インドから広がったデルタ型変異ウイルス 感染力、重症化リスク、ワクチンの効果について
日本国内でもデルタ型と呼ばれる変異ウイルスが広がってきています。
このデルタ型変異ウイルスの特徴について、現時点で分かっていることをまとめました。
東京都内ではアルファ型からデルタ型に置き換わりつつある
東京都では新規感染者数が急増してきていますが、その要因の一つとしては変異ウイルスが挙げられます。
第4波以降、従来の新型コロナウイルスよりも感染力の強いアルファ型と呼ばれるイギリスから広がった変異ウイルスが主流になっていること、そして現在はアルファ型よりもさらに感染力が強いデルタ型と呼ばれるインドから広がった変異ウイルスが徐々に主流になりつつあります。
6/28〜7/4の週ではすでに全体の14.7%を占めています。
世界でもデルタ型変異ウイルスは拡大しており、すでに110カ国で検出されています。
またイギリスではすでに検出される新型コロナウイルスの99%がデルタ型になっており、アメリカでもデルタ型が急速に増加しており30%を占めています。
おそらく日本でもこのままデルタ型が急激に増加し、アルファ型からデルタ型に置き換わっていくことが予想され、京都大学の西浦博先生らは、東京オリンピックが始まる前にデルタ型変異ウイルスが主流になるだろうと数理モデルで予測しています。
アルファ型は従来の新型コロナウイルスよりも感染力が43~90%強いと報告されていました(研究によって数値に多少のばらつきがあります)。
イギリス公衆衛生局からの報告によると、デルタ型変異ウイルスはこのアルファ型と比べてさらに64%感染力が強いとのことです。
このデルタ型変異ウイルスが日本国内に広がってしまえば、これまでと同じ対策をしていても感染者が十分に減りきらないということが起こりえます。
デルタ型変異ウイルスに感染すると重症化しやすい
デルタ型が広がっているイギリス、スコットランドからはデルタ型に感染した人は重症化しやすいという報告が出てきています。
イギリスからは、アルファ型変異ウイルスと比べて、デルタ型変異ウイルスは2.61倍入院するリスクが増加したと報告されています。
またスコットランドの報告でも同様に、デルタ型はアルファ型と比較して入院リスクが2.39倍高くなると報告されています。
そもそもアルファ型変異ウイルスは従来のウイルスよりも重症度が高くなると言われており、そのアルファ型よりもさらにデルタ型の方が重症度が高くなるということになれば、今後さらに若い世代においても(特にワクチン接種をしていない人で)重症者が増加することが懸念されます。
デルタ型変異ウイルスに対するワクチンの効果は?
これまでのところ、mRNAワクチンなどの新型コロナワクチンは、感染予防効果や発症予防効果が低下する可能性はあるものの、重症化予防効果は保たれていることが示されています。
感染や発症を予防する効果については、デルタ型変異ウイルスが広がっている各国からそれぞれ報告されています。
・イギリス:発症予防効果は1回接種で34%、2回接種で88%
・スコットランド:感染予防効果は2回接種で79%
・カナダ:感染予防効果 87%(ファイザー)、72%(モデルナ)
・イスラエル:感染予防効果 64%、発症予防効果 64%
国によって予防効果に差がありますが、デルタ型変異ウイルスでは感染予防効果と発症予防効果が低下することは間違いなさそうです。
しかし、これらの報告の多くでは「重症化予防効果は90%以上に保たれている」とされており、デルタ型に感染・発症することはあってもワクチン接種者では重症化はしにくいというワクチンの効果は保たれています。
イギリスでは前述の通り99%がデルタ型に置き換わっていますが、5月下旬くらいから新規感染者が再増加に転じています。
しかし、死亡者は低いままで推移しており、これは感染者の多くが若い世代であることに加えて、ワクチン接種による重症化予防効果が寄与していることが示唆されます。
デルタ型変異ウイルスが広がりつつある今、より厳格な感染対策を
デルタ型変異ウイルスに対しても基本的な感染対策は変わりません。
ただし、これまで以上に感染しやすくなると考えられていますので、できる限りより厳格な感染対策が求められます。
図は3つの密と感染リスクを評価したものですが、3つの密が重なることで最も感染リスクが高くなるだけでなく、1つでも密があると感染リスクが増していることが分かります。
デルタ型変異ウイルスでは、できる限り1つでも密を避けることが重要です。
また、マスク着用、手洗いといった基本的な感染対策を個人個人がより一層遵守するようにしましょう。
前述の通り、ワクチンはデルタ型変異ウイルスに対しても有効です。接種できるタイミングがあればぜひ接種をご検討ください。