「MLB薬物禍、巨人選手の野球賭博、清原の覚せい剤」裏切られたファンは「シャラポアもクロでは」と思う
ぼくは、マリア・シャラポアはウソをついているのでは、と思っている。彼女はメルドニウムに陽性反応を示したのだが、医療目的で10年間使用したと語っている。しかし、世界反ドーピン機関は、「心臓疾患などに使われる薬であり、10代から医師に処方してもらう必要があったのか疑問」としている。ナルホドと思う。
これは、薬物使用テストで陽性反応を示したメジャーリーガーたちの態度と通じる部分があった。動かぬ事実(陽性反応)は認めつつも、「どうして体内に入ったのか分からない」と意図は否定するのだ。マニー・ラミレスに至っては「医師が間違った」とまで言い放った(それなのに、その医師を訴えようとはしなかった)。マーク・マグワイアは自ら使用を告白したが、「医療目的であり、能力増強のために使用したことはない」と言い切った。彼等の振舞いは、ビル・クリントン元大統領がマリファナ疑惑をかけられた際に、「吹かしただけで吸い込んでいない」と言い訳を述べたことを思い起こさせる。
話をシャラポアに戻す。彼女くらいの超大物アスリートになると、それなりのメディカルスタッフを抱え込んでいるはずで、彼女自身が禁止薬物リストのアップデイトを子細に追わなくても、彼らがそれなりに対処してくれるのでは?と思う。また、あの完璧な会見も、彼女の市場イメージ戦略を担当するスタッフが、処分期間明けの競技復帰やスポンサーシップ再獲得の可能性を模索しシナリオ作りをしたものではないか。
「だからと言って、シャラポアがクロだとは言い切れないじゃないか」という意見もあるだろう。ロジックとしてはその通り。ぼくが「彼女はクロ」とおもうのは所詮憶測だ。しかし、それが人の心理だと思う。
ぼくが言いたいのは、純真でクリーンでフェアであるべきスポーツにおいては、人は一度裏切られると疑わしきものに対しては、ますます懐疑的になるということなのだ。2010年にブルージェイズのホゼ・バティスタが54本塁打を放った際には、多くのファンが「クスリやっているに違いない」と訝った。なぜなら、それまで彼のシーズン最多本塁打は16本でしかなかったからだ。彼にはお気の毒としか言いようがないが、それが実態だ。1990年代から2000年代に掛けては、固有名詞を出すのは控えるがある年からいきなり本塁打を量産し、その数年後には魔法が解けたようにフツーの打者に戻った選手の名をいくらでも挙げることができる。みんな怪しいなとぼくは思っている。
繰り返すが、スキャンダルの最大の罪はファンを懐疑的にすることだ。一旦疑り深くなってしまうと、6年前のバティスタのような素晴らしいパフォーマンスにも素直に感動できなくなってしまう。だからぼくは今回のシャラポアも「意図的な使用ではないか」との思いは拭えない。
1980年代、ボクシングにも入れ込んでいたぼくは、当時「プロ野球は健全だなあ」と感心していた。「興業」にありがちな胡散臭さが微塵も感じられなかったからだ。あの頃のプロボクシングでは、会場で配られているプログラムの冒頭で「ごあいつ」のコメントを寄せているプロモーターは、真っ黒なサングラスをかけた顔写真を掲載している、なんていうケースが良くあったし、試合前にリングに上がる関係者は、キャンプ視察に訪れた清原和博もかくやという到底堅気とは思えないド迫力溢れるスーツに身を包んでいることも珍しくなかった。それらを目にすると、ボクシングというのはリングの上以外は「何が行われているのか、どんな人種に運営されているのか分かったもんじゃない」と思わせるものがあった(あくまで「当時は」だ。念のため)。それからすると、なんとプロ野球はまじめな世界なのだろう、と思ったのだ。
しかし、それも崩れようとしている。覚せい剤に手を染める輩もいたわけだし、野球賭博にどっぷり浸かっている選手も発覚したということは、彼らは氷山の一角ではないかと思うのが普通だろう。
ファンをこう思わせてしまうこと。これがスキャンダルの最大の罪だ。ぼくが、「シャラポアもあやしい」と思っているのが理解いただけただろうか。