RGはなぜ“攻めたモノマネ”をやるのか?
往年のヒット曲に乗せた“あるある”ネタでお馴染みのお笑いコンビ「レイザーラモン」のRGさん(44)。6月にシングル「いただきます」でデビューし歌手としても活動していますが、椿鬼奴さん、藤井隆さんと全国ツアー「W RELEASE SLENDERIE TOUR」(14日の大阪・YES THEATER公演からスタート、大阪を含め5都市5公演)も開催します。最近は日本ボクシング連盟の山根明前会長や歌手・細川たかしさんなど、見る者の心をざわつかせるモノマネでも注目を集めていますが、なぜRGさんはそこを“攻める”のか。思いを語りました。
目の前の人を笑わせたい
モノマネきっかけで弟子入りまでさせてもらった細川たかし師匠風に初めて髪の毛を剃ったのは、2年前のTBS系「水曜日のダウンタウン」のロケでした。「野性爆弾」のくっきーさんとハリウッドザコシショウさんが一緒におられたんで、ただただ、そのお二人に笑っていただきたくてやったんです。
とにかく目の前の人を笑かしたい。基本的には全てその思いなんです、昔から。モノマネも“あるある”も。なので、何年か先を見越して何かをするということとは本当に無縁でして(笑)。自分と一緒にいる人を笑かしたい。どうやったら、笑ってくれるのか。そんなことばかり考えた結果がモノマネと“あるある”でした。
そして、特にモノマネという領域では、本職でやってらっしゃる方にはスキルでは到底かなわない。なので“早さ”と“センサー”。笑ってもらうにはこれだなと。まだ誰もやっていない時に「そこにいくか!」というところをピックアップする。技量がないので、そこをやるしかないんです。
転機は小保方さん
その感覚が明らかに強くなったのは、2014年、小保方晴子さんのモノマネをした時でした。小保方さんが一躍時の人になって、そこから論文がどうのこうのと少し雲行きが変わってきた。ちょうどその時期に、モノマネをしまして。きっかけは、当時3カ月に1回くらいのペースでやっていたバスツアーイベントでした。僕が話題の人物に扮して、その人にゆかりのある場所をめぐるという内容。そこで小保方さんに扮して、理化学研究所の近くにいくという企画をやったんです。
そこで、あらゆる意味でのギリギリを攻める。その感覚に触れたというか。もちろん、これもまずはバスツアーにわざわざ来ていただくファンの方に喜んでもらいたいという思いからだったんですけど、芸人の先輩方からも「お前、よくそこをチョイスしたなぁ」という声をもいただきまして。もちろん、いろいろなバランスや時期を見ながらですけど、どこまでギリギリにいけるのか。本当に微妙で難しくもあるんですけど、うまくやると、本当に多くの方が喜んでくださる。
そして、今はSNSがありますから、自分で「これは今いける!」と思ったものをタイムラグなく出すこともできる。そういったツールの進歩もあって、そこを攻める喜びみたいなものをより強く感じるようになったんです。
“あるある”への可能性
“あるある”も根本は全く一緒で、とにかく目の前の人を笑かしたいということ。“あるある”をやりだしたのは2009年の春でした。TBS系「リンカーン」で初めてやらせてもらって、そこからケンドーコバヤシさんのラジオでやる機会をいただいて、とにかくコバヤシさんを笑かすためにこれでもかと“あるある”をやらせてもらいました。さらに、庄司智春さんと藤本美貴さんの結婚式の二次会でやらせてもらった時にテレビ朝日系「アメトーーク!」のスタッフさんが興味を持ってくださって、いろいろと広がっていった。
まさか、足掛け10年も“あるある”をやらせてもらうなんて思ってもみなかった。その場、その場にいらっしゃる人をとにかく笑かしたい。それを自分なりに一生懸命考えていたら、いつの間にか今になっていたという感覚です。
ただ、今、自分がやり始めたものながら、この“あるある”の可能性に自分で驚いてまして(笑)。というのは、6月にCDデビューもさせていただき、オリジナルソングも2曲できました。自分の曲ができて痛感したんですけど、テレビ番組で歌う。これって、とんでもなくハードルが高いというか、歌番組でライバルの方々がたくさんいて、僕なんかが音楽番組でましてや、自分の曲を歌うなんて本当に大変だし、時間に制約のあるテレビ番組では、どんなに大御所の方でも長々とは歌うことができない。ましてや、デビューしたての僕がオリジナルを歌うなんてありえない。
“あるある”だと、それができるんです。ゴールデンタイムの番組でも、そういうネタなので、皆さんが長々と歌っているのを待ってくれているんです。今になって、すごいシステムのことをやりだしたんだなと自分で自分に驚いてます(笑)。
俵万智さんからの言葉
ただ、それでも10年近くも“あるある”をやっていると、いろいろなお声もいただきまして。作家の俵万智先生からは、ありがたいお褒めの言葉も頂戴しました。
「RGさんがされている“あるある”は、道端の小石一つ一つに名前を付けていくのと同じこと。本当にすばらしい。そして“あるある”の最後に必ず『〇〇しがち』という決まった言葉があって、その土台がしっかりしているから、その上を変えることでいろいろな可能性が生まれる。ずっとお続けになってください」
まさか、俵万智先生からこんな言葉をいただけるとは、2009年の僕は一ミリも思っていなかったですけど、ただただ、コバヤシさんを始め、目の前の人を笑かしたいだけでやってきたことがこんなことになるのは、ありがたい限りだなと思います。
“あるある”の“あるある”
今、ツイッターとかで皆さんから例えば“カレーライス”とか“OL”とかお題をもらって、そのお題の“あるある”を返すということをやったりもしているんですけど、根源的なところというか「“あるある”の“あるある”は?」ということを尋ねられたりもするんです。
「人間とは“あるある”である」「人間と書いて“あるある”と読む」といったことはこれまでも言わせてもらってきたんですけど、この「“あるある”の“あるある”」というのが実に難しくて。答えが見えそうで見えない。掴めそうで掴めないというか…。
なので、死ぬ時に遺言代わりに「“あるある”の“あるある”」が言えるように、これからも“あるある”と向き合っていきたいと思います。期せずして、深い話になりましたね…。いや、よく考えたら、全くなってないですね(笑)。
え、僕自身の“あるある”ですか…。そうですねぇ、ま、“タイ料理食べがち”ですかね。
(撮影・中西正男)
■レイザーラモンRG(れいざーらもん・あーるじー)
1974年6月8日生まれ。 熊本県出身。本名・出渕誠(いずぶち・まこと)。立命館大学在学中は立命館プロレス同好会(RWF)に所属。同志社プロレス同盟にいた住谷正樹と出会い、97年にお笑いコンビ「レイザーラモン」を結成する。今宮子供えびすマンザイ新人コンクール福笑い大賞、ABCお笑い新人グランプリ審査員特別賞などを受賞。2001年、コンビそろって吉本新喜劇に入団する。05年にはHGを名乗るようになった住谷が大ブレークし、出渕もRGに改名。06年からはプロレス団体「ハッスル」に参戦し、天龍源一郎、川田利明らにもまれながら、名勝負を生み出す。市川海老蔵らのモノマネ、音楽に乗せてのあるあるネタなどでピン芸人としても活動している。椿鬼奴、藤井隆との全国ツアー「W RELEASE SLENDERIE TOUR」(14日の大阪・YES THEATER公演からスタート、大阪を含め5都市5公演)も行う。