘うもの……そういった楽曲はシンプルでリスナーのニーズに応えやすい面がある。
上の公式MVを見ていただくと分かるのだが、’I Go’では澄んだ空気感や光が表現された印象はあるが、季節ははっきりとしない。キム・ジヨン本人もよく見ると、ノースリーブから長袖までの衣装を着こなしている。
だからこそ、このよい歌声をどの時期にも楽しもう。ここが「永久保存版」と本稿タイトルで言い切った第一の理由だ。
韓国での番組出演時。Mnet公式アカウントより。
「明るい」「優しい」だけじゃない。歌手キム・ジヨンの矜持
もうひとつこの楽曲が説得力を持つ要素がある。彼女のキャラクターだ。
以前、本連載でインタビューした韓国の作曲家SPACE COWBOY先生(Lovelyzの最近の楽曲を担当)はKeiことキム・ジヨンについてこんな話をしていた。
「グループのエネルギー源ですよね。Keiよりもはるかに僕のほうが歳上なんですが、ある意味彼女は僕にとっても”長女”のような存在ですね。リーダーシップがあると思いますよ。一度も、苦しい、大変という言葉を口にしたのを見たことがない。あるいは元気がない様子もない。本当に。だからずっと僕はイジっていたんですよ。『ロボットでしょ?』って。ドランゴンボールに人造人間17号、18号っていうキャラクターがいるでしょ? いつも明るくて、体調が悪いときもない、元気がないときもない。どうやったらそうなれるんだろう。そう思いますよね」
韓国でのI GO活動時に、歌番組観覧に訪れたファンへの感謝を表すべくミニ・ファンミーティングを開催した。元気で、優しい。表情からもそんな彼女のキャラクターがうかがえる。動画は事務所公式
筆者自身も一度、Lovelyzのメンバーとしての彼女にインタビューしたことがあるが、ずっとニコニコ笑っていた。自分からは多くは口を開かないが、話を聞いてずっとニコニコしている。東京でのオフ日には何をして過ごしたのですか? と聞いたら、こう答えていた。
「原宿のラフォーレに有名なパジャマのお店があるんです。日本に来るたびに、パジャマを買いますね」
他のメンバーは「ビールで乾杯」といった話もするなか、じつにかわいらしかった。グループのなかのキャッチフレーズは「Lovelyzのお花」。とても清らか。優しい。牛乳が好き。歩くマイナスイオン。そういうキャラクターだ。
いっぽうで、この楽曲は「優しいだけ」の彼女が歌うものではない。ステイトメントにも「LovelyzのKeiではない、キム・ジヨンを前面に打ち出した点も既存のイメージと違った姿を見せる」という表現がある。
公式MVのメイキング映像。本人から「たくさんの時計のなかで、ひとつ壊れたものを見つける。その部品を探すため、光を見つけていく」というコンセプト説明も
それは何かというと、「歌への強い思い」だ。
10月8日の楽曲発表に先立ち、韓国メディアを対象にした共同インタビューが行われた。ここで、思いをこう口にしている。
「”歌バカ”なんですよ。それしか知らない。歌っているときが一番幸せで、ずっと歌っていたいです」
「作詞、作曲も出来ません。楽器を学んだこともあるんですが、少し急いでしまう自分を見つけてしまったんです。なぜ、こんな風にやらないといけないのかと。私にできることは歌だけ。そう考えるとよりレッスンに打ち込めました」
有数の歌い手が歌にいま一度目覚め、キム・ジヨンとして発表した初のソロ楽曲なのだ。
”11月来日”がとてもよい理由
今回の10月に韓国で活動したばかりのフレッシュな楽曲を引っ提げてやってくる点も嬉しい材料だ。
そしてここからは、完全にこちら側の解釈の話だ。
11月中旬という時期がすごくいい。’I Go’はシーズンソングではない、という話を書いた。しかし、くしくも彼女がやってくる時期ががよい季節なのだ!「1年の締めくくりに向け、もうひと踏ん張りする時期」あるいは「次の春に向けて、苦しくとも準備を続ける時期」でもある。
たとえば、受験生にもこの楽曲はぴったりハマる。受験勉強はまだまだ続くが、いっぽうで焦りも生まれるだろう11月。ゴールが見えない時期だ。その合間に、サッと本人の姿を見て、握手して、またモチベーションを上げる。自分がもし父親なら「気分転換に観にいってこい」と言いたい。
筆者自身は、12月に向けてのテーマソングに’I Go’を設定した。応援するJリーグクラブのシーズン終盤(最終節は12月8日です)の目標達成のために。小さな光を集めて、出口を探せば、そこにジヨンちゃんがいるんじゃないか。そんなことを思いつつ。
勝手に思えばいいのだ。想像・妄想するのはファンの特権。楽曲の作品性を堪能して、そのうえで自分の日常生活に当てはめるのもまたよし。15日から18日に都内で実物を見て、パワー充てん。その残像をもとに、2019年の残りを過ごすことにした。
(了)
【日程】
11月15日(金) ららぽーと立川立飛 屋外イベント広場
11月16日(土) タワーレコード渋谷店 8F SpaceHACHIKAI
11月17日(日) タワーレコード渋谷店 8F SpaceHACHIKAI
11月18日(月) 汐留シオサイト 地下通路特設スペース (TOWERmini汐留店前)
【イベント内容】
1部 ミニライブ/握手会/サイン会
2部 ミニライブ/握手会/写真撮影会
【参考資料:歌詞紹介】
和訳は筆者によるものです。公式のものではありません。
I GO
Lyrics Junzo, ARRAN
Composed Junzo, TAK
Arranged Junzo, TAK, チョン・ドンファン