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藤井叡王4連覇か、伊藤七段初戴冠か――第9期叡王戦五番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
藤井聡太叡王はタイトル戦番勝負での連勝記録を更新し続けている(筆者撮影)

 藤井聡太叡王(21)=八冠に伊藤匠七段(21)が挑戦する第9期叡王戦(不二家主催)五番勝負は4月7日第1局が愛知県名古屋市「か茂免」で行われる。

 昨年秋に最年少で前人未到の八冠制覇を果たした藤井叡王に、前年度の竜王戦、棋王戦に続いて挑戦者として名乗りを上げた伊藤七段が挑む五番勝負。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

<第9期叡王戦五番勝負日程>

第1局 4月7日 愛知県名古屋市「か茂免」

第2局 4月20日 石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」

第3局 5月2日 愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」

第4局 5月31日 千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」

第5局 6月20日 山梨県甲府市「常磐ホテル」

伊藤七段「三度目の正直」なるか

<藤井叡王の最近10局>(相手の肩書きは対局当時)

1月27、28日 ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

対菅井竜也八段 ○

2月2日 NHK杯本戦準決勝

対羽生善治九段 ○

2月4日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局

対伊藤七段 持将棋

2月7、8日 ALSOK杯王将戦七番勝負第4局

対菅井八段 ○

2月10日 朝日杯将棋オープン戦準決勝

対糸谷哲郎八段 ○

2月10日 朝日杯将棋オープン戦決勝

対永瀬拓矢九段 ●

2月12日 NHK杯本戦決勝

対佐々木勇気八段 ●

2月24日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局

対伊藤七段 ○

3月3日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

対伊藤七段 ○

3月17日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局

対伊藤七段 ○

<伊藤七段の最近10局>(相手の肩書きは対局当時)

2月6日 順位戦C級1組

対阿部健治郎七段 ○

2月16日 叡王戦本戦

対斎藤明日斗五段 ○

2月21日 竜王戦1組

対木村一基九段 ○

2月24日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局

対藤井棋王 ●

3月1日 ALSOK杯王将戦1次予選

対増田康宏七段 ○

3月3日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

対藤井棋王 ●

3月5日 順位戦C級1組

対宮田敦史七段 ○

3月11日 叡王戦本戦準決勝

対青嶋未来六段 ○

3月17日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局

対藤井棋王 ●

3月19日 叡王戦本戦挑戦者決定戦

対永瀬拓矢九段 ○

 藤井叡王の直近10局は7勝2敗1持将棋と相変わらずの高勝率。タイトル戦の番勝負ではいまだに一度も挑戦も防衛も失敗したことがないという驚異的な記録を更新中だ。

 対する伊藤七段は昨年秋から竜王戦、棋王戦、そして今回の叡王戦と連続挑戦で勢いを持続しており、今回の五番勝負で「三度目の正直」なるか注目である。直近10局も7勝3敗と好調を維持している。

 実績では藤井叡王が圧倒的だが、調子に関してはほぼ互角といえるだろう。

伊藤七段の秘策に注目

 直接対決は過去11戦して藤井叡王が10勝0敗1持将棋と一方的な数字を残している。

 戦型は両者居飛車党なので藤井叡王先手ならば角換わり志向、伊藤七段先手なら角換わりか相掛かりが予想される。ただし、先の棋王戦五番勝負で伊藤七段が見せたような「角換わり持将棋戦略」のような深い研究に基づく秘策、特に最先端の後手番戦略が出現する可能性が高く、序盤から目が離せない。

 総合的に見れば藤井叡王優位は明らかだが、前年度も持ち時間の短い銀河戦、朝日杯、NHK杯ではいずれも決勝で敗れており、叡王戦もタイトル戦としては持ち時間の短い4時間なので、そろそろ波乱があってもおかしくないと考えることもできる。

 五番勝負の序盤で伊藤七段が先行すれば奪取の可能性が開けてくるだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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