不祥事が相次ぐBリーグ選手に抱かざるを得ないプロ意識の欠如
アジア大会に参加していたバスケ日本代表でありBリーグ所属4選手の売春行為が発覚し、1年間の公式戦出場停止という重い処分が下ったばかりなのに、またBリーグに不祥事が舞い込んだ。京都ハンナリーズに所属する坂東拓選手が窃盗容疑で現行犯逮捕されたという。
第一報が流れた時点でチームに確認したところ、チーム自体もその事実をニュースで知ったという状況だった。すでに代表取締役社長の高田典彦氏が声明を発表しているが、ここ最近様々なスポーツで立て続けに起こっている不祥事をみれば判るように、当事者の対応次第で社会の捉え方は大きく変わってしまう。ハンナリーズは率先して事態を把握した上で速やかに会見を開き、一方的な説明だけでなく丁寧に質問に応じていくべきだろう。
もちろん今回のような犯罪行為はBリーグだけに限ったことではない。だが出場停止処分を受けた4選手の中にハンナリーズの選手が含まれている中で、チームとしても選手たちの立ち振る舞いに細心の注意を払うべき時だったはずだ。にもかかわらずこのような不祥事が起こってしまった以上、やはりチームの監督不行届は免れることはできない。他競技で起こった事例を踏まえながら、チームとして厳格な処分が求められる。
昨シーズンハンナリーズを中心にBリーグを取材させてもらう機会を得たが、浜口炎HCは選手としてのみならず人としての成長に重きを置いて指導するコーチで選手からの信頼も厚かった。それだけにコーチとしても一連の不祥事に忸怩たる思いを抱いていることだろう。こうしたことで社会からコーチの指導方針まで疑われることになるのだ。当該選手たちは肝に銘じておくべきだ。
こうした不祥事が起こってしまうのは、選手たちの根底にプロアスリートとしての認識の甘さ、プロ意識の欠如があるからだろう。プロアスリートは社会に生かされている存在であり、ロールモデル(社会的規範)としての振る舞いが求められていることを認識できていれば、絶対に軽率な行動をとることはできないはずだ。
Bリーグは発足からまだ2シーズンを消化したに過ぎない。プロ野球やJリーグと比較すれば、公式戦を取材するメディアは少ないし、社会からの関心が薄いのは間違いない。どうしても衆人環視の中に置かれているという意識が薄いのだろう。だがこうした不祥事が起こってしまえば、否応なしにリーグの人気度などお構いなしにプロ選手として扱われてしまう。社会的責任に違いはない。
すでにBリーグでは新人研修会を開き選手の教育に力をいれているようだが、それだけでは足りない気がする。シーズン途中に大学生が特別指定選手として加わることもできてしまう。新人選手のみならずリーグ全体でシーズン中から積極的に社会にかかわる活動に取り組んでいくべきだ。例えばNBAや米国のプロスポーツのチームには大抵「コミュニティ・リレーション」という部署が存在する。この部署はシーズンを通して積極的に選手を地域社会に送り込み、地域チームとしての社会貢献を目指している。
Bリーグの場合基本的に週末しか試合がないことを考えれば、地方行政と連携しながら様々な社会貢献活動ができるはずだ。地元で災害が起こった際に募金活動だけをするのが貢献活動ではない。もっと多岐に渡って地域社会に深く関わっていくべきだ。
これは単に選手がプロ意識を得るためだけのものではなく、Bリーグが地域社会にもっと受け入れてもらうためにも必要不可欠な活動ではないか。今回出場停止処分を受けた4選手は社会奉仕活動が義務づけられているようだが、決して罰則で行うものではない。本体はチーム活動の一環であるべきだ。
たぶん現在のBリーグの環境で、自分の教育理念を立ち上げ生まれ故郷に公立学校を建設してしまうレブロン・ジェームス選手のような選手は登場しないだろう(もちろん獲得年俸の違いは否めないが…)。日頃からどれだけ地域社会に貢献できるかという意識がなければ無理な話だ。
繰り返すがプロアスリートは社会に生かされている存在だ。Bリーグはまだ新しいリーグだからこそ、プロ野球やJリーグになかったような地域との密接な繋がりを築いていってほしい。