「東大に行くとお嫁に行けなくなる」伝説の今 世界ランキングで東大・京大の女子率1306位、1281位
トップ200校は日本2校、韓国6校
[ロンドン発]英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が11日、毎年恒例の世界大学ランキングを発表しました。
トップ200校には東京大学36位(前年42位)、京都大学65位(前年同)の2校。日本が「歴史・貿易戦争」を繰り広げる韓国は6校も入っています。
トップ200校にランク入りした大学数を見ると――。
(1)米国60校
(2)英国28校
(3)ドイツ23校
(4)オランダ11校
(5)オーストラリア11校
アジア勢では――。
(1)中国7校
(2)韓国6校
(3)香港5校
(4)日本、シンガポール2校
(6)台湾
大学の弱体化は国力基盤の劣化
東京大学はアジアの中でも清華大学、北京大学、シンガポール国立大学、香港大学に次ぐ5位に過ぎません。東京大学がTHE世界大学ランキングでアジア首位の座から転落したのは2016年版からです。
大学の弱体化は国力基盤の劣化を招きます。THEチーフ・ナレッジ・オフィサーのフィル・ベイティー氏は次のように述べました。
「日本は依然として世界トップ 200校では非常に不十分な結果しか出せていません。大学の評価向上を第1の目標にして、他のアジアや世界の一流高等教育機関と互角の実績を示す必要があります。特に中国との競争は激化する一方であるため、これは深刻な課題です」
「優れた留学生や学者を日本の大学に引きつけ、海外の学者との協力を強化することで、日本は優先して高等教育機関の国際的見通しを改善することに取り組むべきです」
「高等教育の世界トップクラスで相当な影響力を持つ可能性を秘める日本の潜在性を現実のものとするには本格的な投資と将来計画が必要です」
東大学部生の女子比率18.6%、京大の女子比率24%
しかし、もっと身近な問題があります。京大の女子率は24%で世界1281位。東大の女子率はTHEランキングにはないものの、学部学生の女子比率で18.6%。単純に当てはめると1396校中1306位という惨状です。
東京医科大では女子や多浪生らを不利に扱った入試不正が発覚、13~16年度の医学科入試で109人が合格ラインを上回りながら不合格になっていたことが分かりました。
入試不正が行われたわけではない東京大学や京都大学でどうしてこれだけ女子比率が少ないのか、筆者の周囲にいる東大女子や京大女子に尋ねてみました。
「ジェンダーロールの押し付けが影響」
来春、早稲田大学を卒業し、東京大学大学院に進学予定の岩澤直美さんはこう話します。
「学びたいこと、研究したいことを追い求めた結果がたまたま東京大学にある研究室だっただけで、『東京大学における女性比率があまりに少ないから、その現状を変えていこう』といった動機があったわけではありません」
「とはいえ、いざ入学者における男女比率に目を向けると、あまりにも偏りのある数字に違和感を覚えずにはいられません。合格率などにおいては男女で有意差が見られないことを考えると、やはり受験者数の時点で大きな差が生まれてしまっている事実が浮き彫りになります」
「今年の東大入学式で上野千鶴子先生が祝辞(「がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています」)の中で指摘していた通り、女性の能力や努力が不足しているといった理由ではなく、日本社会における『女性とはこうあるべき』といったジェンダーロールの押し付けが強く影響していることを感じます」
「幸いなことに、私自身は両親から『女性なのだから』と固定概念に縛られるような教育を受けてこなかったので、純粋にやりたいことを追求することができました。また、中学校をドイツのインターナショナルスクール、高校を大阪の国際色豊かな学校で過ごしたことも大きかったかもしれません」
「『男性だから』『女性だから』とあらかじめ選択肢が限られてしまうのは、いささか窮屈な社会であるように感じます。私自身は今後も性別にとらわれることなく、学問に、そして事業に励んでいきたいと思います」
「東大に行くと嫁の貰い手がなくなる」
東大卒のロンドン在住リサーチャー、井上貴子さんは「40年近く前の昔話ですよ。当時は、東大に行くと嫁の貰い手がなくなると言われました」と振り返ります。
