19日のマイナス金利解除はほぼ確実視され、今後は金融市場の日銀依存体質をどう払拭させるのかも課題に
日本経済新聞は16日の朝刊で、「日銀、マイナス金利解除へ 賃上げ拡大で17年ぶり利上げ」と伝えるなど、18日~19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除とともにイールドカーブコントロールの撤廃、ETFやREITなどの買入停止などの金融政策の正常化(普通の金融緩和政策に戻す)を行う可能性が高い。今後は、金融市場の日銀依存体質をどう払拭させるのかも課題となる。
11日に東証株価指数(TOPIX)が午前の取引で2.3%下げるなかで、日銀はETFの買いを見送った。午前の取引で2%下落時に日銀がETFを購入するとの方針を公式に認めたことはないが、これが暗黙の了解のようになっていた。2021年4月以降の購入履歴は全てこの原則にのっといていたのである。
これが11日の取引終了後に伝わり、投資家の間で動揺が広がったようである。外資系証券のトレーダーは「肌感覚では、日経平均で100~200円ほどは日銀が株を買わなかった『がっかり感』で下げている」と表現したとか(12日付日本経済新聞)。
日銀がETFやJ-REITを買い入れているのは、質的緩和の一環で、資産価格のリスクプレミアムに働きかけるためとされている。しかし、日経平均株価が過去最高値を更新するなどしているなか、その必要性に乏しくなっていることも明白であろう。
ただし日銀はこれまで、舵を切る姿勢をみせることを極力嫌がっていた。これは政治的な配慮もあった可能性がある。しかし、11日にETFの買入をしなかったのは、すでに政治的配慮の必要性も後退し、正常化に向きを変えるであろうことを結果として示唆したものと思われる。
問題となるのは、市場がこれほどまでに日銀に依存した体質になってしまったことにある。ただし、これは日本に限ったことではない。
米国でも以前、バーナンキ・プットなる言葉が市場で使われていたことがある。株価が下落してもFRBのバーナンキ議長(当時)が金融緩和策により相場を支えてくれるとの期待感があったのである。
そして、日銀異存は株に限ったことではないというか、それ以上に依存体質となってしまっているのが日本の国債市場であろう。
一時は長期金利の居所まで日銀が決めていたような状況となっていた。それには巨額の日銀による国債買入も影響していた。
さすがに物価上昇や世界的な長期金利の上昇のなかで、イールドカーブ・コントロールは形骸化した。そしてまもなくイールドカーブ・コントロールそのものは完全撤廃されると予想されている。
それにもかかわらず国債の利回りは、大きく上昇する兆しはない。日銀が大量の国債買入を続けるとともに、政策金利の引き上げも限定的とみているからであろう。長期金利コントロールはなくなっても、結果として今後も日銀にコントロールされているような状況となってしまうのか。
長期金利は本来、市場参加者の相場観によって形成されるものである。例え間違っても、すぐに修正されるなどの柔軟性も持っている。そういった本来の市場環境に戻すことも必要ではなかろうか。