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「ブチ切れ大暴れ動画」の母も立件...ナッツ姫一家と日韓政治の闇

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
李明姫氏のパワハラ場面とされる動画のキャプチャ画像(ニューシスKorea)

韓国警察は6日、大韓航空を傘下に置く有力財閥、韓進(ハンジン)グループの趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長の妻、李明姫(イ・ミョンヒ)氏を暴行と業務妨害の疑いで立件したと明らかにした。韓国メディアは4月、工事現場で関係者を小突いたり書類をばらまいたりする人物の動画を公開し、李氏とみられると報道。警察が事実関係を調べていた。

李氏は、「ナッツ姫」こと長女のチョ・ヒョナ氏、そして「水かけ姫」こと次女チョ・ヒョンミン氏の母だ。

動画が撮影されたのは、グループ内のホテル建設現場だとされる。李氏とみられる女性は、女性スタッフの腕をつかんで引きずり回し、さらには逃げる彼女を追い掛けようとするのを男性作業員が必死にとどめた。すると怒りが収まらないのか、揚げ句の果てには作業員が持つ大量の書類を床にぶちまけた。

(参考記事:【動画】「ブチ切れ乱暴狼藉」の韓国財閥夫人、警察沙汰に

何かとお騒がせの韓進ファミリーだが、姉妹の祖父でこの財閥の「始祖」である趙重勲(チョ・ジュンフン)が、かつて日韓政治の舞台裏で暗躍し、田中角栄元首相らと昵懇の間柄だったことは、今となってはあまり知られていない。

(参考記事:【日韓国交50年】田中角栄と「ナッツ姫」祖父が残した日韓政治の闇

第2次世界大戦が終わったとき、わずかトラック1台の運送屋の社長だった趙重勲氏は、田中角栄氏の盟友と言われた小佐野賢治(国際興業グループ創業者)氏の支援を受け、韓進を一大企業グループへと育て上げた。そして同時に、日韓の利権構造の調整役としても暗躍したのである。

今となっては、このような解説が添えられた報道はほとんど目にしないが、時間の流れを思えば、それも自然なことなのだろう。

しかしサムスンにせよロッテにせよ、このところ事件化した韓国の財閥はいずれもが、かつて「日韓癒着」と言われた両国関係の中で、発展の基礎を作ったものと言える。日韓関係においては、歴史問題を巡る葛藤が表出しているが、それもまた、日韓癒着の歪んだ利権構造の中で放置されてきたことが、問題の解決を難しくしている部分があるのだ。

(参考記事:【日韓国交50年】岸信介から安倍晋三まで…首相一族の「在日人脈」と「金脈」

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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