自衛隊が北朝鮮を「先制攻撃」すべき状況もあり得る
日本政府は韓国に対し、防衛秘密を共有するのに必要な軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結を求め続けてきた。GSOMIAはミサイル防衛(MD)や韓国在留邦人の退避など、朝鮮半島有事に対応する上で不可欠なものだ。
しかし日韓関係の悪化を受け、韓国側の要求により棚上げされていたのだが、ここへ来てにわかに締結に向けて動き出した。きっかけを提供したのは他でもない、北朝鮮の核・ミサイル実験である。
一方で韓国は、最大の貿易国である中国に気兼ねして控えていた「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備問題について、米国との協議を始めた。中国はさっそく反発。今後は日韓のGSOMIA締結を巡っても、中国との間に摩擦が生じる可能性がある。
(参考記事:米韓がTHAAD配備の協議開始、中国は反発)
このように、北朝鮮の行動は北東アジアの安保に様々な波紋を投げかけている。ただ、こうした動きはまったく新しく生まれたわけでもない。そもそも中露と日米の安保利害は対立しており、ロシア国内からは、あからさまな北朝鮮擁護の声すら聞こえる。
(参考記事:北の核実験は「米国のせいだ」とロシアが主張する理由)
北朝鮮とすれば、日米と中露の対立を浮き彫りにするほど「漁夫の利」を得られるわけで、核・ミサイル問題での「行動」も、あながち利益度外視の暴走とは言い切れない部分がある。
そして将来的に、北朝鮮の行動により最も大きな影響を受けそうなのは、新たな安保法制を整えた日本である。集団的自衛権の行使に踏み込む以上、米朝関係が緊張し、金正恩氏がより極端な挑発に走れば、自衛隊が北朝鮮の潜水艦を先制攻撃すべき状況も生まれかねない。
(参考記事:いずれ来る「自衛隊が北朝鮮の潜水艦を沈める日」)
そうなれば当然、北朝鮮からの「核報復」のリスクも高まる。それに本格的に備えるためには、膨大なコストと時間を要する。日本政府は、ほとんど効果の見込めない独自制裁を検討するだけでなく、より長期的な視点で戦略を見直すべきだろう。