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「習近平新時代中国特色社会主義思想」が党規約に!

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
第19回中国共産党大会が閉幕(写真:ロイター/アフロ)

 10月24日午前、第19回党大会において、習近平思想を「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」という表現で党規約に明記することが決議された。

◆「習近平思想」党規約明記を決議

 中国共産党新聞や中国政府の通信社「新華社」および中国共産党管轄下の中央テレビ局CCTVなどが、一斉に報道した。 

 筆者はこの文言に関して10月22日付のコラム<習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想とは?>において、習近平思想を党規約に記入するときには、必ず「習近平新時代中国特色社会主義思想(習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想)」という表現になるだろうと予測したが、その通りの表現になり、ホッとしている。

 やはりこれまでと違い、政権一期目に政権スローガンを記入したことと、政権スローガンに個人名を記したことが、何よりも注目される。

◆これは何を意味しているか?

 党規約の冒頭には、「マルクスレーニン主義思想、毛沢東思想、トウ小平理論、三つの代表(重要思想)、科学的発展観」があるが、「個人名+思想」という形の政権スローガンは「毛沢東思想」だけしかない。中国では「理論」よりも「思想」が上にランクされているので、これにより習近平は毛沢東と並んだことになる。

 マルクスレーニン主義は共産主義そのものなので、それを除いて「中国共産党」に関してのみ言えば、中国には「毛沢東思想」と「習近平思想」があるのみだということになる。

 これにより「習近平」の名は、中国共産党史に永遠に刻まれることになるだろう。

◆三期続投も?

 今朝ほど公開したコラム「情報が漏れた新チャイナ・セブンのリスト予測」にも書いたが、もしそのコラムに書いた通り、次期指導者候補である「胡春華」と「陳敏爾」の名前が本当に新チャイナ・セブンのリストにないとすれば、これは習近平が三期続投を目論んだ結果ということもできる。だとすれば、この習近平思想の党規約明記とともに、巨大な権力を持った政権が生まれたと考えていいだろう。

◆その目的は何か?

 それでもなお、筆者は、これが権力闘争ごときものの産物だとは思っていない。

 あくまでも中国共産党の一党支配によって底なしの腐敗が蔓延し、紅い中国が腐敗によって崩壊するのを防ぐことが目的だとみなしている。自分がラスト・エンペラーにならないために、世界に向かって打って出るというのが習近平の大戦略である。

 やがてアメリカに追いつき、アメリカを追い越す。

 『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』に書いたように、習近平は「世界を制覇しようとしている」のである。そのことを見誤った日本の少なからぬジャーナリスト、研究者そしてメディアが、習近平の闘いを「権力闘争」と矮小化している間に、中国は日本を遥かに追い越して、アメリカと並ぼうとしている。

 そうすれば、いかに腐敗が蔓延して矛盾をはらんでいる中国でも、人民は中国共産党に従うだろうというのが目的なのである。

◆日本は?

 中国共産党そのものが、抗日戦争で勇敢に戦ったからこそ強大化したのではなく、日本軍と共謀して国民党軍を弱体化させようとした毛沢東の戦略によって強大化したのだという事実を、習近平はどんなことがあっても隠蔽し続けたい。だから言論弾圧は強まるばかりだ。

 その言論弾圧をしている中国に媚を売る日本政府は、言論弾圧を肯定し、民主化運動で苦しんでいる一部の中国人民を、中国政府と手を携えて苦しめていることに気が付いているだろうか?

 いや、気が付いていても、保身のために中国に媚びを売る。

 それがやがて、どのような日中関係に発展していくかは、天安門事件以降に必死になって中国に手を差し伸べてきた日本政府が招いたこんにちの結果を見れば言を俟たない。

 今後とも大局的視点で習近平の言動を見ていく必要があるのではないだろうか。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』(11月1日出版、ビジネス社)、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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