「殺し屋」が当局者を相次ぎ惨殺…鉱山利権めぐり北朝鮮でマフィア抗争
北朝鮮では近年で、新興富裕層のドンジュ(金主)が、賄賂を使って幹部から稼働しなくなった廃鉱の「運営権」を手に入れて再生させ、ボロ儲けするケースが増えている。
石炭や鉄鉱石の採掘は、社会主義計画経済の基幹となる事業だが、90年代末ごろから「外貨稼ぎ」のために人民武力部、総政治局、国家安全保衛部、人民保安部などの権力機関が独自に炭鉱を運営するケースが増えた。
そして、国民経済の資本主義化の中で10万米ドル単位の資金を蓄えているとされるドンジュらが、その権利を買い取って稼いでいるのだ。
こうした鉱山ビジネスの舞台は主に炭鉱だったが、最近では「金鉱」にもドンジュの潤沢な資金が流れ込んでいる。
韓国鉱物資源公社が2009年に発表した資料によれば、北朝鮮の金の埋蔵量は約2000トンに及び世界9位。金鉱は全国に点在しており、その数は1860、砂金の採取場まで含めると2300を超える。中でも平安北道の雲山(ウンサン)金山は埋蔵量が1000トンに及ぶと見積もられているが、まだその多くが採掘されないまま残っている。
また、数ある金鉱の中には、日本の統治時代に三菱鉱業(現・三菱マテリアル)が運営していた「青岩金山」もあり、現在は金正恩氏の秘密資金を運用する朝鮮労働党39号室や秘密警察が管理している。
一方、こうしたビジネスが拡散するに従い、「鉱山利権」を巡る血なまぐさい事件も起きている。
少し前には、中朝国境に面した咸鏡北道恩徳(ウンドク)郡の村で、地元住民と流れ者の一団との間で大規模な乱闘が発生。ツルハシやシャベルで頭を叩き割られるなどした数人が死に、数十人が負傷したとされる。
どうやら、流れ者たちはマフィア化したドンジュに雇われていたようで、地元住民から炭鉱利権を強奪しようとして抵抗に遭ったらしい。また、同じ咸鏡北道では利権を握る当局者が惨殺される事件が相次いでいるが、犯人は捕まっていないという。
やはりマフィア化したドンジュらが「殺し屋」を雇い、自分の言うことを聞かない当局者を葬り去っているようだ。10万人単位の特殊部隊出身者が巷にあふれる北朝鮮では、腕利きの「殺し屋」を雇うことなど簡単なのかも知れない。