英中央銀行がビックリ仰天の総裁人事 318年の歴史で初の外国人を任命
来年4月に任期満了する日本銀行の白川方明(まさあき)総裁の後任選びが動き出したが、英イングランド銀行(中央銀行)の次期総裁にカナダ銀行(同)のマーク・カーニー総裁(47)が選ばれ、英議会やロンドンの国際金融街シティーに衝撃が走っている。外国人を総裁に任命するのは1694年にイングランド銀行が設立されて以来、初めてのことだ。
日銀総裁は日銀と旧大蔵省(現財務省)を軸に選ばれ、衆参両院の同意を得て内閣が任命する国会同意人事の一つだ。白川総裁の後任には、より大胆に金融緩和を進める総裁が求められている。
それなら、いっその事、イングランド銀行を見習って、英国のブレア政権時代、財務相としてイングランド銀行の独立性を確立し、金融規制を大幅に緩めてバブルの原因をつくったブラウン元英首相を明治時代のような「お雇い外国人」として日銀総裁に招請してはどうだろうか。
ブラウン首相(当時)は政治家としては英国内で不人気だったが、世界金融危機後の2009年4月、ロンドンで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議でリーダーシップを発揮、大型の財政出動と金融機関への公的資金注入を主導し、危機を乗り切った。
ブラウン氏の手腕は、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン米プリンストン大学教授から「ブラウン英首相は世界を救った」と称賛されるなど折り紙つきだ。バブルの起こし方にも崩壊後の対処法にも精通している。
イングランド銀行も、米連邦準備制度理事会(FRB)も、欧州中央銀行(ECB)も、日本がバブル崩壊後に陥った「流動性のワナ」にはまらないよう日銀よりも迅速に大胆な金融緩和策を行っている。
政府債務残高が今ほど積み上がっていなかった1990年代に日銀がもっと大胆に金融緩和策を実施していれば、「失われた10年」が20年も続くことはなかったという反省が、現在の日銀批判につながっている。
日本国籍にこだわらないのなら、ブラウン氏ほどの適任者はいないのではないか。
カーニー総裁は英国で通算10年間、大学に通ったり働いたりした経験があり、妻は英国人、4人の娘は英国とカナダの二重国籍を持つ。来年6月に2期10年の任期を終えるマービン・キング総裁(64)の後を次いで、7月にイングランド銀行総裁に就任する。カーニー総裁は英国籍を取得する予定だ。
キング総裁の年収は30万5000ポンド(約4000万円)だったが、オズボーン財務相は年収48万ポンド(約6300万円)を提示してカーニー総裁の了解を取り付けた。
カーニー総裁は世界の金融システムを監視する金融安定理事会(FSB)の議長も務めており、来年初めに英金融サービス機構(FSA)の一部機能を引き受けるイングランド銀行総裁として金融規制も担当。シティーではロンドン銀行間取引金利(LIBOR)をめぐる不正など金融不祥事が相次いでおり、オズボーン財務相にはカーニー総裁をヘッドハントすることで国際社会での金融規制の整備を主導するねらいもあったようだ。
最有力候補と目されたイングランド銀行勤続30年のポール・タッカー副総裁はLIBORスキャンダルに巻き込まれ、目前だった次期総裁ポストを逃した。また、何のしがらみもないカーニー総裁には、イングランド銀行に根強く残るヒエラルキーと服従の文化を打破する使命も期待されている。
サッカーやクリケットの代表チーム監督も「お雇い外国人」が当たり前になった英国は国際競争に勝ち抜くため、中央銀行総裁も国籍にかかわらず実力で選ぶ時代に突入した。
(おわり)