「私の高校は受験校だったので、その辺の抵抗も違和感も全くありませんでしたが、一歩外に出るとそういう特別な見方は常にあったように思います」
「東大卒って言うと身構える男性多いから。偏差値の高い大学に行きたければ上智か慶応にしておけみたいな。当時は男女雇用機会均等法(1986年施行)の1、2年前で、東大卒の女子学生を採用する民間企業は数えるほどしかなかったと思います」
「『東大卒は頭でっかちで使いにくい』みたいな空気がありました。『結婚したら退職してくれますね』と面接で言われた時代です。そういう風潮をものともせず、官僚や弁護士、大学の教職で活躍している同期生も多いです」
(筆者注)東大学部学生数の女子比率は全体で18.6%。教養学部(前期課程)18.8%、法学部19.1%、経済学部17.9%、文学部28.8%、教育学部37.2%、教養学部30.2%、工学部8.9%、理学部12.2%、農学部26.6%、薬学部23.9%、医学部19.8%。工学部や理学部が大きく足を引っ張っていることが分かる。
女子に立ちはだかる25%の壁
国際機関勤務の京大法学部卒40代女性はこんな見方を示してくれました。
「京大のデータを見ると、令和元年の学部生の女子比率は約22%ですね。私は1997年卒業。95~97年だと女子比率は16%くらいでした。それから比べると増えたということでしょうか」
「もちろん、いろいろな理由は考えられると思いますが(上野千鶴子氏の東大祝辞のように)、やはり依然として女性の場合は浪人して良い大学に行っても就職が難しいという壁がある気がします」
「京大を卒業して大手の損保に就職したのですが、女性総合職は全総合職150人中、3人でした。就職氷河期だったということもありますが、銀行もこんな感じだったと思います」
「京大を出て一般職や秘書などの仕事をした同級生もいたことを記憶しています。私は法学部だったので、学部に残って(留年して)司法試験の勉強を何年も続けた友達も結構いました」
「今は女性がキャリアを作る入り口がもう少し広くなっているといいのですが…。データを詳しく見ると、修士、博士課程になると随分と改善していますね」
「令和元年の修士女子比率25%、博士女子比率30%。97年の修士女子比率16%、博士女子比率18%です」
「初めからアカデミア(大学などの学究的環境)に残りたいので京大に行くという女性が多いのかもしれません。修士をやると就職が難しくなるというのは多分今でも同じだと思います」
「どこかの医学部と違って女性の試験結果に調整を加えるということは京大ではしていないと思うので(仮に医学部でやっていたとしても学部生の人数はかなり小さいので、全体への影響はあまりないでしょう)、単純に志願者数=母集団の数が女性の場合は少ないということかと思います」
(筆者注)京大医学部の17年度の志願者(前期)の女子比率は40.6%、合格者の女子比率36.5%。
「17年度の京大一般入試諸統計を見ると、学部全学で受験者の女子比率は24%、合格者比率は21%なので、入試結果に手心は加わっていないということですね」
「おそらく女性比率25%というのがグローバルビジネスの世界でも現実なのかなという気はします。2007年の国際経営開発研究所(IMD、スイス)MBA(経営学修士)も女性比率は25%でした」
「FTのMBAランキングを見ても学生の女子比率は順調に増加しているのに教員は依然として10~25%ぐらいであるのが分かると思います」
「これと同じで、それなりの規模の企業でマネージメント候補(部長か役員)になる女性の母集団は今、だいたい25%ぐらいだと思います。この壁を突破するのは、なかなか大変なようです」
「いずれにせよ、急に何かを変える特効薬というのはないので(私は女性への割り当て制を導入するは非効率だと思っています)、地道に女性のアプリカント(志願者)の母集団の数を増やしていくしか道はないです」
「気の長い話に聞こえると思いますが、10年ぐらいで意外と大きく変わっているかも知れません。離婚率も高くなっている今、女性が経済的に自立していることの重要性は前よりも飛躍的に増していると思います」
日本の大学ランキング
タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)の世界大学ランキング2020年度版を見てみましょう。
世界の大学ランキング
世界のトップ50校はこんな感じです。
(おわり)