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たくさんコーヒーを飲む人は新型コロナの感染リスクが高い 国内の研究

倉原優呼吸器内科医
(写真:アフロ)

コーヒーにはクロロゲン酸という抗酸化作用のある物質が豊富に含まれています。そのため、コーヒーを飲む習慣がある人のほうが、新型コロナの感染リスクは低いのかもしれないという見解がありました。しかし、飲みすぎは逆にリスクを高めるという結果が国内から報告されました。

コーヒーには抗酸化物質が含まれている

どのような疾患であっても、野菜をしっかり食べて、ウインナーやハムなどの加工肉を食べすぎず、お酒を飲みすぎず、適度な運動を心がけつつ、健康的に生活することが大事です。そうすることで健康寿命を延ばすことができます。

医学の世界では、しばしばコーヒー・紅茶・緑茶などがさまざまな疾患リスクと関連付けてさかんに研究されています。これは、多くの人が普段からよく摂取している嗜好品という位置づけもあり、興味を引くためでしょう。

コーヒーに含まれるクロロゲン酸という物質は、新型コロナウイルスのスパイクタンパクと、ウイルスの受容体であるACE-2とのかかわりを邪魔するとされており、感染症から身を守るはたらきがあるかもしれないと考えられてきました(1)(図1)。

図1.コーヒーに含まれる物質(筆者作成、イラストはソコストACより使用)
図1.コーヒーに含まれる物質(筆者作成、イラストはソコストACより使用)

しかし、そんな見解に一石を投じる研究結果が報告されました。

コーヒー1日3杯以上は要注意

オミクロン株の新型コロナが流行しているさなか、新型コロナワクチンを接種した国立国際医療研究センターの感染歴のない職員2,110例を対象として、コーヒーや緑茶の摂取量と新型コロナの発症リスクの関連を調べた研究が発表されました(2)。

まず、コーヒーの摂取が1日1杯未満の人が約半数の50.8%で、1日1杯が21.6%、1日2杯が15.4%、1日3杯が12.2%という結果でした。結構みなさんコーヒーを飲んでいるんですね。よく飲む人は、年齢が高く、喫煙・飲酒をしている人や医師が多かったそうです。

職員を6か月間追跡したところ、全体の10.6%が新型コロナを発症しました。年齢や喫煙歴などさまざまな因子が相互に影響しあう可能性があるため、こういった要因を統計学的に調整して解析しました。

なんとも興味深い結果が得られました。それは、コーヒーの摂取量が増加するほど感染リスクが高くなるというものでした。

1日1杯未満と比べると、1日1杯ではリスクの増加は観察されませんでしたが、1日2杯群で48%増加、1日3杯以上で82%の増加が確認されました(図2)。特に3杯以上の集団は、統計学的に有意なリスク増加となりました。

図2.コーヒーの摂取量と新型コロナの感染リスク(参考資料2をもとに筆者作成)
図2.コーヒーの摂取量と新型コロナの感染リスク(参考資料2をもとに筆者作成)

また、この研究では緑茶の影響についても調べられているのですが、たくさん緑茶を飲んでも新型コロナの感染リスクには影響がありませんでした。

ほどほどの摂取が大事

この研究によると、コーヒーには確かに抗酸化作用・抗炎症作用があるが、過剰に摂取しすぎることで、それに対して生体が炎症を起こし、結果的にウイルス感染への免疫が落ちるのではないかと考えられます。

イギリスのバイオバンクを用いた約260万例の大規模な研究においても、コーヒーの摂取量が多いと、新型コロナの感染リスクや重症化リスクの上昇と関連していることが示されています(3)。

その他、たくさんコーヒーを摂取することで骨粗しょう症(4)、脂質異常症(5)のリスクが上昇すると言われていますが、1日3~4杯程度におさえれば、むしろ心血管疾患やがんのリスク低下が認められるという報告もあります(6)。

となると、やはり何事も「ほどほどの摂取」というのが重要なのかもしれません。

(追記:2024年3月9日参考文献の1と2が逆でした。修正させていただきました。)

(参考)

(1) Schmidt D, et al. Food Funct. 2022;13(15):8038-46.

(2) Islam Z, et al. J Epidemiol. 2024 Feb 10. doi: 10.2188/jea.JE20230231.

(3) Li X, et al. Br J Nutr. 2024 Mar 28;131(6):1007-1014.

(4) Zeng X, et al. Osteoporos Int. 2022 Sep;33(9):1871-1893.

(5) Du Y, et al. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2020 Nov 27;30(12):2159-2170.

(6) Poole R, et al. BMJ. 2017 Nov 22:359:j5024.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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