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2018シーズン注目のニューモデルを斬る!その(2)アスリートの足を得た「MT-09 SP」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA MT-09 SP ABS

2018オンシーズンということで各メーカーから新型モデルが目白押しだが、その中で個人的に注目しているモデルについて何回かに分けて語りたいと思う。

今回のモデルは先頃MT-09の上級版として新たに加わった「MT-09 SP」である。

エキセントリック過ぎた乗り味

MT-09はネイキッドとスーパーモタードの異種混合デザインを打ち出した個性派スポーツモデルとして2014年に登場。従来にはなかった異色のフォルムやクロスプレーンコンセプトに基づく新設計3気筒エンジンのアグレッシブな出力特性が光っていたが、一方でそのエキセントリックな乗り味には賛否両論もあったのは事実だ。

特に初期型はアクセルへの応答性が良すぎるエンジンとソフトな前後サスペンションの組み合わせにより車体の姿勢変化が激しく、ときに“じゃじゃ馬”などと揶揄されることも多かった。

ヤマハの意図としてはデザイン同様、モタード的な長い脚をストローク感たっぷりに動かしながら走るというイメージを持っていたのかもしれないが、如何せん900ccクラスのビッグバイクをモタードのように操れるライダーなどほとんどいなかった。きっとユーザーの多くはMT-09で激しく攻めまくるのではなく、ただ普通に乗りたかったのだと思う。

実はけっこうマメに改良していた

こうした意見を反映してか、2016年にはABSモデルのMT-09 Aにトラコンを追加し、さらにモデルチェンジした2017年には外見を一新するとともに最高出力も従来の110psから116psへとアップ。アシスト&スリッパークラッチやクイックシフターを採用。圧側ダンパーの調整機能を追加するなど走りを強化してきた。

そしてこの春、新たにタイプ設定された「MT-09 SP」はその名のとおり、前後サスペンションに特別装備が与えられた上級スポーツグレードとして誕生したのだった。

最高スペックの前後サスが与えられる

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▲MT-09 SP ABS

前置きが長くなったが、まずSPに注目したのは前後に備わった高性能サスペンション。

フロントはKYB製の特別仕様でプリロードと減衰力に伸び側と圧側に独立した調整機構を持つフルアジャスタブルタイプである。しかも圧側には「低速」と「高速」の2ウェイアジャスターを備えている。ちなみに「低速」や「高速」というのはストロークスピードのことで、大雑把に言うと、「低速」は街乗りなど日常的なシーンで働き、「高速」は路面のギャップに当たったときや急ブレーキで底付きしそうなときなどに効果を発揮する。

そしてリヤのオーリンズは別体式タンクにリモート式アジャスターを装備したフルスペックモデルだ。つまり、街乗りからサーキット走行まで対応した本格的な足まわりが与えられたということだ。

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▲MT-09 SP ABS (画像出典:ヤマハ発動機)

クラストップレベルの軽さ

次に軽さ。車重は192kgと900cc程度の排気量クラスの中でも圧倒的に軽い。ちなみに、新型で同じく前後サスが強化されたMT-07は車重が183kgとさらに軽いが、最高出力は73psということでパワーウエイトレシオを比べるとMT-09が格段に上回る。

ということもあって、エンジン特性も含めた動的な乗り味としては、MT-09のほうがよりシャープで軽快に感じるほど。「軽さは正義」という2輪界の掟を実感できるハンドリングだ。

充実の最新デバイスでコスパも抜群

続いては電子制御の充実。従来からのパワーモードやABSやトラコンに加え、新型となった2017モデルからはアシスト&スリッパークラッチやクイックシフターを採用するなど、安全で快適なライディングをサポートしてくれる各種デバイスをモデルチェンジの度に強化させてきた。内容的にも、今の2輪における最新の電子制御がほぼ全部盛りと言ってもいい充実ぶりだ。

そしてコスパの高さ。これだけの装備を身に付けておいて車両本体価格で103万円という安さは衝撃的。国産モデルならではの良心価格と言えるだろう。

走りにこだわるライダーのおすすめ

先頃MT-09 SPに試乗する機会を得たが、前後サスの動きにしっとりとした落ち着きが出て、乗り味にもグレード感が増していた。加速・減速での姿勢変化も穏やかになり、コーナリングでの安心感も向上しているなど、パワーに見合った足まわりに最適化された印象だった。

つまり、MT-09本来のパフォーマンスを引き出せる車体にようやく仕上がった感があったのだ。走りにこだわるライダーには是非おすすめしたい一台である。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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